『劇場版 Gのレコンギスタ Ⅴ 死線を越えて』をみたので感想。
金星圏から地球へと接近する、ジット団のフルムーン・シップ。その卓越した技術力を得るため、マスク=ルイン・リーらキャピタル・アーミーは、ジット団と接触を図る。金星からもたらされた新たなモビルスーツたちが入り乱れ、レコンギスタをめぐる争いも佳境に入りつつあった。
『ガンダム Gのレコンギスタ』の劇場版5部作の完結編。公開は2022年。金星圏から帰還したベルリら海賊部隊、そしてレコンギスタを期して地球圏に入ったジット団が、キャピタル・アーミー、アメリア軍、トワサンガのドレッド艦隊が入り乱れる混沌とした情勢に加わり、最終局面となる。
金星圏のビーナス・グロゥブからもたらされたモビルスーツ、モビルアーマーの戦闘力は群を抜いていて、気づけば敵も味方も金星産の機体に乗っているのだから驚く。マスクのカバカーリー、天才クリム・ニックのダバック等々、ここにきて新たなモビルスーツが次々と登場するのは非常にゴージャス。とりわけ印象的なのは、三角錐のようなかたちをしたモビルアーマー、ユグドラシルで、どことなく虚無的な鋭さをもつバララ・ペオールの騎乗によって、その暴力性が存分に解放されるシークエンスは不気味で、かつ美しい。
クライマックスで多数の死者が出る展開は、暴力をそもそもコントロール不可能なものとして描く作品世界の格率を一層印象的にしている。物語の黒幕であるクンパ・ルシータ大佐=ピアニ・カルータのあまりにもあっけない死も、端的にその象徴に思える。そのことはTVシリーズの感想でも書いたとおり。
さて、『Gのレコンギスタ』を見返してみると、吉田健一によるデザインもあいまって、キャラクターが生き生きとしていて魅力的であるなあと改めて感じた。男性キャラクターも女性キャラクターもそれぞれかわいげがあってキュートだが、ベルリとマニィ、クリム・ニックとミック・ジャック、マスクとマニィら主要キャラクターのカップリングも嫌味に感じないというか、好感がもてるのがよいのだよな(マッシュナー・ヒュームとロックパイ・ゲティとかは、まあ…)。
劇場版でエピローグ部分で追加されたカットによって、寿美菜子演じるノレド・ナグの笑い声で作品が締めくくりになるのも、凄惨な暴力を描いているにもかかわらずそのことと裏腹の奇妙な明るさのようなものを感じられて、画面の上ではどんなに凄惨なことがおこっていても、トーンとしては明るさを失わない、そのことで魅力を放っている作品だよなあと思い知らされたような気がした。
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