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その衣装、イカしてるわね——『ソー:ラブ&サンダー』感想

ソー:ラブ&サンダー (オリジナル・サウンドトラック)

 『ソー:ラブ&サンダー』をみました。以下、感想。

 サノスとの決戦で活躍したあと、アスガルドの王の座をヴァルキリーに引き継ぎ、大宇宙を旅することにしたソー。日々悪党を成敗しながら、自身のやるべきことを探っていたが、そんな折、神殺しの男に襲われている最中の旧友から救援要請が届く。一方、地球では、ソーの元恋人で天体物理学者のジェーン・フォースターは癌に侵され、闘病していた。化学療法も思うようにいかない彼女は、ソーのもつハンマーに一縷の望みを託し、半ば観光テーマパークと化した新たなアスガルドを訪れるのだった。

 マーベル・シネマティック・ユニバースの29作目にして、『ソー』シリーズの4作目。監督は前作『ラグナロク』に引き続きタイカ・ワイティティ。前作でみせた「ここまでやらせていいのか?」という脱力ギャグ演出は健在。それが神々が我々とはまったく異なる仕方で世界と相対しているさまを示しているような気もして、このシリーズにこの監督をあてた采配はお見事だったと思う。

 一方で、そうした演出の路線が、今回のヴィランクリスチャン・ベール演じる神殺しの復讐者と食い合わせが悪いと感じたのも事実。信じていた神に裏切られ、魔剣になかば操られるようなかたちで神殺しを繰り返していた(とはいっても作中ではその活躍ぶりをそんなにおがめないんだけど...)この男、うまく切り取れば『シビルウォー』のヘルムート・ジモに匹敵する陰影のある悪役になれたと思うんだが...。子ども相手に理不尽系怖い話でびびらすあたり、こいつは稲川淳二的なあれなのか、みたいな雰囲気もあって、なんか笑っちゃったんですけど、なんというか、こちらに笑いの一つもおこさせないような、苛烈でストイックなヴィランであってたほうがわたくしの好みとしてはよかった。とはいえ、一方的にたたき伏せるのではなく改心の末成仏する...という展開は記憶に新しい『ドクター・ストレンジ』の前作なんかとも重なるし、MCUでも工夫しているのかなという気はした。

 とはいえこの映画の最大の魅力は、やもするとコスプレじみた雰囲気を漂わせてしまう衣装を見事に着こなすナタリー・ポートマンの居住まい、これよ!キャラクターとしては死を間近に控えてはいても、「スーパーヒーロー」になったことのうれしさにそわそわするような楽し気な雰囲気のおかげでそんな暗くならんのもえらい。わたくしのなかではナタリー・ポートマンのベストは『ファントム・メナス』で、それは不動ですけど、この映画でGuns N' Rosesをバックに溌溂さを発揮する姿も、めっちゃよかったです。もっともっともっと、ナタリー・ポートマンが活躍する映画だったら、わたくしはよかったすね~あと百倍くらい活躍してくれてもよかったと思う。