宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2022年2月に読んだ本と近況

やっていきたいものですわね。

先月の。

2022年1月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

印象に残った本

 一冊選ぶなら(一冊ではないんだけど)北杜夫『楡家の人びと』。19世紀的な小説がまだぎりぎりベタに書けたであろう時代の遺産ですわね。先月読んでぶっとばされた水村美苗本格小説』のようなエクスキューズがなくて、そのことに大いに驚かされます。

読んだ本のまとめ

2022年2月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2621ページ
ナイス数:70ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly/2022/2

 

■楡家の人びと 第一部 (新潮文庫)
 東京、青山に精神病院を構える楡家。その家族たちと周辺の人びとの織りなす年代記。この第一部では、関東大震災、そして脳病院を立ち上げた楡基一郎の死までが描かれる。
読了日:02月02日 著者:北 杜夫
https://bookmeter.com/books/4003452

 

■楡家の人びと 第二部 (新潮文庫)
 第二部は、基一郎の養子であり、斎藤茂吉をモデルとする徹吉を中心に、楡家の人びとの幸福でなさがじりじりと描かれる。徹吉を文学ではなく精神医学史の執筆に没頭する男としたのは、北が斎藤茂吉歌人としての力量を十分に書ききれないと判断したからか。それがのちに斎藤の評伝を書かせた動機なのかもしれないが。第二部は日米開戦で幕。
読了日:02月02日 著者:北 杜夫
https://bookmeter.com/books/4062778

 

星新一の思想 ――予見・冷笑・賢慮のひと (筑摩選書)
 星新一の遺した無数の短編を読み解き、その思想を跡付ける。筒井康隆小松左京を時に補助線にし、時にそのバイオグラフィーを根拠としながら星新一のおもしろみを語ってみせる大変おもしろい本でした。
読了日:02月15日 著者:浅羽 通明
https://bookmeter.com/books/18598390

 

■楡家の人びと 第三部 (新潮文庫)
 第三部ではアジア太平洋戦争期が舞台となり、アジア各地で数奇な運命をたどる楡家とその周辺の人々が描かれる。この小説を一気に傑作へと飛躍させているのは疑いなくこの第三部だろう。空母の艦上からウェーク島まで、見てきたかのように書き込まれたディテールは、これが戦争から20年ほどしか経たずに書かれたことを雄弁に語る。全てが崩壊しても続いていく生活をもって擱筆されたこの小説に、いまはただ打ちのめされている。
読了日:02月23日 著者:北 杜夫
https://bookmeter.com/books/4015445

 

民俗学入門 (岩波新書 新赤版 1910)
 着る、食べる、住む、働く、運ぶ…などなどに関わる人々の実践を観察、記述してそのおもしろさを摘出する、民俗学の目線を我々に教えるという意味での入門書。生活の実践の中に我々の感覚とその変遷を読む手際が、その語りも含めてたいへん見事。ブックガイドも(新品で手に入らないものが結構あるのがあれだけど)充実していてとってもよい本です。
読了日:02月25日 著者:菊地 暁
https://bookmeter.com/books/19153947

 

■平家の群像 物語から史実へ (岩波新書)
 山田尚子版『平家物語』および『鎌倉殿の13人』への理解を深めるために読む。テクストとしての『平家物語』と史実とを往還しつつ、著者が「六波羅幕府」とよぶ平家政権の特質を摘出する。
読了日:02月27日 著者:高橋 昌明
https://bookmeter.com/books/561128

 

■文庫本千秋楽
 2016年から、著者が亡くなる直前の2020年初頭までに書かれた書評および、この連載開始当初からの各年の総括的な文章を収める。こんな本出てたのね、と教えられてとっても嬉しい。改めて、坪内祐三にはもっと長生きしていろいろなことを教えてほしかった。柳田國男の性格の悪さを強調するのは、坪内の祖父を柳田がめっちゃ適当な記憶をもとにdisってたからだというのがわかってウケました。
読了日:02月28日 著者:坪内祐三
https://bookmeter.com/books/16833390

 

近況

遠くのきみと一緒に旅する——アニメ『ゆるキャン△』感想

雑誌のゆるさを愛する——『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』感想

シシ神の遠い嘶き——『鹿の王 ユナと約束の旅』感想

投げ出した勝負の続き——『3月のライオン 前編・後編』感想

「ここではない何処か」に送る手紙——『グッバイ、ドン・グリーズ!』感想

隠された釘——『ウエスト・サイド・ストーリー』感想

 

来月の。

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