『アポカリプスホテル』をみたので感想。いやあ、よかったですね。
植物から発生するウイルスにより、地球は人類の生存に適した場所ではなくなり、宇宙へと避難した。東京、銀座にあるホテル銀河楼に残されたホテリエロボットのヤチヨたちは、人類の帰還を待ち、そのあいだホテルを存続させるため、おのおのの職務を果たしていたが、無情にも時は過ぎてゆく。そんななか、銀河楼に思いもよらぬ訪問者があらわれる。
CygamesPicturesによる、ポストアポカリプス的な状況にあるホテルを舞台にしたSFコメディ。監督はこの作品が初監督作となる春藤佳奈、シリーズ構成は『ゾンビランドサガ』の村越繁。漫画家、竹本泉がキャラクター原案をつとめ、ヒロインのヤチヨやタヌキ星人のポンコなど、あたたかでやわらかい雰囲気のキャラクターはみていて安心感がある。
世界が滅びを迎えながらも、どこか牧歌的な雰囲気をたたえた世界観やキュートなアンドロイドの造形は、芦奈野ひとし『ヨコハマ買い出し紀行』を想起させるが、エピソードが進むにつれてホテル銀河楼には宇宙人が千客万来、雰囲気もにぎやかになっていく。
コメディとしては、人類のスケールをはるかに超えた時間感覚で物語がしばしば展開し、人類不在だからこそ、数十年を一息で飛ばすような仕掛けが可能になっているのがおもしろかった。それでも訪れる別離の挿話は心動かされるが、とりわけ印象に残ったのが、休暇を強制的にもらったヤチヨが廃墟の東京を徘徊する第11話で、ほとんどセリフもなく展開するこのエピソードは、人類なきあとの地球の呼吸をよく伝えていてエモーショナルだった。
さて、ホテル銀河楼をヤチヨたちロボットに託したオーナーの声を務めるのは木下浩之で、このキャスティングには同じくホテルを舞台にした『グランド・ブダペスト・ホテル』を想起しないわけにはいかなかった。『グランド・ブダペスト・ホテル』では木下はレイフ・ファインズ演じる伊達男のコンシェルジュ、ムッシュ・グスタフの吹替を担当しているが、ムッシュ・グスタフも銀河楼のオーナーも、これまで人類が連綿と紡ぎ、伝え、つなげてきた価値、「よきもの」と形容してもいいような価値の擁護者だった。
『アポカリプスホテル』で「よきもの」の象徴、すなわち人類が紡いできた価値の結晶といえるのがホテル銀河楼で、各話タイトルにも掲げられている銀河楼十則はその一端を示すものといっていい。『アポカリプスホテル』の凄みは、この人類が長い年月をかけ継承してきた遺産の継承者が、必ずしも人類でなくてよいのだ、と軽やかに告げてみせているところだろう。
人類の遺産はロボットや異星人に継承されるのみならず、「おしおきはグー!なかなおりはパー!」、「穴は掘っても空けるなシフト!」など軽率に付け足されていく。人類が去ったあとの地球を舞台に、もはや人類の存続など問題ではなく、人類が滅び去っても、きっと誰かがこの「よきもの」を繋いでいってくてるはずとあっけらかんと語る『アポカリプスホテル』の大柄さを、わたくしは高く買いたいのだった。
関連
ヤチヨを演じた白砂沙帆、『サマータイムレンダ』の澪なんですね!ぜんぜんわかりませんでした。

![アポカリプスホテル Blu-ray 第1巻(特装限定版) [Blu-ray] アポカリプスホテル Blu-ray 第1巻(特装限定版) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/41JoLbjfGBL._SL500_.jpg)
![グランド・ブダペスト・ホテル [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray] グランド・ブダペスト・ホテル [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/514VxjeuXLL._SL500_.jpg)