攻殻機動隊 新劇場版 - [公開前夜!オールナイトイベント]... | Facebook
昨日から今日の朝方にかけて行われた「攻殻機動隊 新劇場版」公開前夜!25周年記念オールナイトイベント”GHOST IN THE NIGHT”に行ってきました。今まで『攻殻機動隊』のアニメにかかわってきた5人が公の場で一堂に会するというのはおそらく史上初だそうで、すげー現場に立ち会ってしまった...と素直に感動しました。チケットは10分でほぼ完売という感じだったようで、行けたこと自体ほんとにラッキーだったなと。
以下でニッポン放送の吉田尚記アナを司会に、新劇場版の総監督である黄瀬和哉さん、脚本の冲方丁さん、プロダクション・IG社長の石川光久さん、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』監督の押井守さん、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』監督の神山健治さんを招いて行われたトークショーを、メモと記憶を頼りにまとめておこうと思います。いかんせんメモが不完全なためあやしいところも少なくないです。特に吉田アナの発言は全然メモれませんでした。明らかな誤りなどはコメント等でご指摘いただければ。
新劇場版について
まず、新劇場版で総監督・脚本をそれぞれ務めた黄瀬和哉さん・冲方丁さんと石川光久社長が登壇。
黄瀬和哉総監督(以下黄瀬):本日は雨の中きてくださってありがとうございます。おっさんばっかで色気がないですが(笑)、よろしくお願いします。
冲方丁さん(以下冲方):これから上映される新劇場版で脚本を務めた冲方丁です。後半は皆さんと一緒に観客として楽しみたいと思います。
石川光久社長(以下石川):プロダクション・IG社長の石川です。今日のテーマは擬似記憶だと思ってます(笑)。
吉田尚記アナ(以下吉田):まず新劇場版にかかわる3人に登壇してもらったわけですが、このあとトーンが低いのに饒舌という監督が控えていて新劇場版の話が出来なくなるかもしれないので(笑)、まず3人に登壇していただきました。公開を控えての気持ちは。
黄瀬:完成披露の時は「せいせいした」と言い切っちゃったんだけど...。
吉田:期待と不安、どちらのほうが大きい?
黄瀬:不安のほうが大きい。気持ちは最初は低めからスタートしてあげてったほうが楽。
冲方:黄瀬さんとほぼ一緒の気持ち。でも『攻殻機動隊 ARISE』のborder:1の公開前はよくわからないテンションで、大阪で4時まで飲んでた(笑)。お客さんにみせる段になるとやっぱり違う。
吉田:大人のやることじゃない(笑)。黄瀬さんも飲んでたんですか?
黄瀬:僕はホテルに帰って寝てた。
冲方:黄瀬さんはずっとテンションがフラットで、みんな普段と違うテンションだった中でひとり安定していた。
吉田:そのborder:1公開時点で新劇場版の脚本はあがってたんですか?
冲方:あがってなかった。
吉田:『攻殻機動隊 ARISE』のborder:1が公開されて、お客さんの反応っていうのはやっぱり気にされていたんですか?
黄瀬:とくに何も考えてない。
吉田:思い入れがあるのかないのか(笑)。石川社長は公開を控えてどういうお気持ちですか?
石川:キター!って感じ。新劇場版をみてもらったらわかると思います。
吉田:「キター!」って、ネット(ニコ生)の人々と同じ感想ですよ(笑)。新劇場版は『ARISE』の続編としても、単体でも楽しめる。すごい。
石川:その通り。
冲方:社長のオーダー。
吉田:逃げられないように外堀を埋めてから、黄瀬さん・冲方さんに監督・脚本を依頼したということですが...。
黄瀬:真実。「監督の仕事受けたら企画の内容を教える」と言われた(笑)。冲方さんを口説くミッションの段階では総監督は決まってなかった。
石川:今までの『攻殻機動隊』のイメージを壊すためにも、強い芯が必要だった。壊すことが大事だった。黄瀬が真剣に壊したからこそ、変わらないものが見えたと思う。
吉田:社長としては、どんなお客さんに見て欲しい?
