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宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

誰もみたことがない、ゆえに至高の傑作―『ホドロフスキーのDUNE』感想

映画

映画『ホドロフスキーのDUNE』劇場用パンフレット

 

 『ホドロフスキーのDUNE』をみました。『エルトポ』からの流れでみて、ホドロフスキー監督作品はそれしか観たことなかったんですけど、十二分に楽しめました。以下で適当に感想を。

 映画監督の夢

 『ホドロフスキーのDUNE』は、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の幻の超大作SF映画、『DUNE』の企画の始まりからと終わり、そしてその後の展開までを監督を主役に据えて当事者たちの語りを中心にたどっていくドキュメンタリー。

 全人類の意識を変えるような、「預言」のごとき映画を撮ろうとした男。彼は「魂の戦士たち」を探しあつめ、構想を練り上げてコンテを完成させるが、結局製作会社がみつからず企画は頓挫してしまう。それを当事者たちの語りをもとに時系列的に追想するわけだが、それがまず抜群に面白い。

 映画製作にかかわるアーティストや技術者、俳優たち=「魂の戦士たち」を次々あつめていく仲間集めの際に出てくるのは、超大物ばかり。『エイリアン』で知られるH・R・ギーガーやダン・オバノンなどを美術に迎え、音楽はピンク・フロイド。俳優陣もサルバドール・ダリオーソン・ウェルズミック・ジャガーなど、実現していたらどんなゴージャスな映画になったんだろうという妄想が膨らみまくる。その過程も、『2001年宇宙の旅』で当時から高く評価されていたダグラス・トランブルを「魂の戦士じゃない。俗物だ」と引き入れるのをやめ、きちんと応対しないピンク・フロイドを叱りつけたりと面白エピソードに事欠かない。

 続々と戦士たちが集まり、映画の構想も出来上がったところで、ホドロフスキーは絶望の淵に立たされる。『エルトポ』と『ホーリー・マウンテン』という金字塔ともいえるカルト映画を撮ってしまったがために、超大作映画の監督に起用することを製作会社は渋る。莫大な資金、そして12時間、20時間に及ぼうとする上映時間などなど、塩hン主義社会における宿命、商業的な壁がホドロフスキーの前に立ちふさがる。

 この場面を語るホドロフスキーは、全体のなかでも異様ともいえるほどに怒りをあらわにする。それ以外の場面では終始ご機嫌な感じで自作を語っているのとはえらい違い。この時彼の味わった絶望感はどれほどのものか、それだけでも推し量れようというもの。

 とはいえ、その約10年後、デヴィット・リンチによって同じ原作をもとに撮られた『DUNE 砂の惑星』を観るくだりにいたりホドロフスキーは再び屈託のない笑顔を取り戻す。「リンチなら傑作を撮ってしまうかもしれない」との彼の心配とは裏腹に、リンチ版『DUNE』は明らかに失敗作だったからだ。それを語る時のホドロフスキーの嬉しそうな顔ったらない。観るのを躊躇していた彼の背中を、「戦士なら観に行け」と一押した息子のエピソードもあいまって、ここかなり好きです。息子も親父につき合わされて、そしてともに夢破れた一人。それがよー、ねえ。

 

 その後、ホドロフスキーの『DUNE』は幻に終わったけど、その遺伝子は『STAR WARS』から『プロメテウス』まで、大ヒットしたSF映画たちのなかに脈々と流れ続けているんだぜ、ということがホドロフスキーと戦士たちの作り上げた絵コンテと、それらの映画を重ね合わせることで語られる。僕たちはすでに、ホドロフスキーの『DUNE』を断片的な形で観ていたのだ。だから『ホドロフスキーのDUNE』をみるにあたって事前に観ていなければいけないのは『エルトポ』でも『ホーリー・マウンテン』でもなく、『マトリックス』や『ブレードランナー』のような有名SF映画だったと。

 

 そんな感じで映画は終わるのだけれど、『DUNE』は撮られなかったことで逆説的に永遠の命を得たな、と思います。ホドロフスキーの息子は、その様を作中の人物であるポールの生き様と存在に重ね合わせていたけれど、まさしくそうで、永遠の命を得るためには一度死ななければならなかった。

 もし撮られていたとして、当時の技術はホドロフスキーたちの想像力に追い付いていたのか?ダリやオーソン・ウェルズはトラブルなく撮影を終えられたか?そんな風に不安材料はそこかしこにあるような気がし、撮られなかったことはむしろホドロフスキーの『DUNE』にとって幸福だったのかも、とも。

 一方で、今のCG全盛の時代ならばあるいは、という感じもあり、ホドロフスキーの想像力が全開になったそれを観てみたくもあり。ともかく、妄想はひたすら広がるばかりで、楽しい映画でした。

 ちょっと押井守版『ルパン3世』のことを想起したりも。

 

 

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【作品情報】

‣2013年/アメリカ合衆国

‣監督:フランク・パヴィッチ

‣出演

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