『サンダーボルツ*』をみたので感想。結末に触れています。
サノスとの戦いで命を落としたナタリア・ロマノヴァの義妹、エレーナ・ベロワは、CIA長官であるコンテッサ・ヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ(ヴァル)の依頼で闇の仕事を請け負う日々を過ごしていたが、いい加減嫌気がさしてもいた。最後の仕事で向かった先で、同じくヴァルのエージェントたちとともに抹殺されかけたエレーナは、仕方なしにそのエージェントたちと協力し、生き延びるため戦う。
マーベル・シネマティック・ユニバースの第36作目は、フローレンス・ピュー演じるエレーナを中心に、脛に傷持つならずものたちが集う新チームの戦いを描く。エレーナの義父である旧ソヴィエトの超人兵士アレクセイ・ショスタコフ=レッド・ガーディアン、かつてアントマンと敵対した透過能力をもつ女性エイヴァ・スター=ゴースト、かつてキャプテン・アメリカを襲名したが力をコントロールできず剥奪されたジョン・ウォーカー、いきがかりで共通の目的をもつことになったスティーブ・ロジャーズの畏友、バッキー・バーンズ=ウィンター・ソルジャーらが中心。『ブラックウィドウ』に登場したタスクマスターがあっさり退場してしまったのは残念。このキャラクターの扱いの雑さは、かつての実写版『X-MEN』を想起した。
かつてアベンジャーズに集ったスーパーヒーローほどの超常の力を持たないキャラクターが、いがみあいながらも協力しながら進行していくドラマはいい感じに脱力していて、おもしろくみた。『ブレイブ・ニュー・ワールド』ではお預けだったウィンター・ソルジャーの久々の活躍も眼福。謎の青年、ボブが覚醒し闇に落ちた姿であるヴォイドも、一般市民を次々と影に変えていく演出は絶望感があり、印象的だった。
一方で、確かにこのレベルの敵を正面から打倒するのは難しいのは理解するが、ヴォイドとの対決が精神世界的な舞台で、ある種のセラピーのようなかたちで決着するのは、ヒーローアクション映画に求めるものとしては肩透かし感があったことは否めない。『エンドゲーム』以降のマーベル・シネマティック・ユニバース作品が、全体として傷とその回復を基調としていることは理解するし、『サンダーボルツ*』もその延長にあるのはわかるのだが、悪漢が大集合するこの映画にはもっと別のことを期待していたのも事実。
結部、寄せ集めの「サンダーボルツ」が「ニュー・アベンジャーズ」としてプロデュースされるのは大きなサプライズではあったが、ここからどう来年公開予定の『アベンジャーズ』新作につなげるのかしら。今年公開予定の『ファンタスティック・フォー』新作がひとつのターニングポイントなのかしら。