今月に入ってからまた流行病がとんでもないことになっていますが、なんとか生きています。
先月の。
2021年12月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
印象に残った本
一冊選ぶなら、水村美苗『本格小説』。21世紀にこれが書かれたのかよ!という驚き。必読ですわよ。
読んだ本のまとめ
2022年1月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4711ページ
ナイス数:136ナイス
https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly/2022/1
■マウス (講談社文庫)
小学校、ねずみのようにおびえて日々を過ごす少女と奇妙な少女の出会い。あるきっかけですっかり変わってしまった奇妙な少女と語り手の人生は遠く離れてしまったかに思えたが、偶然の再会が二人を再び結びつける。『コンビニ人間』はこの小説のアルバイトパートを膨らませてかつ先鋭化させたものだったのね。学校空間のいや〜な感じの質感が素晴らしい!
読了日:01月03日 著者:村田 沙耶香
https://bookmeter.com/books/2880238
■ヒットの崩壊 (講談社現代新書)
2010年代における日本の音楽聴取環境の変化を、関係者へのインタビューなどを素材として考察したルポルタージュ。まさにサブスクリプション全盛のいま読むと、およそ5年前に出た本書はもはや「時代の証言」かもしれませんわね。この5年でだいぶフェイズも変わった気がするけど、まさに2016年こそがその転換点だったのかも、とも。
読了日:01月03日 著者:柴 那典
https://bookmeter.com/books/11214843
■冤罪と人類: 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか (ハヤカワ文庫NF)
丹念な調査によって支えられたディテールのおもしろさは抜群だが、一方で過去の出来事をあまりにたやすく自分だけが理解できたのだという、学問的裏付けのない思い上がりが鼻につき、学問的な訓練を受けていない人物が過去の事実について叙述することの困難を強く感じた。スミス『道徳感情論』との出会いは著者にとっては天啓だったのだろうが、それで物事すべてを説明できるというのはまさしく学部生的半可通の所作でしょう。
読了日:01月06日 著者:管賀 江留郎
https://bookmeter.com/books/17752267
■渋沢栄一 下 論語篇 (文春文庫)
上巻が軒並み編年的な記述で渋沢栄一の半生を辿ったのに対し、後半はその人間関係や家族など周辺人物の群像がさまざま語られる。正直、上巻だけでなんとなく渋沢の思想の勘所は理解できるのかな…とは思いますが、おもしろく読みました。
読了日:01月08日 著者:鹿島 茂
https://bookmeter.com/books/6935447
■ナチズムの記憶―日常生活からみた第三帝国 (歴史のフロンティア)
ナチス統治下のドイツについて「よい時代だった」と回顧する「ふつうの人々」。彼らの記憶をめぐる歴史研究で、山川出版社の「歴史のフロンティア」シリーズの一冊。「ごく平凡で、普通の人びとが、おおくのばあいナチズムとは距離をおきながらも、ナチスの政策を支持したり、ナチ体制に統合されていった」p.324ことは、ナチズム研究がつねにアクチュアルである一端をよく表していると思います。
読了日:01月08日 著者:山本 秀行
https://bookmeter.com/books/383804
■ユダヤ移民のニューヨーク―移民の生活と労働の世界 (歴史のフロンティア)
山川出版社「歴史のフロンティア」シリーズの一冊で、ニューヨークにおけるユダヤ系移民を扱った社会史研究。ユダヤコミュニティの独自の文化が、社会的地位の向上にともなって衰微する、そこにある種の哀愁を感じる。
読了日:01月08日 著者:野村 達朗
https://bookmeter.com/books/1823522
■蘇るパレスチナ―語りはじめた難民たちの証言 (新しい世界史)
イスラエル建国のなかで抑圧されてきたパレスチナの人々の歴史を、聞き取りも含めて復元しようとする試み。
読了日:01月08日 著者:藤田 進
https://bookmeter.com/books/43548
■1960年代アメリカの群像
ケネディ大統領就任演説など、7つの史料を取り上げ、それらについて解説していくことでアメリカの1960年代の様相を浮かび上がらせていく。史料は原文になっていて、大学の教材として…みたいな企画なのかしら。
読了日:01月08日 著者:
https://bookmeter.com/books/1358053
■どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫)
およそ15年前に世に出た、反時代・時代錯誤のド直球私小説!欲望の抑制の効かなさのほとんど赤裸々といっていい吐露は、どこでこれを磨いたのかという見事な芸。情欲を抑えられず暴力性を唐突に発揮するこの語り手の不愉快さが喚起する昏い愉しみ。
読了日:01月11日 著者:西村 賢太
https://bookmeter.com/books/576531
■残穢(ざんえ) (新潮文庫)
『砂の器』なんかのひたすら調査を積み上げていくタイプのミステリを想起する読み味。超常現象に対する醒めた目線と、しかしそれでもいや〜な感じが後を引く、すばらしい読書体験でした。
読了日:01月21日 著者:小野 不由美
https://bookmeter.com/books/9790005
■本格小説(上) (新潮文庫)
まだ少女だった頃に父の会社の運転手として現れた男。アメリカ社会の中でのし上がり億万長者になったらしい男の来歴を、奇妙な縁で知ることになった彼女はそれを小説として書き残そうと試みる。『嵐が丘』を下敷きに、21世紀にあって19世紀的ないかにも大柄な小説を書かんとする意図と、それを成し遂げてしまう恐るべき腕力!上巻の600頁を経てなお本筋はさわりのさわり程度だが、鮮烈な場面がしばしば現れ、また豊かなディテールによって立ち上がる生活世界を堪能することまさに至福の極み!すげえ小説ですよ。
読了日:01月23日 著者:水村 美苗
https://bookmeter.com/books/568174
■アケメネス朝ペルシア- 史上初の世界帝国 (中公新書, 2661)
古代史上の世界帝国、アケメネス朝ペルシアの歴史を概説する。クセルクセスなど皇帝にフォーカスをあてて章立てされている。とりわけペルシア戦争のあたりなど、ペルシア側の史料の不在によってヘロドトス『歴史』などギリシア側の史料に拠るところが大きく、世界帝国の相貌が複眼的にみえてくるのがかえっておもしろかったです。
読了日:01月25日 著者:阿部 拓児
https://bookmeter.com/books/18496616
■本格小説(下) (新潮文庫)
運命の恋に敗れアメリカに渡った男が、再び日本にあらわれる。成城学園と軽井沢とを主要な舞台とする奇妙な運命の物語。華麗なる一族の物語は戦後日本が希薄化し衰弱していく過程の物語でもあり、ものすごい嵐が脳髄を駆け抜けていくような、稀有な読書体験でした。
読了日:01月30日 著者:水村 美苗
https://bookmeter.com/books/568175
近況
『平家物語』と『地球外少年少女』、素晴らしかったです。とりわけ、『平家物語』はもうすでに古典となることが約束されたマスターピースだと思います。こういうフィクションと接するために生きているのだと改めて感じました。
きっとまた旅に出る——『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』感想
成就しえない破局の未来のために——『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』感想
此岸で無様に「やり直す」こと——アニメ『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』感想
来月の。