『ポッピンQ』をみました。以下感想。
高知県の海沿いの街に住む中学3年生小湊伊純は、卒業式を間近に控えて鬱屈とした気持ちを抱えていた。陸上のタイムが伸びないこと、親の都合で春から東京に引っ越すことになってしまったこと、そして過去の失敗。そんな彼女が偶然に異世界に迷い込み、そこで同じく後悔を抱えた少女たちと出会うことで、物語は始まる。
少女たち5人が、異世界での経験を経て後悔を振り切って成長し、再び現実世界へと帰ってゆく『ポッピンQ』の物語は、きわめてウェルメイドな「行きて帰りし物語」で、おそらくはメインターゲットである女子小学生・中学生に大事なことを伝えたい、という真摯さが全体のトーンを規定しているという印象。僕はあまり文脈を理解しないのだけれど、東映アニメーションの魔法少女もの、『プリキュア』的な作品群の延長線上に位置づけられる作品なのだろうなと。
教育的なメッセージを単に伝える、というだけではなくて、楽しく、エモーショナルに伝える、ということにそれらの作品群の特色はあるのだろうな、という気がして、この『ポッピンQ』も少女たちが踊って、あるいは戦うシークエンスはみていて楽しくて爽快感があるし、キャラクターも5人それぞれがキャラ立ちしていて魅力的。
そのようなパッケージを通して何を伝えたいのかと言えば、「過去を肯定し、未来を信じて現在を生きること」みたいなことだと僕は感じて、それが各所で言葉で語られると同時に、主人公で小湊伊純の走りに仮託されているように思われた。この走りの気持ちよさが全編に溢れていて、『君の名は。』といい、2016年は少女が走る映画の系譜に連なる作品がスクリーンをにぎわせたことが後世に記憶されるでしょう[?]。
その未来に向けて生きることの価値を強調するために、悪役の立ち位置も決定づけられているという感じがするのですが、主人公たちの前に立ちはだかるその悪役が、なんというか、圧倒的に『STAR DRIVER 輝くのタクト』じゃねえか!みたいになって映画館で一人快哉を叫びました。
後悔を振りほどけぬまま時を重ねてしまったその悪役は、時を操る力を使って自分にとって心地よかった時間だけに浸って生きていこうと試みるのですが、これはスタドラ最終話においていきなりタイムトラベラーになって快い時間を無限に反復することが俺の目的だったんだ!と叫び人々を困惑の渦に叩き落したヘッドのそれとまったく同型だと思うわけですよ。
スタドラも、というか榎戸洋司が脚本を務める作品で何度も繰り返し出現するモチーフは、青春の有限性、そしてそれが有限であるがゆえに含みもつ輝きだと思うのですが、『ポッピンQ』もまたその有限な青春の輝きを肯定する物語なわけで、それを僕は肯定しないわけにはいかない。
衝撃のラストでおそらく続編が作られるのだろうなという感じがあるわけですが、この調子で彼女たちの青春が終わるまで物語が語られたらいいんじゃないかと思いました。はい。
劇場アニメ「ポッピンQ」オリジナルサウンドトラックセレクション
- アーティスト: VARIOUS ARTISTS
- 出版社/メーカー: avex pictures
- 発売日: 2016/12/21
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【作品情報】
‣2016年
‣監督:宮原直樹
‣原作:東堂いづみ
‣脚本: 荒井修子
‣絵コンテ:宮原直樹、平山美穂、高橋裕哉
‣キャラクター原案:黒星紅白
‣キャラクターデザイン・総作画監督:浦上貴之
‣音楽:水谷広実、片山修志、Team-MAX
‣アニメーション制作:東映アニメーション
‣出演