宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2024年1月に読んだ本と近況

1月末、新型コロナウイルス感染症にかかるなどして、地獄でした。

先月の。

2023年12月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

印象に残った本

 1月、ぜんぜん本を読めてなかったんですけど、一冊選ぶなら松井優征『逃げ上手の若君』との合わせ技で鈴木由美『中先代の乱』!『逃げ上手の若君』の感想も簡単に書いておきたいが…。

読んだ本のまとめ

2024年1月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2708ページ
ナイス数:130ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly/2024/1

■陰謀の日本中世史 (角川新書)
 保元の乱から鎌倉時代の内紛、そして本能寺の変などなど、日本史上においてしばしばその背後に陰謀の存在を推測されてきた事件を取り上げ、それらにまつわる陰謀論がおおむね史料的な裏付けを欠いた根拠薄弱のものであることを説く。扱う時代は幅広いが、先行研究を手際よく整理していてお見事。
読了日:01月07日 著者:呉座 勇一
https://bookmeter.com/books/12667809

 

■定本 消されたマンガ
 さまざまな要因から一旦、あるいは現在まで公にされなくなった漫画作品を取り上げて紹介する。『ブラックジャック』や『美味しんぼ』などなど有名作品から、いまではほとんど顧みられない作品まで取り上げられていておもしろく読みました。『美味しんぼ』は離乳食関係の回は間違いを認めて自ら封印してたんすね。アニメもサブスクで配信されてない回あったりするし、「消されたアニメ」のことに想いを馳せたり馳せなかったり…
読了日:01月07日 著者:赤田 祐一,ばるぼら
https://bookmeter.com/books/10912240

 

近畿地方のある場所について
 カクヨム連載のモキュメンタリー風ホラーの書籍化。構成はウェブ掲載版とほとんど変わらず、新規の章が追加されて挿絵など追加されたほか、一部の章には手が入っている。形式としてはウェブというメディアを活かしたコラージュっぷりが見事だったが、そのはったりは紙の本になってだいぶ薄れたし、「読者のお前も呪われちゃったね!」のオチは書籍で読むと一層陳腐。結局インターネットで読むのに最適化されていることを確認するような読書でありました。
読了日:01月09日 著者:背筋
https://bookmeter.com/books/21248687

 

花神(中) (新潮文庫)
 中巻では、村田蔵六が医学の道から外れ、故郷長州の桂小五郎に引き立てられてあれよというまに四境戦争(第二次長州征伐)の指揮官として大戦果をあげるまでを描く。大村の無思想の技術者ぶりに、刊行当時のインテリ崩れの労働者たちは感情移入したのかしら。主人公としてのキャラクターは『燃えよ剣』の土方や『竜馬がゆく』の竜馬とは一線を画すが、司馬の日本人論としての色はこちらが色濃いのかもしれない。
読了日:01月13日 著者:司馬 遼太郎
https://bookmeter.com/books/566922

 

中先代の乱-北条時行鎌倉幕府再興の夢 (中公新書 2653)
 鎌倉幕府滅亡後、最後の執権の子である北条時行がおこした中先代の乱を中心に、各地で反乱が起こっていた建武政権下の政治状況を描く。『逃げ上手の若君』の予習にと思って読みましたが、新書としては概説書よりも研究書寄りで、先行研究が手際よく引かれ、史料によりわかること、わからないことが誠実に叙述されている。しかし中世は軍記物とかが史料になるがゆえに史料批判の段階で歴史学者としての力量が問われる感じがするわね。
読了日:01月13日 著者:鈴木 由美
https://bookmeter.com/books/18172914

 

■現代文明論講義 ニヒリズムをめぐる京大生との対話 (ちくま新書)
 現代文明の基底をニヒリズムであるととらえ、すべての価値が空疎になったなかでの民主主義、政治の困難を論じる。マイケル・サンデルがひと流行りした時期ゆえか、学生との対話が話のまくらになっている。成功しているかは微妙だが…。震災前、民主党政権の雲行きあやしさがなんとなく感じ取れるという意味では、時代の刻印が残っていておもしろく読みました。
読了日:01月19日 著者:佐伯 啓思
https://bookmeter.com/books/3174676

 

■世界史の考え方 (岩波新書 シリーズ歴史総合を学ぶ 1)
 古典として読み継がれてきた本と、その批判的読解の補助線となる本2冊を取り上げ、編者二人プラスもう一人の歴史学者を交えて行われた鼎談五篇を収める。鼎談といいつつも一人の発話が相当長くて、おそらく現場では詳細なレジュメとか用意されてたんだろうなと思う。大塚久雄中村政則など、近代・現代をめぐる議論を提起した先駆者がいまどのように位置付けられ、批判的に継承されているかがわかる。いわば歴史学会の道標となるような、たいへん有益な本ですわね。
読了日:01月25日 著者:
https://bookmeter.com/books/19425952

 

観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書)
 室町幕府黎明期、足利尊氏足利直義らが争った観応の擾乱について、室町幕府の支配体制確立のターニングポイントとして位置付け、先行する研究を批判的に検討しつつ跡付ける。状況の大きな転換や、北朝南朝との関係含めた離合集散ぶりは、こうした概説書で読んでいても混沌としているし、また尊氏や直義が必ずしも首尾一貫した指導者ではない様がありありと浮かんできて、そこにある種の真実味を感じもする。歴史学者の分を超えて心理状態まで踏み込んだ筆致に力みを感じるが、おもしろく読みました。
読了日:01月27日 著者:亀田 俊和
https://bookmeter.com/books/12014362

近況

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