U-NEXTで『プリデスティネーション』をみました。タイムトラベルもののSF、というぐらいの認識しかないなかで見たんですが、いやこれやられました。せっかくなので簡単に感想を書き留めておこうと思うのですが、これネタバレしたら楽しさ半減どころの騒ぎではないので、未見の方は僕の拙い感想など読まれるまえにTSUTAYAにGO!すべきだと思います。
創られた「運命」の輪
ニューヨークで爆破を繰り返し、そのたび警察の手をすり抜け続ける爆弾魔。その男による未曽有の爆弾テロを防ぐため、タイムマシンをもつ政府のエージェントは最後の任務へと赴く。
タイムトラベルもののSFアクション映画なのか?と思っていたら、男の最後の任務は後を託す男をスカウトするところから始まり、しばらくその男/女の身の上話を聴かされることになったので正直面くらいました。
しかし、天涯孤独の少女ジェーンを襲った苦しい出来事の連鎖は、アクション以上にスリリング。突出した能力ゆえの孤独、人生の岐路での取り返しのつかない過ち、そして掛買のない人との離別。
「お前の人生を壊した男を差し出すと言ったら?」
「お咎めなしだとしたら、殺すか?」
男によって人生を台無しにされた男を殺すこと。そのために、ジェーン=ジョンは政府のエージェントになることを選ぶ。しかし彼を待ち受けていたのは、まさに運命の皮肉としか言いようのない事態だった。
そしてその皮肉の連鎖は物語全体を覆い尽くす。自分の人生を破壊したのが、自分の人生を破壊した男を殺したいと願った自分自身だったという皮肉。あれほど縋り付いた、唯一の希望を奪い去ったのもまた自分だったという皮肉。自分があれほどまでに阻止したかった爆弾テロを仕掛けたのは、当の自分自身だったという皮肉。
タイムマシンという道具立てを用いて、いかに一人の女/男の人生をそれ単体で完結させられるのか、ということを実験したかのごとき、壮大なる自作自演の喜劇。その喜劇が、それを演じる当事者にとっては悲劇でしかないことは言うまでもない。自分の尾を喰らう蛇は、その円環の中から抜け出ることはかなわない。その円環から抜け出ようとする意志までもがすでに、その循環をむしろ助ける機能を果たしてしまうのだから。
タイムトラベルによって犯罪を阻止しようとした男、ロバートソンによっておそらくは創られた「運命 predestination」の輪。それが本当に犯罪を減少させることにつながったのか、それとも敵を熟知する脅威の爆弾魔を生み出しただけだったのか、それは「運命」の輪を廻りつづける蛇=ジェーン/ジョンには、そして観客にも知るすべはない。
身喰らう蛇は自身の尾を喰らい続けることしかできないのだという事実を蛇自身が悟る時、映画の幕は閉じられる。
たとえ時や場所を自在に行き来できようが、システムの管理からは逸脱すること叶わず、円環の中に留まり続けるしかない。このことをじわじわと、真綿で首を締めるが如く観る者に訴えてくる、そんな映画だったなと思いました。
関連
たとえシステムの内部で循環することしかできなくても、それでも我々は戦うのだってのが『PSYCHO-PASS サイコパス』の結末だったように思います。本作と対照的。
時をかけることにそれほどの力があるわけではないんだ、っていうのは共通してるような、してないような。
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【作品情報】
‣2014年/オーストラリア
‣監督・脚本:マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ
‣原作:ロバート・A・ハインライン『輪廻の蛇』
‣出演
- バーテンダー - イーサン・ホーク(井上倫宏)
- ジョン/ジェーン - サラ・スヌーク(斎賀みつき)
- ロバートソン - ノア・テイラー(佐々木睦)
- マイルズ - クリストファー・カービイ(北田理道)
- ミラー - クリス・ソマーズ(渡邉隼人)
- フジモト医師 - クニ・ハシモト(堀越富三郎)
- ベス - ケイト・ウルフ(西村野歩子)
- クラーク医師 - ベン・ブレンダガスト(小林親弘)
- ローゼンブラム先生 - フェリシティ・スティール(喜代原まり)
- ステイプルトン - マデリーン・ウエスト(土井真理)
- マーシー - アレクシス・フェルナンデス(的場加恵)
- ボールドウィン医師 - ラージ・サイダ(橘潤二)
- ハインライン医師 - タイラー・コッパン(荒井勇樹)
- コナー - レイ・ティアナン(宮崎敦吉)
- アリス - フレイヤ・スタッフォード(清水はる香)
- ジェーン(10歳) - モニーク・ヒース(北川里奈)
- 上級生の女子 - ソフィー・カスワース(里郁美)
- 面接官 - クリストファー・ストーレリー(やまむらいさと)
- ガーナー先生 - ルイーズ・タルマッジ(おのえみこ)