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宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 52」 吉浦康裕監督のトークショーのまとめ!

アニメ 映画 イベントレポ

 「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 52 パテマ・いろは・ハル・ヨヨとネネ!スクリーンで観たい劇場アニメ」に、友人と二人で行ってまいりました。

 この企画に行こうと思ったきっかけは『花咲くいろは HOME SWEET HOME』を劇場で見たい!という短絡的な理由で。金沢にも行ってきたことだし。

中部・北陸旅行にいったよ―金沢・花咲くいろは編 - 宇宙、日本、練馬

 それがよく内容を見てみたら『イヴの時間』の吉浦監督のトークショーがあるじゃないですか!『サカサマのパテマ』はなんやかんやバタバタしていたので見に行けずじまいだったので、この機会にぜひ見たいと。トークショーの際には『イヴの時間』について質問するぜ!という(このてのイベントには全く行ったことがないにも関わらず)大望を抱いて意気揚々と新文芸座に向かいました。

 トークショーの時にメモをとったので、それを元に簡単に吉浦監督と小黒編集長のトークについてまとめておこうと思います。軽くメモった程度なので、結構な程度でニュアンスを組み取れていなかったりするかもしれませんがご容赦ください。

小黒編集長(以下小黒):吉浦監督の作品はマニアックだと思っていたんですが、熱心な女性ファンもおられるようで。

吉浦監督(以下吉浦):知らなかった(笑) 。以前、熱心な男性ファンから直接手紙をもらったことがあり、大変うれしかった。手紙は大事にとってある。

小黒:『ペイル・コクーン』なんかはマニアックな印象だったので、監督自身もそうかと思ったが、快活な印象でギャップが。

吉浦:真人間でありたいとは思っている。普通の社会人と比べたらダメ人間の範疇だと思うけど(笑)。

 
アニメスタイルオールナイトについて

小黒:今まで、違う監督の作品を集めた企画はガラガラなこともあったけど、今回は満員。4作品とも見た人は?

会場:(会場の1‐2割くらいの人が挙手か?)

小黒:1作品だけ見た人は?

会場:(多くの人が挙手)

吉浦:『サカサマのパテマ』を見ておられない人も多いので、ネタバレはしない感じで。

小黒:最後のあの場面はどういう意味、とか後半すごいことが起きましたけど、とかの質問は無しで。

吉浦:それネタバレじゃないですか(笑)。

小黒:どんな映画も後半すごいことが起きるから(笑)。吉浦監督はパテマ以外の作品ではどれに興味が?

吉浦:『魔女っ子姉妹のヨヨとネネ』。

小黒:ヨヨネネは動画が素晴らしい。原画じゃなくて動画ね。

吉浦:パテマでも動画を頑張ったが...。スケジュールに気を使ったがどうしても、という部分があった。ヨヨネネの平尾隆之監督にスケジュール管理の秘訣を聞きたい。

小黒ジブリ作品でも全部が全部、動画がすごいわけじゃない。『おもひでぽろぽろ』とかは凄すぎるけど。

吉浦:『おもひでぽろぽろ』は作画的にキチガイじみてる(笑)。アニメーターさんのなかには見てるとストレスを感じる人もいる(笑)。

 

吉浦監督の作品・方法について

小黒:吉浦監督は今までの作品と同じことをやってない。パテマもそう。

吉浦:パテマもある意味では同じことをやってる。ひっくり返しただけ。パテマは作品として成立するのか不安だった。さかさまの表情をどう感じるのかとか。見てるひとが気持ち悪くなるんじゃないかとか。

小黒:見て気持ち悪くなった人はいたの?

吉浦:わかんないけど、僕は聞いてないです(笑)。

小黒:吉浦監督は空間フェチ?

吉浦:空間フェチですね。狭い廊下とか、狭いのにやたら天井が高い部屋とかが好き。テリー・ギリアム的な。こんな空間があったらいいな、という妄想をする。

小黒:レイアウトとか空間を創るのが上手い。

吉浦:僕は画力がないのでCGで場面を作っている。パースをCGでとっている。パテマは凝ったアングルが多いので、作画監督に手で書くのは無理といわれた。なので3Dレイアウトにしたが、結果的に作画監督もそれになじんでくれてよかった。

小黒:マニアックな話になりすぎてついてこれてないお客さんもいるのでこの辺で(笑)。

 

『サカサマのパテマ』の海外展開

小黒:フランスに行ったそうで。

吉浦:『サカサマのパテマ』、海外でも上映されてまして、その舞台あいさつのために行った。フランスでも好評の様子。話がわかりやすいのと、雰囲気がヨーロッパになじんだからかも。

小黒:フランスはオタク文化と親和性がある。

吉浦:フランスでは『キャプテン・ハーロック』大ヒットですからね。フランスで行ったバーがすごかった。内装がマニアックで。

小黒:やつらはオタクなのにオタクくさくない。卑怯(笑)。フランスでは33スクリーンで公開されているとか。

吉浦:ファミリーアニメのような位置づけのよう。

 

ほかの吉浦監督作品についても

小黒:『ペイル・コクーン』や『イヴの時間』なんかはSF的でマニアック、閉ざされた空間が舞台だったが『サカサマのパテマ』は雰囲気違う。

吉浦:『イヴの時間』はずっと座って話してる(笑)。三谷幸喜の『王様のレストラン』みたいな。自主製作のころからずっとそんなものを撮ってきたので飽きた(笑)。ドアの外にでるようなアニメを作りたかった。でも終わってみたらパテマも結構会話シーンが多い。

