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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』感想

「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」オリジナル・サウンドトラック

 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(原題:Little Women)をみました。よかったです。以下感想。

  南北戦争の傷跡も生々しいアメリカ合衆国。4人姉妹はアメリカで、あるいは海の向こうで、それぞれの人生を生きていた。ずっと一緒に生きていくというほのかな予感は、決定的に否定されようとしていた。そんな最中に思い返される、幸福な日々のきれぎれの記憶。

 ルイーザ・メイ・オルコットの『若草物語』を、『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグが映画化。決定的な悲劇が進行しつつある現在に、幸福だった過去を回想のようなかたちで挿入していく語りによって、ある種の散漫さをまとう少女時代のエピソードを空中分解させずに統御していて、それがまずお見事でしょう。

 その散漫さ自体がそれぞれシリアスな問題に直面する四姉妹の現在を救済してもいて、四姉妹のかしましさをキュートに映している過去の明るさは単純に快い。しかも、脚色によって、「結婚=ハッピーエンド」的な図式はつねに批評に晒され、リアルなカネの問題が四姉妹をとりまいている。自分たちを「貧乏」と自嘲する四姉妹ではあるが、それは近所のあばらやに住む一家との対比である種の残酷さを帯びもする。彼女らが煩悶するカネの問題など、しょせん贅沢な悩みにすぎないのだと。

 「幸福」を希求してその「幸福」を登場人物に与え、なおかつその通俗的な「幸福」を相対化する眼を捨て去らなかったこの映画のクレバーさは、やはり見事だと思う。

 

 

 

 

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