石川:攻殻のファンも年齢層があがってるので、若い世代にみてもらえたら。はじめてみる観客にもやさしい、でも奥深い作品になっている。
吉田:思った以上の作品だった。
石川:あがった時に、こりゃすごいと。身震いしたほどすごい。
押井監督・神山監督登壇!
押井守監督(以下押井):みなさんお疲れ様です。いきなり呼ばれて来たんですが、人の映画だと気が楽だなあ(笑)。
神山健治監督(以下神山):『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(以下SAC)で監督を務めた神山です。僕も人の映画なのでそんな緊張してないです。押井さんと石川社長と服装が被ってしまった(笑)。
『攻殻機動隊』とテクノロジー
吉田:『攻殻機動隊』シリーズ25周年ということで、いまどんな気持ちでしょうか。
押井:この25年なにやってたんだろって感じ。変わったのは髪の毛の量が減ったくらいで(笑)、あんまり実感が...。
吉田:押井監督が『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(以下GIS)を撮られてから、科学技術は大きく発展して、現実のほうはだいぶ変わったんじゃないでしょうか。
押井:確かに現実が追い付いてきているのを感じる。スマホがこんなに普及するとは思わなかった。GIS当時はインターネットもまだ普及し始めたばっかりという時期で、僕はまったく知らなかった。映画では妄想で描いていた。インターネットがこれほど普及するとは当時は考えもしなかった。僕ですら3年前にスマホ買ったし。
でも映画は現実とは関係ないとこで作ってるから。
吉田:現実は押井監督の想像力の外に未だに出れていないのかもしれませんね。神山監督はどうですか。
神山:つくりはじめてから15年くらい経つけど、まだつい最近のことのように思える。僕がSACを作っていたころは携帯電話も普及し始めてたけど、それでもメールで100何文字打てるとか、そういう世界だった。SACはわかりやすく作ろうという思いがあって、電脳化はケータイが頭の中に埋まっているというイメージだった。
吉田:そういうテクノロジーとのかかわりについて、『ARISE』はどのような感じで作っていたんですか?
黄瀬:とくには意識せず。ただ、時系列的に前日譚という位置づけなので、今までの技術を越えないように、というのはあった。つながらなくなっちゃうので。
冲方:今までのシリーズでは、名シーンとテクノロジーが強く結びついていたと思う。そこを考えていろいろ調整しました。本当に大変だった。
『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』と5人
吉田:石川社長はこの25年を振り返って、どうでしたか。
石川:25年前、押井監督の劇場版パトレイバーの絵コンテで痺れた。プロダクション・IGは押井守に映画を作らせるためにあるんじゃないかと。でも『イノセンス』あたりから怪しくなってきた(笑)。押井さん、借金返してください!(笑)
吉田:GISには黄瀬さんはアニメーターとして参加されてますよね。
黄瀬:しょっちゅうゲーセンに行って、捕まって連れ戻されてた。制作とか押井さんとかに。
吉田:一度や二度じゃないんですね(笑)。
押井:黄瀬がいなくなると、だいたい駅前のいつものゲーセンにいたので、連れ戻すためにバーチャファイターで勝負してた。「負けたら戻れ!」って(笑)。結構勝負した。
吉田:どっちが強かったんですか?
押井:大差ない。でも僕はラウ使いだったんで攻めがワンパターンになっちゃう。それで黄瀬が待つから...。
吉田:よく完成しましたね(笑)。
押井:当時はスタッフでしょっちゅうゲーセンにいってた。夕飯を食べにいった帰りにゲーセン寄って、数時間遊んで、スタジオ戻って...。スタジオ戻ると午後10時くらいなので僕は帰って、スタッフはそのまま残って作業してた(笑)。
吉田:そろそろ内容について。原作は押井さんのほうから?それとも社長から?
