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弱さで戦う────『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』感想

Wake Up, Girls! 七人のアイドル

 『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』をみたので感想。

 2013年、仙台。人気アイドルグループ、I-1clubが芸能界を席巻していたそのとき、仙台の弱小芸能事務所、グリーンリーヴス・エンタテインメントは、起死回生の策としてアイドルグループの結成を計画する。なんとか6人のメンバーをそろえ、アイドルグループ、Wake Up, Girls!結成のため準備をすすめるが、メンバーのモチベーションや技量はさまざまで、前途多難。メンバーの一人の友人、島田真夢がかつてI-1clubの中心メンバーだったことを知った芸能事務所側は、彼女をなんとか引き入れようとするが…。

 現実の声優ユニットWake Up, Girls!とシンクロしたアニメ企画の第1作で、公開は2014年。監督は『らき☆すた』の山本寛、脚本は『THE IDOLM@STER』の待田堂子。アニメーション制作はOrdetタツノコプロOrdetは事実上の廃業状態が続いていたが2025年3月にウルトラスーパーピクチャーズに吸収合併され解散、Wake Up, Girls!自体も既に活動を終了し、メンバーはそれぞれ活動をしているので、このアニメもまた10年以上の時を経て歴史の一部になっているという感じがある。しかし、作中の芸能事務所社長の言動や、セクハラ的な目線は(当時もそうだったかもしれないが)いまみると一層きついものがある。この点で明確に古くなっていると思う。

 わたくし自身、アイドルユニットとしてのWake Up, Girls!もアニメもリアルタイムではまったく接していなかったのだが、大学生のころサークルの後輩だった留学生の龍くんが熱心に追っかけをして日本全国飛び回っていて、その縁でなんとなく気になる存在だった。いまメンバーをみてみると、田中美海など女性声優に疎いわたくしですら知っている名前がちらほらいて、龍くんの(そしてもちろん制作側の)慧眼に驚くばかり。出世頭は青山・『ぼっち・ざ・ろっく!』・吉能だろうか。キャラクターと声優の下の名前を被せて売っていく戦略は結構親切。

 アニメとしては、昨今の豪華絢爛な劇場アニメに見慣れているとどうしても見劣りする部分があり、また現在のインフレしたTVアニメの質よりも落ちると思う。しかしそのゴージャスとはいえない手触りがWake Up, Girls!という弱小駆け出しアイドルとマッチしている感もあり、これはこれでありなのかもしれない。弱くても戦うのだという意志表明がドラマと画面で貫徹し、統一した美意識が感じられる…というと贔屓の引き倒しのような気もするが。

 尺は50分程度だが、7人のアイドルのうちドラマは島田真夢ひとりにフォーカスして焦点をしぼり、クライマックスのデビューライブに作画リソースを詰め込んだような一点豪華主義でなんとか劇場アニメとしての格をぎりぎり保っているような感じがある。そのあたりの制作思想は山本寛がのちに手掛ける『薄暮』と通じる面があるが、『薄暮』が抒情的な風景描写でリソースの少なさをカバーできていたことと対照的に、この『七人のアイドル』は結構もろにその弱さがでている。それもまた味わいかもしれません。

 

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 キャラクターデザインや描写の質感は『THE IDOLM@STER』の延長上というか、同作のファジーさを継承しつつ、より地に足のついたデザインを志向している感じがしました。

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