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宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

「キョン!×××するわよ!」――筒井康隆『ビアンカ・オーバースタディ』感想

ビアンカ・オーバースタディ (角川文庫)

 

 筒井康隆ビアンカ・オーバースタディ』を読んだので感想。

 わたしは知っている。わたしがこの高校でいちばん美しい、いちばん綺麗きれいな女の子だということを。

  校内を歩くだけで男子生徒の視線を釘付けにする超絶美少女、ビアンカ北町。そんな彼女は所属する生物研究部で、日々ウニの生殖の実験を繰り返す。しかしそんな放課後にも飽き飽きしてきた彼女の脳裏に悪魔的なひらめきが去来して大変なことになるのだが、それは人類の未来を左右する時を超えた戦いの序章にすぎなかった…。

 先日出たばっかりの文庫版を図書館でみかけて手に取ったんですが、筒井康隆による「ラノベ」で挿絵は『ハルヒ』のいとうのいぢ、というので話題になったのももう4年も前なんですね。結構前に話題になってたよなーと記憶してたんですが、そんな前だったとは。

 作品のノリとかは公式サイトで公開されている一話でばっちりわかると思うのでそれを読んでもらうのが一番早いと思うんですが、エログロを乾いた筆致で描くシュールギャグSF、という感じ。

 ビアンカ北町は野望?のためにシステマチックにあれをあれして、という感じで物語は進むんですが、生物研究部の先輩が未来人であることが唐突に明らかになり、そしてビアンカ北町が「21世紀の時をかける少女」になる。

 そのときの台詞がお前はもしかしてもうひとりの涼宮ハルヒだったのか!!みたいな感じで。

「私はずっと前、ちっちゃな頃から、宇宙人だの未来人だのが、わたしの前にあらわれてくれることを待ち望んでいたような気がするの。そしてわたしを、この退屈な、フツーの女の子の生活から、この退屈な、男の子っていったらフツーの男の子しかいない現実から、どこか超現実的な、わくわくする世界へつれて行ってくれることを乞い願っていたように思うの。だからこそ、宇宙人や未来人の出現があたり前のように思いはじめていて、実際にあらわれても平気でいられるように、いつの間にか自分を訓練してたんだと思うわ」*1

  文庫版には載ってないんですが、「太田が悪い」ことで話題になった「あとがき」にもこんなことが書かれているわけです。

この本にはふたつの読みかたがある。通常のラノベとして読むエンタメの読みかた、そしてメタラノベとして読む文学的読みかたである。どちらでもお好みの読みかたで読んでもらってもよいが、できれば両方の読みかたで読んでいただければありがたい。太田が悪い。*2

  だから『ビアンカ・オーバースタディ』は筒井康隆による「ラノベ」への批評であり、ということは筒井康隆による『涼宮ハルヒの憂鬱』論でもありうるってことだと思うわけです。だからビアンカ北町の過ごす異常な日常は、「ラノベ」が描く日常というものがいかに面妖なものであり得るのか、みたいなそういう含みがあるのではないか。そしてそうした日常の積み重ねの果ての世界をああいう風に描かれる、ということ自体が、「ラノベ」を楽しむ人たちへの痛罵なのではないか。

 「あとがき」で筒井康隆がいう「ラノベ」とはなんなのかというのはこの文章からだけでは判断するのは困難だし、そもそもラノベを全然読まない僕がどうこういうのはあれなんですが、「メタラノベ」として読むとこういう読み方ができるのでは、みたいなことを思いました。はい。

 

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ハルヒの感想。見返したいと思ってしばらく経ってる気がする。

 

 

 よく考えたらナイスの日も近づいている今日この頃。また野外上映やるんでしたっけ。


 

 

モナドの領域

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時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)

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