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非道をもって非道を制す──『ドミノ』感想

映画チラシ「ドミノ」ベン・アフレック主演 ロバート・ロドリゲス監督

 ロバート・ロドリゲス監督『ドミノ』(原題:Hypnotic)をみました。たいへんおもしろかった!以下、感想。物語上の仕掛けに触れています。

 娘を誘拐され煩悶する刑事、ダニー・ローク(ベン・アフレック)。タレコミにしたがい銀行強盗を阻止しようと試みるが、強盗が貸金庫から奪おうとしたのは、彼の娘の写真、そして謎めいたメッセージだった。他人を操る超能力をもつ銀行強盗の男(ウィリアム・フィクトナー)を取り逃がしたロークは、強盗をたれこんだという占い師のもとを訪ねる。そこで人知を超えた超能力の存在、影でうごめく巨大な陰謀をしった男は、娘を探して奔走することになる。

 『デスペラード』、『マチェーテ』のロバート・ロドリゲス監督の最新作は、娘を探す刑事が超能力をめぐる陰謀に巻き込まれるサイコサスペンス。ベン・アフレック演じる刑事が、占い師にして元特殊機関のエージェント(アリシー・プラガ)の助けを借りて、超能力をもつ謎の男と対決する。元は政府機関の最強のエージェントだという不気味な男を演じるのは『ヒート』のウィリアム・フィクトナー。その乾いたたたずまいがとにかく素晴らしい!

 自在に幻覚をみせ、他人の行動をたやすく操る超能力者が存在する(ベン・アフレック演じる男は何故か耐性があるという)ので、ともすればお話の底が抜けて「なんでもあり」になる危険性がある。久保帯人の『BLEACH』はまさにそうなってしまった例(結局最後の敵すら催眠術を利用して打倒する羽目になってしまった)と思うが、この映画は90分程度の上映時間もあって底が抜けきらないうちにきちんと結末を迎える。とはいえ、あまりにも簡単に追跡を振り切れてないか?とか、ちょっと違和感を喚起するポイントがあったりするのだが、その違和感がきちんと伏線になっているのがえらい。

 「刑事の娘探し」は超能力で体感させられていた幻覚にすぎず、ベン・アフレック演じる男は実は機関に所属する超能力者であり、娘の圧倒的な超能力が「機関」に利用されることを恐れ、娘をいずこかへと隠したうえで自分の記憶を抹消していたのだ。機関は娘の居場所を探るため、男に「娘探し」のストーリーを与え、男のなかに眠る記憶を呼び起こそうと試みる。そのシミュレーションの起点がまさに映画の冒頭部ということになる。この大仕掛けには素朴に驚かされ、大いに楽しんだ。

 シミュレーションのなかに放り込まれた男もされるがままではなくて、そこかしこに目覚めるためのキーを残し、時が経つのを待っていた。娘が最強の能力者に成長し、機関の人間を皆殺しできる力を身につける、その日まで!このあまりにあっけらかんとした非道ぶりというか、非道を非道をもって制する無茶苦茶ぶりは素晴らしいというほかなくて、(実際に娘が殺害しているというよりは義理の両親たちが銃で殺害してまわっているようではあったにせよ)少女による大量殺戮を快いシークエンスとして演出してしまえる胆力には凄みを感じる。

 エンドクレジットなかほどに挿入される大オチ(じつは〇〇は生きていた!)もとにかくうれしく、大変満足して劇場をあとにしました。