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宮台真司 大塚明子 石原英樹『増補 サブカルチャー神話解体』を読んだ

 

 

増補 サブカルチャー神話解体―少女・音楽・マンガ・性の変容と現在 (ちくま文庫)

増補 サブカルチャー神話解体―少女・音楽・マンガ・性の変容と現在 (ちくま文庫)

 

  宮台真司大塚明子、石原英樹の『増補 サブカルチャー神話解体―少女・音楽・マンガ・性の変容と現在』を読了。戦後から80年代までのサブカルチャーを、受容の態度に着目して概観することで、若者たちの心性の変遷を追うという内容であった。

  本書の特筆すべき点の一つは、やはりその情報量であろう。戦後から80年代までの、マンガや音楽、性的なメディアをこれほどまでに詳細に捉えた論考はあるのだろうか。それを読んでいるだけでも、なんとなく勉強になった気になる。

 それらのサブカルチャーの変遷を、受容の態度と結び付けることで説得的に論じているのだが、これも相当な力技だと感じた。宮台をはじめとする著者たちが統計調査を元に、明確な人格類型を創造し、それをもとにこれまた膨大なデータを解析していった結果だろうが、それをサブカルチャーそれぞれのジャンルで行なっているのはすごい。共同研究という形式の意味は、このような調査範囲の射程を格段にひろげることにあるんだろうな。

 本書で疑問に感じたのは、宮台らが時折使う「社会システム理論」という語が、いったい何を指し示すのか、という点である。「社会システム理論」がどういったものなのか、説明がなされないまま、「社会システム理論によれば・・・」といった論の展開がなされる部分が少なからずあり、読んでいて不安を掻き立てられた。ルーマンぐらい各自で学んでおけ、ということか、と反省していたのだが、巻末の解説で、圓田氏によって「水戸黄門の印籠」と揶揄されたと書かれていてなんだか安心した。

 

 その巻末の解説は上野千鶴子氏の筆によるものだが、これがまたいい。本書の内容を簡潔に解説したうえで、それを宮台氏の今までの仕事のなかに位置づけている。この解説のおかげで、本書の、ひいては宮台氏への理解が深まった気がする。頭のよさは、こういう短い文章にこそ表れるのだなと思った。

 

 

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