 客層は『イヴの時間』とはまた違うようで、パテマから見ました、という人も結構いてうれしい。

小黒:アニメミライ2014の『アルモニ』もまた一味違う。学園モノ。

吉浦:教室と廊下しか出てこない学園モノ(笑)。教室ばっかりでてくる学園モノを作りたかった。僕はスクールカーストといったら大げさだけど、そういうのの下の方にいた人間だった。同調圧力とかの中で、そんな人間もそれなりに楽しくやってる。屋上の手前の踊り場でだべったりとか。

小黒:『アルモニ』はリアルではないけど、グサグサくる。

吉浦:アニメのなかのオタクは極端に美化されるか、卑下されるかのどちらか。リアルに描きたいという気持ちがあった。

小黒:『アルモニ』の続きがみたい。

吉浦:ああそうですか。次はパテマとは違う、もっと派手なのをやりたいと思っている。庵野さんの爆発みたいな。『王立宇宙軍』みたいな。

小黒:今までの仕事にはこだわらない?

吉浦:あんまり売れたら別ですけど(笑)。

 

 

 来場者からの質問コーナー

○質問者:『サカサマのパテマ』の治安警察のモデルは?押井守ケロベロス・サーガ?

吉浦:『リベリオン』のオマージュ。

 

○質問者:『イヴの時間』の続編は?

吉浦:続編が作りやすいようにああいう終わり方にしたが、『イヴの時間』のファンはちゃんとした物語でなければ納得しないと思う。そういう物語ができればやりたいと思っている。アニメ以外の媒体の可能性も。

 

○質問者:どんな作品を今後やってみたい か。

吉浦:ファンタジーに興味が。ヨヨネネのような作品に足を運んでくれるお客さんが増えると企画が通りやすくなる。協力お願いします(笑)。

 

○質問者:実写の『アップサイドダウン 重力の恋人』が『サカサマのパテマ』と似たような設定ですが…

吉浦:ポスターのビジュアルを作っている時に見せられて、超ショックだった(笑)。影響されてはいけないと思ってそれ以来情報を見ないようにした。予告も未だにみてない。4‐5年したら見れると思う(笑)。

 

○質問者:アンドロイドについて。監督は「ドリ系」?

吉浦:僕はアンドロイドについて中庸な立場。人間と全く同じように扱うことが良いと思っていないが、『イヴの時間』のように露骨に差別されるのは良くないと思っている。

 「ドリ系」はあの元々あの世界の誰かが意図的に流行らせたもの、差別的なニュアンス。それがだんだんと意味が変わってきている。そういう広い意味では自分は「ドリ系」。

 

○質問者:自分の強みは?

吉浦:みたことのあるものと、みたことのないもの。その両者を掛け合わせるのが自分のオリジナリティ。

 

○質問者:テレビシリーズへの興味は?

吉浦:テレビアニメの作り方と自分のアニメの作り方は真逆。チームが盤石になって、仕事をまかせられるような体制ができたらやりたい。

 映画ではせいぜい小説で言ったら中編くらいのことしかできない。長編をやるならテレビ。その意味ではやりたいと思っている。

 

○質問者:アニメミライという企画で苦労したことなどは?

吉浦:若手のアニメーターさんの絵を全部直しちゃいけない、一回リテイクして戻さないといけない。それが大変だった。日常芝居が多い作品なので。

 若手はみんなやる気があった。キャラのことをすごく考えていて、小道具のアイディアとかも出してくれた。

 

○質問者:作品の中にカメラを意識した構図や撮影などがあるが…

吉浦:CGでやってるので、レンズを経ないと構図を作れない。『パトレイバー2』などレンズを意識した作品が好き、というのもある。

 

○質問者:よい声優とは?

吉浦:基本的に声のイメージで選んでいる。オーディションの時は、要求に対する反射神経や、台本の読み込み=努力などをみる。

 

○質問者:作品を作る時にはどんな目線で作っている?

吉浦:企画の時は、全力で自分の面白いと思うもの、作りたいと思うものを考える。

 製作の時は徹底して視聴者目線。

 

○質問者:『アルモニ』に『サカサマのパテマ』のポスターがあったが…

吉浦:みんな気にしててびっくり(笑)。パースラインの目印?のためになにか置きたかったのと、同じ制作者が作ってるんだよ、というアピール。

 

○質問者:好きなSF作品は?

吉浦:映画だったら『ガタカ』、『リベリオン』、『未来世紀ブラジル』。テリー・ギリアム作品は特に好き。

 アシモフブラッドベリなど古典的なSF小説も好き。『1Q84』とかも好き。*1

 

○質問者:自主製作をやっていたころの苦労は?

吉浦新海誠監督の後追いだねとよく言われた(笑)。そのなかで抜きんでてやろうというドロドロした情念があった(笑)。今となってはいい思い出。

 

 とりあえずトークショーはこんな感じでした。吉浦監督は本当に真摯な方で、時折ユーモアもまじえて質問に丁寧に答えている姿が印象的でした。見た作品の感想も含めたオールナイトの感想はこちら。

「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 52」 感想 - 宇宙、日本、練馬

 

追記

 このあと5月に、吉浦監督の作品オンリーのオールナイトも開催されまして、そっちにも馳せ参じました。そのまとめはこちら。

「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol.55 吉浦康裕の軌跡」 吉浦康裕監督のトークショーのまとめ! - 宇宙、日本、練馬

吉浦康裕監督作品における「他者」―『水のコトバ』から『アルモニ』まで - 宇宙、日本、練馬

 

 

 

 

 

 

*1:「イチキューハチヨン」と発音なさっていたので村上春樹のほうと思われるが、文脈的にはオーウェル『1984年』のほうが自然。どっちなんだろう

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