宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2018年6月に読んだ本と近況

梅雨の唐突な死。

先月の。

2018年5月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

 印象に残った本

それは私がしたことなのか: 行為の哲学入門

それは私がしたことなのか: 行為の哲学入門

 

  古田徹也『それは私がしたことなのか』は今年読んだなかでも最も印象に残っています。人類は読みましょう。

amberfeb.hatenablog.com

 

読んだ本のまとめ

2018年6月の読書メーター
読んだ本の数:21冊
読んだページ数:6972ページ
ナイス数:219ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly

 

行きそで行かないとこへ行こう (新潮文庫)

行きそで行かないとこへ行こう (新潮文庫)

 

 ■行きそで行かないとこへ行こう (新潮文庫)
 ピンクフロイドの心地よい退屈さ、「ここではないどこか」などないとわかっていてもそれにどうしようもなく惹かれること、誰かに何かを伝えたいという気持ち。いい塩梅の読書でした。カレーが食べたいです。
読了日:06月01日 著者:大槻 ケンヂ
https://bookmeter.com/books/568330

 

東京建築 みる・あるく・かたる

東京建築 みる・あるく・かたる

 

 

■東京建築 みる・あるく・かたる
 区部の建築を歩いて語る。明治期の近代建築からスカイツリーまで、幅広くアンテナを張ってる点が本書のおもしろさかなと思います。その所為で散漫になってるきもしますが。
読了日:06月03日 著者:倉方 俊輔,甲斐 みのり
https://bookmeter.com/books/5601320

エジプト十字架の謎 (創元推理文庫 (104-9))

エジプト十字架の謎 (創元推理文庫 (104-9))

 

 ■エジプト十字架の謎 (創元推理文庫 (104-9))
 首無し死体とTの符丁。捜査線上に浮上する復讐劇。こちらがうっかり素通りしてしまう場所に犯人の致命的な失策を滑り込ませる手際が巧妙というほかなくて、指摘された時は探偵になり損ねた登場人物たちと共に歯噛みしました。
読了日:06月05日 著者:エラリー・クイーン
https://bookmeter.com/books/557142

 

Yの悲劇 (新潮文庫)

Yの悲劇 (新潮文庫)

 

 ■Yの悲劇 (新潮文庫)
 支離滅裂さにこういう仕方で解答を与えるのか!という驚きと、最後に一線を超えたかにも思える探偵の背中に慄く。面白かったです。
読了日:06月07日 著者:クイーン
https://bookmeter.com/books/546369

 

それは私がしたことなのか: 行為の哲学入門

それは私がしたことなのか: 行為の哲学入門

 

 ■それは私がしたことなのか: 行為の哲学入門
 私たちが日々行う「行為」とは何か。それを基礎付ける「意志」とは何か。そしてその行為の(意図せざる)帰結に、どう向き合うべきなのか。意志や行為をめぐる問題を丁寧に議論していき、やがて私たちはどのように行為と向き合うべきなのか、という倫理学(批判)に至る。行為をとりまく複雑な事態を簡明な実例によって跡付けていく手際が見事で、かつその態度がある種の倫理として本書の主張を支えてもいるし、それこそが本書の倫理学ともいえるだろうと思う。丁寧に読んでいけば、専門的な知識がなくとも「わかる」、出色の哲学書です。名著。
読了日:06月09日 著者:古田徹也
https://bookmeter.com/books/7118139

 

小説から遠く離れて (河出文庫)

小説から遠く離れて (河出文庫)

 

 ■小説から遠く離れて
 20世紀末の日本で小説として流通していたテクストから、共通の主題を取り出し論じる。文体でも真似すっかみたいな気持ちがちょっとあったのだけど、俺が真似したところで数多の蓮實エピゴーネンの一人になるだけじゃんみたいな気持ちになり、結局ページをぺらぺらめくるだけで終わった感じする。
読了日:06月09日 著者:蓮實 重彦
https://bookmeter.com/books/3074

 

エラリー・クイーン Perfect Guide

エラリー・クイーン Perfect Guide

 

 ■エラリー・クイーン Perfect Guide
 各作品の紹介やミステリ作家のエッセイなど所収。エラリー・クイーンは何から読んだらいいのか問題を解消してくれてありがたいことです。

 

 読了日:06月10日 著者:飯城 勇三
https://bookmeter.com/books/478541

 

