先月の。
印象に残った本
一冊選ぶなら佐藤亜紀『黄金列車』。史実に基づく物語であり、極限の鉄火場で綱渡りをした男たち・女たちを極めてドライなタッチで描きながら、虚構の虚構であるがゆえに輝きを最後の最後で掬い取ってしまうこの圧倒的な腕力。まさしく傑作だと思います。
読んだ本のまとめ
2020年2月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3718ページ
ナイス数:153ナイス
https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly
■イタリア・ルネサンスの文化 下 (ちくま学芸文庫)
本書を不朽のものとしているのは、過去に生きた人間への愛と信頼に他ならないよなあと感じる。世界史上初めて個人が群れをなして登場したイタリアルネサンス時代への憧憬と敬意とを隠そうともしない叙述がとにかく印象に残る。
読了日:02月01日 著者:
https://bookmeter.com/books/13668708
■黄金列車
第二次世界大戦末期、ハンガリーからユダヤ人の没収財産の輸送を命じられた官吏たちの逃走劇。劇というにはあまりに淡々とした筆致で綴られる物語は、完全包囲絶体絶命、しかし絶望することも許されない人々の有り様を的確に伝える。しかし本書が書かれなければならなかったのは、そうした名もなき人たちの営為や矜持を描くためではない。我々の手から、あるいは現実から軽々とすり抜けてゆく、真の黄金を我々は最後の数ページで目撃する。それが小説の仕事だと言わんばかりのこのテクストに、ただ我々は平伏すのである。
読了日:02月06日 著者:佐藤 亜紀
https://bookmeter.com/books/14436909
■図南の翼 十二国記 (講談社文庫)
王を目指す少女、その運命が周囲の大人たちを惹きつけてゆく。ロードムービー的な楽しさとまさに王道をゆくシンプルな冒険譚を見事に語りきっていて、いや感服しました。
読了日:02月08日 著者:小野 不由美
https://bookmeter.com/books/574405
■風の万里 黎明の空(上)十二国記 (講談社文庫)
三人の少女の三者三様の苦難と懊悩と冒険。それぞれの視点人物を突き放しつつ見捨てはしない距離感が非常に巧みだと思いました。
読了日:02月10日 著者:小野 不由美
https://bookmeter.com/books/574402
■風の万里 黎明の空(下)十二国記 (講談社文庫)
この『風の万里 黎明の空』もまた、極めてストレートな王道の物語だったのだなと感服する。お見事でした。
読了日:02月10日 著者:小野 不由美
https://bookmeter.com/books/574404
■巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)
冬未だ来たらず、小市民の冒険はまだちょっと続いてゆく。
思春期の全能感、あるいは21世紀の偉大なる小市民——米澤穂信論のための覚書 - 宇宙、日本、練馬
読了日:02月11日 著者:米澤 穂信
https://bookmeter.com/books/14938387
■探偵小説論〈2〉虚空の螺旋 (Key library)
綾辻行人から京極夏彦まで、いわゆる新本格の作家たちを日本における推理小説の第三の波と見立てて論じる。「大量死」によって本格推理小説の要請されたとする見立ての切れ味は、この時代の作家を論じるにはあまりよくない気がするのだが、それはそれとしておもしろく読みました。
読了日:02月12日 著者:笠井 潔
https://bookmeter.com/books/446438
■丕緒の鳥 (ひしょのとり) 十二国記 5 (新潮文庫)
世界の奥行きをぐっと広げるそれぞれの短編がお見事。特にこの異世界にあってフィクションの意義をすくい上げた表題作が好きです。
読了日:02月16日 著者:小野 不由美
https://bookmeter.com/books/6861409
■三体
文化大革命、山奥の謎のレーダー基地、網膜に現れる謎のカウントダウン、そして不可思議なVRゲーム「三体」。憎悪と諦めとが召喚した地球外の脅威に対抗する人類の戦いのプロローグ。ゲームという道具立てを存分に活かした荒唐無稽な世界が、現実の足場をぐらぐら揺さぶりひっくり返していく構成がお見事でした。
読了日:02月19日 著者:劉 慈欣
https://bookmeter.com/books/13921330
■華胥の幽夢 (かしょのゆめ) 十二国記 7 (新潮文庫)
それぞれの挿話の後日談あるいはプロローグ。ミステリ仕立ての「華胥」のぞくぞくする読み味がめっちゃよかった。會川昇氏の解説が白眉です。
読了日:02月25日 著者:小野 不由美
https://bookmeter.com/books/7842399
近況
再起と再利用、あるいは歩みのひたむきさ――劇場版『SHIROBAKO』感想 - 宇宙、日本、練馬
来月の。