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当たり前のようにあるそれの重み―『舟を編む』感想

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 Huluで『舟を編む』をみました。よかったです。以下で簡単に感想を。

 誰かがそれをつくっている

 『舟を編む』は、出版社に勤務するマジメすぎるほどマジメな男、馬締光也が辞書を創りあげる物語。極めてシンプルな筋立てに、辞書を作るという普段想像もしないような仕事の過程と、馬締をとりまく温かな人間模様、そして辞書編纂という大事業に関わる人間たちの熱意が添えられて、とてもいろんな魅力にあふれた映画だと思いました。

 なかでも面白かったのは、辞書を作るという仕事のディティール。描かれている内容がどれほど辞書編纂の実情を映しているのかはちょっとわからないですが、しかし確かに本物っぽさはあった。言葉を探し、用例を採取し、そのひとつひとつに意味を吹き込む。10年単位の、果てしない地道な作業の積み重ね。

 そこにあるべき言葉が収められていない、ということはあってはならない。内容だけではない。紙の質も、最大限のめくりやすさ、読みやすさがなければならない。その意味で辞書は一個の芸術品ですらある。辞書だけでなく、紙の本全般がそうだといえるかもしれませんが。

 身近に当たり前のようにある辞書って、そんな営為の結果として、そこに存在しているのだなあと。その意味で、『舟を編む』は『SHIROBAKO』なんですねえ。

amberfeb.hatenablog.com

  いや、冗談ではなくて、普段当たり前のように放映されているアニメの裏側では、こんなに多くの人ががんばっているんだぜ、みたいなことを伝えた『SHIROBAKO』と、辞書編纂に関わる人々の情熱と努力に光をあてた『舟を編む』、これは大変似ている。

 話がそれましたが、誰かがそれをつくっているのだ、という当たり前のこと、その当たり前の裏にある並々ならぬ熱意。当たり前のようにある辞書というものの重みを気付かせてくれるような映画だったと思います。

 

航海は終わらない

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 それで辞書『大渡海』の完成・発売をもって、『舟を編む』の物語は一区切りするわけですが、馬締光也の航海は終わらない。彼は完成記念のパーティの席で、はやくも改訂作業に入らなければと気持ちを新たにする。

 これが最高にかっちょいいじゃないですか。発売されてもそこで一区切りなんだけど、仕事自体は終わらない。むしろそこから新たな旅が始まる。そんなことを大げさにならず、ごく自然に物語のなかに組み込むあたりクールだなあと。そんなわけで『舟を編む』はとてもよかったです。

 

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【作品情報】

‣2013年/日本

‣監督:石井裕也

‣原作:三浦しをん

‣脚本:渡辺謙作

‣出演