菊地成孔の欧米休憩タイム

菊地成孔の欧米休憩タイム

 

 ■菊地成孔の欧米休憩タイム
 リアルサウンド初出の映画評を中心に所収。韓国映画を熱っぽく語っているのがとにかく印象的で、ちゃんと見ないとなあと思いました。
読了日:06月11日 著者:菊地成孔
https://bookmeter.com/books/1214508

 

アニメーション、折りにふれて

アニメーション、折りにふれて

 

 ■アニメーション、折りにふれて
 『かぐや姫の物語』公開後に刊行されているが、おおよそ21世紀に書かれた短い文章がまとめられている。とりわけ『かぐや姫の物語』の企画書なんかは、監督自身が『竹取物語』をどう読んだのか、というのが鮮明になっておもしろいなと思いました。
読了日:06月11日 著者:高畑 勲
https://bookmeter.com/books/7829551

 

教養としての「世界史」の読み方

教養としての「世界史」の読み方

 

 ■教養としての「世界史」の読み方
 非歴史学者の世界史教養本の氾濫に喝を入れるため書かれたっぽい歴史学者による教養的歴史本。非歴史学者の教養本がよいとは全く思わないが、本書の内容を教養と言われると、うーん、という感じです。五賢帝は日本で便宜的に使われるようになったことばなんですってよとか、そういうトリヴィアルな知識はなるほどという感じだが、歴史学者が書いた優れた啓蒙書を読む方が本書をめくるより全然よいのでは、とかちょっと思っちゃいます。弓削の『ローマはなぜ滅んだか』とか。教養とは専門知のなかにしか宿らないと思うので。
読了日:06月12日 著者:本村 凌二
https://bookmeter.com/books/11287435

 

声優語 ~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~

声優語 ~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~

 

 ■声優語 ~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~
 Febriに連載されている有名声優へのインタビューをまとめたもの。僕が物心ついたころにはすでにベテランだった声優さんにも新人時代があったのだなという当たり前のことを思う。ふだん、興味は作品中心に向かっていて、声優にはそれほど興味をひかれてこなかったのだけど、おもしれえなあと思いました。
読了日:06月12日 著者:
https://bookmeter.com/books/11232273

 

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

 ■そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
 いやー、その共犯はずるくない?(大変おもしろかったですの意)。
読了日:06月12日 著者:アガサ クリスティー
https://bookmeter.com/books/574376

 

Xの悲劇 (新潮文庫)

Xの悲劇 (新潮文庫)

 

 ■Xの悲劇 (新潮文庫)
 同年に発表された『エジプト十字架の謎』と同じく「顔のない死体」もの。現実を舞台に見立て演出すら試みようという欲望を垣間見せる探偵レーンに慄く。
読了日:06月18日 著者:クイーン
https://bookmeter.com/books/516354

 

 ■あなたは今、この文章を読んでいる。:パラフィクションの誕生
 「読まれること」によって立ち上がる経験、それをメタフィクションの切り開いた地平の上に登場したパラフィクションは、それに狙いを定める。円城塔から伊藤計劃を経由して、伊藤計劃=円城塔へと流れるように主題を書き継いでいき、『屍者の帝国』論で結ばれる結部をとりわけおもしろく読んだ。
読了日:06月20日 著者:佐々木 敦
https://bookmeter.com/books/8202902

 

すべての新聞は「偏って」いる  ホンネと数字のメディア論

すべての新聞は「偏って」いる ホンネと数字のメディア論

 

 ■すべての新聞は「偏って」いる ホンネと数字のメディア論
 全ての新聞は偏ってる。今時そんなこと小学生でも知ってるよ、ですって? じゃあどの新聞がどのように「偏って」いるのか、記事の比較とデータ検証で見せてあげますとも、というのが本書の姿勢で、偏りのあり方をデータに基づいて具体的に露わにしている。そして個別の新聞にとどまらず、新聞自体がステイクホルダーになった時に一様に奇妙な偏りを見せていたことも暴いてみせる語り口がお見事。私たちとメディアとの関係性をよりポジティブに変えてゆく、そのために広く読まれたらよいなと思います、
読了日:06月21日 著者:荻上チキ
https://bookmeter.com/books/1250870

 

Zの悲劇 (角川文庫)

Zの悲劇 (角川文庫)

 

