宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2024年2月に読んだ本と近況

新型コロナウイルス感染症の後遺症なのかわかりませんが、具合が悪いです、ずっと…。

先月の。

2024年1月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

印象に残った本

1冊選ぶならこれ。知らぬ間に文庫化されていたのであった。

amberfeb.hatenablog.com

 

読んだ本のまとめ

2024年2月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2674ページ
ナイス数:100ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly/2024/2

 

■白蛇教異端審問
 90年代〜2000年ごろに書かれた小文をまとめたもの。標題は自身の直木賞受賞作を「ロマンス小説」と雑なカテゴライズで批判されたことに反論した評論のタイトルから取られている。とくにおもしろく読んだのが、平成を代表するハードボイルド小説たる『OUT』の執筆時を回想した「『OUT』という名の運命」。

九六年二月、私は、青山ベルコモンズのカフェで言葉を失っていた。狭いテーブルの上に広げられたのは、探偵ミロを主人公にした旧『柔らかな頬』第二稿。付箋が挟まれ、赤字が入っている。対しているのは、新担当編集者だった。彼は、「うまく直っていない」と告げて沈黙した。第一稿が上がった時点で、様々な注文を付けたのは彼だった。複雑過ぎるからもっと単純に、対立を明確に、タイトルを変えろ、等々。エンターテインメント小説の王道を説かれ、何とか努力して改稿した結果がこれなのだ。

私は、紅茶の染みが飛んだ原稿を書類袋に仕舞い、「わかりました。これは捨てます」と言った。彼は、私の反応に少し慌てたようだった。だが、私は周囲のざわめきすら、気にならないほど打ち沈んでいた。誰も見方がいない、これから一人でやるしかないのだ。その思いが頭の中をぐるぐると巡っていた。「これからどうしますか」と問われ、「別の小説を書きます」と意地で答えた。この時、『OUT』の構想が生まれた。行き場のない中年女たちの小説を書こう、と。行き場のない中年女とは、まさしく自分のことだった。

その年は、他の細かい原稿は一切書かず、『OUT』の書き下ろしに専念することにした。どのみち、デビューして間もない作家に、そう多くの注文は来ない。私は、原稿を捨てたトラウマを抱えつも、何とか『OUT』で勝負したい、と必死になっていた。その重圧に押し潰されそうだったし、『柔らかな頬』を捨てたことで、作家としての自信を失っていた。とりあえず、どん底にいる私が発見したのは、恐ろしく単純な事実だった。書くしか生きる方法がない、ということ。そして、それは恐ろしいほどの孤独を生きる、ということでもあった。

読了日:02月03日 著者:桐野 夏生
https://bookmeter.com/books/478623

 

花神(下) (新潮文庫)
 クライマックスたる上野戦争における彰義隊の撃破、そして死。結部で革命の花咲爺こそがタイトルの含意だったと明かされる。偏屈な技術者を革命の大立者とするこの小説は、平凡なサラリーマンをかつて勇気づけたのかもと思って読んだ。しかし、小説的な嘘と取材に基づく事実の弁別がテクストからは困難で、そこにある種の不誠実さを感じないわけにはいかなかった。
読了日:02月12日 著者:司馬 遼太郎
https://bookmeter.com/books/566924

 

■サークル有害論 なぜ小集団は毒されるのか (集英社新書)
 もともと『すばる』に「鶴見俊輔とサークルの思想」として連載されたものを大幅に加筆して書籍化。東大サークルの性暴力を導入に、谷川雁サークル村日高六郎、そして鶴見俊輔へと戦後思想を読み直すことで、時に不穏な小集団の意義を掬い上げる。ある種のパルマケイアーとしてのサークル。
読了日:02月14日 著者:荒木 優太
https://bookmeter.com/books/21310523

 

■青空人生相談所 (ちくま文庫 は 6-1)
 しばしば言及されるので読んだが、質問者の腹に思いっきりパンチをいれるような回答が連発されるのでかなり精神力を使った気がする。版元品切れで新品が手に入らないことを嘆く声も聞かれるが、不適切にも程がある!という回答も散見されるのがその理由か。結局、身の程を知ることの困難(知った上で引き受けることも含め)が人生相談に凝縮されていて、橋本治はその身の程を知らせてやることを仕事としてるのだろうな。
読了日:02月14日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/492849

 

■デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場
 栗城史多という人物に好意的な印象を持っていなかったし、本書を読んでもそれは変わらない。しかし、強烈な個性で人を惹きつけた人物を丹念に取材し、関わった人たちに聞き取りをして書かれた本書は大変おもしろかった。身の丈をはるかに超えた虚像をこさえていくなかで、その虚像の重みに耐えかねてほとんど死に向かうように無謀な挑戦を繰り返す晩年の姿。その虚像の拡大の一端を担ってしまった著者の責任が時折滲み、それが強く印象に残る。

読了日:02月16日 著者:河野 啓
https://bookmeter.com/books/16901614

 

■歴史像を伝える 「歴史叙述」と「歴史実践」 (岩波新書 シリーズ歴史総合を学ぶ 2)
 教科「歴史総合」を話の枕にしつつ、日本の歴史学における大きなトレンドの変遷をたどり、おおきく「近代化」、「大衆化」、「グローバル化」を柱に歴史認識と歴史叙述について論じる。歴史学者としては教員にはこれくらい知っておけよということなんだとは思うが、記述はやや散漫で後半は流し読みしてしまった。
読了日:02月20日 著者:成田 龍一
https://bookmeter.com/books/19779535

 

■つけびの村  噂が5人を殺したのか?
 はじめ、原稿を出版社に持ち込んだが結局出版に至らなかったというが、編集者の目利きはかなり適切に働いていたと感じる。特に前半のnoteに掲載された部分は文章は拙劣で結論もありきたり。サブタイトルにある「噂が五人を殺したのか」という問いが問いとして効果的に機能しておらず、結局噂が殺したという結論に落ち着くので悪い意味で驚く。死刑制度を糾弾する常識的な倫理観を披瀝する一方、著者自身のさびれた場所、そこに住む人への偏見・先入観を十分に対象化しておらず、その先入観を強化するだけの不毛で無惨な読み物になっている。
読了日:02月23日 著者:高橋ユキ(タカハシユキ)
https://bookmeter.com/books/14302707

 

■とびだすいないいないばあ!―ぴよちゃんとあそぼ!
 友だちからのプレゼント。11ヶ月の息子はうさぎさんがお気に入りっぽい。小さいぴよちゃんが各ページにいてかわいいね!
読了日:02月24日 著者:いりやま さとし
https://bookmeter.com/books/1401944

 

■老神介護
 おもに2000年代に書かれて短編を所収。表題作ほかいくつかの短編は世界観を緩やかに共有している。プレ『三体』として読むと、異星人とのファーストコンタクトというモチーフや、冷凍睡眠による時間跳躍という発想はすでに温められていたのだなと。小松左京的なスケールの巨大さと、ディテールの鷹揚さ、そして何より筆致の照れのなさに、熱い時代のサイエンスフィクションであるなという感じを強くもった。
読了日:02月29日 著者:劉 慈欣
https://bookmeter.com/books/19941272


読書メーター
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近況

2月は一度も映画館に行かなかったのでビビる。

先月の。

amberfeb.hatenablog.com

来月の。

 

amberfeb.hatenablog.com