石川:押井監督が社員旅行でスキーに行ったときに原作を持ってきてた。
押井:両サイドからあった。バンダイにのちの『人狼』の企画書を持ち込んだ時に、おごってやるからといって寿司屋の2階に連れていかれた。いつも炉辺焼きの店とかなのに、その時は寿司屋のお座敷に。それで自分の企画書を見せる前にバーンと機先を制された。
でもその前から原作は読んでいて、自分がアニメ化するような気はしていた。自分ならどうやろうかな、どう撮ろうかなって。で、大変な原作だなと。バンダイの人も絶対わかってなかった。けど売れると思ったんだろうな。それをわかりやすくしようと。言葉や設定が当時はわかりにくい。スタッフに説明するのが大変。原作を20~30回読んだ。当時のスタッフもわかってなかったと思う。黄瀬とかわかってなかった(笑)。
黄瀬:作中で具体的には説明されないから「わかんなくてもいいよ」と言われた。技術的なところを描いていないので。描いている側としてはつなぐとこうなる、とかが理解できてればよかった。
吉田:神山監督・冲方さんは、GISの時はどういう風にみていたんですか?
神山:当時はアニメ業界に居たけど、かけだしの演出で、押井監督とも面識がなかった。なのでお金を払って一観客として観に行った。押井監督の作品は大好きだったし、原作も読んでいたので、押井監督にぴったりだなと。原作の素子が天使をみるシーンなんかをみて、押井監督が撮るんじゃないかと思っていた。
冲方:僕も神山監督と同世代。公開当時はまだ10代で、これからいろいろ勉強しようというときだった。だからGISは教科書みたいなもの。ものすごくインスピレーションが生まれた。当時はSF冬の時代で、帯にSFと書いてあるだけで売り上げ落ちるといわれていたけど、GISが風穴を開けてくれた。教科書であり、道しるべであり、救世主。影響を受けざるを得ない。
吉田:GIS公開後はどんな感じだったんですか。
石川:押井監督に、2か3か8か9、どれか選んで欲しいなって。
吉田:なんですかその数字は(笑)
押井:2は『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』2、3は『ルパン3世』、8は、これだけ俺から言ったんだけど、『南総里見八犬伝』、9は『サイボーグ009』。「どれかやらないと縁を切る」と言われた(笑)。それで、一番金を使えそうな『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の続編、『イノセンス』をやろうと。それぞれ因縁もあるんだけど、ストレートにいこうと。やりたいこともあったし。
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』について
吉田:そのあとを受けて『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』というわけなんですか、神山監督はどういう気持ちで引き受けたんですか。
神山:これはもう何百回も言ってるんですが、ワクワクしましたね。別の企画を石川さんにもっていったときに、「『攻殻機動隊』やらない?」と言われたんですが、即答しました。これはあんまり言ってないんですが、予感があった。原作を読んで、押井さんの映画をみて、「いつか自分が監督するんじゃないか」という。それで本当に監督をやることになって、不思議だなあと。
吉田:企画は石川さんからだったんですね?
神山:石川さんが。
石川:ここで冒頭に言った「擬似記憶」の話をしたい!偶然と運命ってあると思うんですが、今日ここに集まった人のイニシャルを考えると、黄瀬のK、石川のI、押井のO、神山のK、冲方のUでKIOKU、記憶になるんですよ!まったくの偶然ですけど、運命、というか必然性を感じました。
吉田:それをずっと考えてたから控室で静かだったんですか(笑)
『ARISE』での再始動
石川:必然と言えば、黄瀬が『ARISE』の総監督をやるのは必然だった。黄瀬がいたから始まった。押井、神山の後をうけてやるのは誰だっていやじゃないですか。多分黄瀬は次は自分だと考えてたんじゃないか。みんなにとっても、黄瀬だったら...という感じがあった。必然だった。
吉田:ゴーストのささやきが...。黄瀬さんはプレッシャーは感じたのではないか。
黄瀬:特別なプレッシャーはなかった。それは最初からかかってるものだから。一人フラットにやっていこうと。周りがガチガチだから。
吉田:押井監督・神山監督は『新劇場版』はご覧になりましたか?
