宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

街と幽霊の記憶——『RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編] 君の列車は生存戦略』感想

映画チラシ『Re:cycle of the PENGUINDRUM 劇場版 輪るピングドラム [前編]君の列車は生存戦略』5枚セット+おまけ最新映画チラシ3枚 

『RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編] 君の列車は生存戦略』をみました。以下、感想。

 高層ビル。水族館らしき場所。幼い少年が二人。どうやら自分自身が誰かも忘れてしまった彼ら二人を、奇妙なペンギンが導く。辿りついた図書館で、司書を名乗る少女に促されるまま、彼らは自分自身の物語が記されているという本をひもといていく。

 幾原邦彦監督によるTVアニメ『輪るピングドラム』の11年ごしの劇場版は、TVアニメの「その後」のような舞台をしつらえつつ、回想というかたちでTVアニメの筋をなぞっていく、総集編的な構成。『少女革命ウテナ』の劇場版である『アドゥレセンス黙示録』が、TVシリーズの再話のような調子ではじまりつつも全く新たな物語を語り、TVシリーズのその先を見事に描いてみせたことを思うと、すくなくともこの前編では、「その先」を描く意志はほのみえつつも、それがいかなるかたちであらわれるかはまだ判然としない、という感じがする。

 「幽霊」として再びわたしたちの前に現れた「呪いのメタファー」たる男と、少年二人の対決こそがおそらく主題にはなると思うし、それが幾原邦彦という作家が『さらざんまい』でみせた、自己犠牲ではないかたちで他者あるいは世界と向き合うという決意表明を継承してまったく新たな結末をこそみせてくれるものと信じていますが、それは後編のお楽しみというわけですね。

 『輪るピングドラム』を再見してからこの『RE:cycle of the PENGUINDRUM』を見に行けたらよかったんですがそれは怠惰のため果たせず、しかしこういう総集編的なつくりはそうした観客にフレンドリーでありがたかった。TVシリーズをみていた印象だと、奇矯なディティールの積み重ねによって蛇行していくドラマをつなぎ留めつつ進行するというのが序盤のストーリーテリングだったかなとぼんやり思っていて、それが劇場アニメという尺のなかできちんと再構成されうるのかという気持ちがあったんですが、筋はわかりやすく整理され、かつディティールの魅力も損なわれてはいないというバランス感覚で再構成されていて、いやはやお見事でした。

 あのプリンセス・オブ・ザ・クリスタルの謎空間の迫力は劇場の音響もあいまって相当気持ちよく、「DEAR FUTURE」や「ノルニル」などTVシリーズでおなじみの曲が流れるファンサービスもうれしい。くわえて、やくしまるえつこの新曲が流れるパートは、冒頭と同じく実写のなかにキャラクターが溶け込むようなシークエンスになっていて、これがこの前編の一つのハイライトだと思うんだけど、人通りの消えた街にたたずむ見知ったキャラクターたちの画がこれがまたエモーショナルでずるいんだ。とりわけわたくしの親しんだ中央線沿線の記憶が想起されるのでなおさら。

 「きっと何者にもなれないお前たち」の物語を経て語られる、「きっと何者かになれる」少年二人の物語。彼らが「幽霊」を打ち破り、新たな未来を拓いてくれることを願う。

 というわけで、前編の感触としては懐かしい友人が元気なさまをみられてうれしい、ぐらいのあれなんですが、後編、楽しみにしてますわよ!

 

関連

この記事、いまだにGoogleから結構アクセスされてるのでわたくし赤面ですよ。

amberfeb.hatenablog.com

 

amberfeb.hatenablog.com

 

amberfeb.hatenablog.com

 

amberfeb.hatenablog.com