 ■Zの悲劇 (角川文庫)
 語り手を変え、ドルリー・レーンの舞台は続く。解説の法月綸太郎の述べるとおり、ラストの消去法推理の見事さにうっとりする。クイーンの越前訳は初めて読んだのだけれど、それが語り手の変化とマッチしていて僥倖だったかも。
読了日:06月22日 著者:エラリー・クイーン
https://bookmeter.com/books/439612

 

 ■ヴィルヘルム2世 - ドイツ帝国と命運を共にした「国民皇帝」 (中公新書)
 ヴィルヘルム2世の評伝。武断的で絶対君主のごとく振る舞う反面、移り気で優柔不断、自らの弱さを隠すために自己を過剰に演出する、という矛盾したパーソナリティが、その生涯、ひいてはドイツの近代史をいかに成形していったのか叙述していく。ディレッタントが巨大な影響力をもってしまい、しかも時代の空気と奇妙に共振してしまったことの悲喜劇。軽率と憶断のツケを払うことなく天寿を全うした人生はあまりに幸福に思えるが、当人にとっては全く異なる様相で経験されただろうという総括は、私たちの実存に強く訴えかけるものがある、ような。
読了日:06月23日 著者:竹中 亨
https://bookmeter.com/books/12820658

 

素晴らしい日本野球(新潮文庫)

素晴らしい日本野球(新潮文庫)

 

 ■素晴らしい日本野球 (新潮文庫)
 野球評論のパロディからソ連に占領された日本を舞台にした短編など所収。野球=柳生はまあそうね、という感じだったが柳生=野牛=バファローズには参りました。
読了日:06月23日 著者:小林 信彦
https://bookmeter.com/books/514337

 

1960年5月19日 (岩波新書 青版 395)

1960年5月19日 (岩波新書 青版 395)

 

 ■1960年5月19日 (岩波新書 青版 395)
 1960年5月19日。この日付からすぐさま何事かを想起する人は、いまやそれほど多くはないのではないかと思う。60年安保反対運動の盛り上がりの余熱のなかで書かれたこれは、何より時代の証言であるし、だからこそ、そこから遠く離れてしまった私たちには彼らの自己認識や社会認識はなんとなく懸隔を感じもするし、だからこそおもしろいなとも思う。まさしく大文字の歴史の最中に自分たちがいて、それを作っているのだという強烈な自負。それは私たちがそこに置き忘れ、持っていた感触すら失われたものであるような気がする。

 とはいえ、それはどうやったってここには持ってこれないものだったのだろうとは思うのだけど。それを手放すことなしに、いま、ここにたどり着くことはかなわなかったのだ、たぶん。
読了日:06月25日 著者:
https://bookmeter.com/books/52572

 

 ■太宰よ! 45人の追悼文集: さよならの言葉にかえて (河出文庫)
 太宰治の死に接して書かれた文章45編プラス町田康の解説を所収。とりわけ印象に残ったのは坂口安吾「不良少年とキリスト」。「負けぬとは、戦う、ということです。それ以外に、勝負など、ありやせぬ。戦っていれば、負けないのです。決して、勝てないのです。人間は、決して、勝ちません。ただ、負けないのだ。」。

図書カード:不良少年とキリスト

 しかし、青空文庫はどうなっちゃうんでしょう。
読了日:06月26日 
https://bookmeter.com/books/12880966

 

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

 

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち
 ラストベルトで生まれ育ち、そこから弁護士へと階級移動を果たした男の自伝。詳細に書かれた幼少期、とりわけ支離滅裂な行動を繰り返す母の挿話が執拗に反復されてかなり苦しい。海兵隊に入って物の見方を変えられた/教えられた、という話がとりわけおもしろくて、生活すべてをコントロールするシステマチックな規律訓練の機構の具体的な凄まじさを垣間見た気がする。
読了日:06月28日 著者:J.D.ヴァンス
https://bookmeter.com/books/11538329


読書メーター
https://bookmeter.com/

近況

帝国の呪い――『ゲティ家の身代金』感想 - 宇宙、日本、練馬

二次創作的想像力――『デッドプール2』感想 - 宇宙、日本、練馬

欲望と地理の問題――アニメ『あさがおと加瀬さん。』感想 - 宇宙、日本、練馬

 『犬ヶ島』もみたんですが、感想書き忘れてますね。

 

 

amberfeb.hatenablog.com