神山:見ました。
押井:見ました。本当に見ました(笑)。
吉田:ご感想は...?
神山:シリーズが前史を描いているので、どういうふうに時代感をだすのかな、という点が気になっていた。『STAR WARS』とかも、前史である新3部作のほうがテクノロジーが進歩してみえてしまってる、というのがあったりするじゃないですか。どうやって感じを出していくのかなと思っていたら、なるほどこういう風にだしてきたかと。
吉田:こうきたか、と感心なさっていると。そして...
押井:ほんとのこと言っていいの?(笑) 想像よりも全然よかった(場内爆笑)。面白かったです。
吉田:これは最大級の賛辞ですよ!
押井:まずテンポがよくて、お話もきちんとしている。表現もよくできてるんじゃないか。画は、黄瀬がやってるんだからよくて当たり前なんだけど(笑)。全体がすっきりしている。余計なことをやってない。きちんと映画になってる。これは案外難しいんですよ。感心しました。冲方さんがよかったんだな。
吉田:身内を褒めない(笑)
押井:黄瀬なんだから、画がいいのは当たり前なんですよ。素子のキャラクターデザインもいい。
吉田:Twitterの応援コメントでも、「これまでで最も魅力的な素子。葛藤に陥る前のパッショネートな素子を描いた唯一の攻殻。さすが黄瀬だ!」とおっしゃっていましたね。パッショネートとはどういう含意が。
押井:黄瀬のオリジナリティ。作り手の思いが感じられる。今回、前髪をバッサリ切っていさぎよさがある。ああいうキャラは相当難しい。
神山:前髪パッツンは現実でもそれだけでキャラが立っちゃいますからね。
黄瀬:押井さんに人前ではじめて褒められた(笑)。めったに褒めないから。
押井:黄瀬はいい感じに歳を取った。それが大きい。今はこんな感じでニコニコしてるけど、昔はひどい。生意気、我が強い。でも今はいい感じの監督をやってる。昔はムキムキだったけど、いい感じに枯れてきたんじゃないか。キャラとの距離感がいい。素子のパーツたちである部隊のメンバーのデザインもいい。どこかあきらめてく感じがあって。『新劇場版』のあるキャラは大変良かった。地に足がついていて。うまいこと歳を取ったんだなあ。いろんなことがあったんだろうけど。
冲方:素子のデザインをみたとき、「始まる!」という感じだった。こういう路線なんだなと。黄瀬さんに最初にイメージを壊してもらった。「前のシリーズは見なくていいよ」とも言われたけど、いやそれはみてるよ!という感じでしたが(笑)。
石川:黄瀬を選んだ僕の眼力は正しかった(笑)。
最後に
素子・バトーのコスプレイヤーが登壇しての写真撮影ののち、最後にひとこと。
黄瀬:スタッフも頑張ったので、ぜひ楽しみに見てほしい。
冲方:新たなシリーズをよろしくお願いします。
押井:こんな日がくるとは夢にも思ってなかった。先日3人でばったり三鷹の飲み屋で会って。いろいろ喧嘩もしたし、これからも喧嘩するかもしれないけど、終わりよければまあいいか。3人の監督が作ったけど、もしかしたら、一周してまた最初にもどるってのもあるのかもしれない。それも悪くない。素子、年取らないし。
神山:25周年、僕もこの場所にいられるということがうれしい。『新劇場版』が大ヒットして、『攻殻機動隊』がこの先も愛されていってくれれば。
石川:企画から5年。ゴールというよりも、新しい種が生まれたという感じ。皆様に育てていただきたい。
こんな感じでした。吉田アナの軽妙な司会の感じが全然伝えられていなくてあれなんですが、とても楽しかったです。オールナイト自体は耐久レースの様相を呈していましたが、それもまたイベントって感じで、よかったです。
関連
先月の神山健治監督のトークショー。『東のエデン』が中心ですがSACの話もちょっとあったりします。
『新劇場版』公開前に見返したときに書いた感想。
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