宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2024年3月に読んだ本と近況

3月なのでライオンになっちゃうとこだった!

先月の。

2024年2月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

印象に残った本

 1冊選ぶなら乗代雄介『旅する練習』。コロナウイルス感染症下の記憶、すでにぼんやりとしたものになっていることを改めて感じました。さして時が経ったわけではない(しかもわたくし自身このまえ感染してひどい目にあった)のにね。

読んだ本のまとめ

2024年3月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3585ページ
ナイス数:138ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly/2024/3

 

■『忘れられた日本人』を読む (岩波セミナーブックス)
 網野善彦宮本常一『忘れられた日本人』をとっかかりにして行った講座の書籍化。網野は短大の講義で同書をテキストとして使っていたようで、その経験から語られる現在との偏差の話は面白い。テキスト読解というより網野の関心に引きつけた語りになっていて、時に宮本の民俗誌の方法への懐疑まで述べられるあたりの自在感が魅力ですね。
読了日:03月03日 著者:網野 善彦
https://bookmeter.com/books/365880

 

■流浪地球
 『老神介護』と姉妹編。劉慈欣の『三体』以前の仕事に触れられるが、こちらに収められた「呑食者」のあじわいはとりわけ『三体』のミニマル版という感じ。劉慈欣自身も登場してコメディリリーフを演じる「呪い5・0」は黒沢清『回路』の喜劇的な変奏として面白く読みました。
読了日:03月08日 著者:劉 慈欣
https://bookmeter.com/books/19941280

 

■誰も語らなかったジブリを語ろう 増補版
 増補版での追加はプロダクションIGの石川社長と、鈴木敏夫の右腕的な存在だというプロデューサー、高橋望氏との鼎談と、鈴木敏夫との往復書簡。石川は押井のことを困ると尻尾振ってこっちにくる犬みたいな存在と評していて、長年の付き合いのなかで築かれてきた奇妙な信頼関係がほの見える。高橋によるスタジオ地図評など印象に残りました。
読了日:03月09日 著者:押井 守
https://bookmeter.com/books/18444003

 

宮本常一渋沢敬三 旅する巨人 (文春文庫 さ 11-8)
 不世出の民俗学者宮本常一と、そのパトロンないし師のごとき存在であった渋沢敬三を取り上げた伝記。島嶼部の農村出の宮本と、名家の桎梏のなかにいた渋沢の対照的なありようと、しかし共鳴する志に胸を熱くさせられる。まるで見てきたかのように書き、さらには胸中までも大胆に書いてしまう筆致は好みが分かれるところであろうが、多くの関係者の声を拾った労作であるのは間違いない。柳田國男への批判がかなり出てくるが、柳田理解としては一面的では?という気はした。
読了日:03月10日 著者:佐野 眞一
https://bookmeter.com/books/573087

 

■自動車と建築---モータリゼーション時代の環境デザイン (河出ブックス)
 自動車は都市の風景を一変させてきた。それがいかなる形でのものだったか、戦後日本の高速道路やロードサイドの建築を例に語る。サービスエリアなど、これまで当たり前のものとしてそこにあった環境が、自明のものではなくて試行錯誤の末に現在のかたちを取るようになったこと、そしてその試行錯誤を繰り広げたのは丹下健三黒川紀章のような名だたる建築家だったことなど、大変興味深く読みました。
読了日:03月12日 著者:堀田 典裕
https://bookmeter.com/books/3170760

 

大江健三郎 柄谷行人 全対話 世界と日本と日本人
 三度の対話をおさめる。中野重治をめぐる対話、ノーベル文学賞受賞後の「あいまいな日本のわたし」をめぐる対話等。柄谷も大江も、渡米して日本列島とそこで書かれる文学を外から眺めた経験を持っていて、それがある種の連帯意識の基礎になっているという気がした。大江の山口昌男への傾倒ぶりをひとくさししたあとのやりとりがとりわけ印象的だった。
読了日:03月12日 著者:大江 健三郎,柄谷 行人
https://bookmeter.com/books/12878276

 

■旅する練習
 2020年の春、新型コロナウイルス感染症により混乱の兆しがほの見えるなか、中学生になろうとする少女と、その叔父の小説家が、鹿島市を目指して「練習の旅」をする。ハイソな引用、クラシックな私小説風味の語り、そして俗っぽすぎるのではという感じもある別離を躊躇いなく書き込んでみせる胆力。夢中で読み、そして凹みました。
読了日:03月13日 著者:乗代 雄介
https://bookmeter.com/books/17226631

 

回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)
 村上の短編集のなかでも、すこし不思議感が強いというか、特に奇妙な味わいの短編がまとまっている。語り手が村上自身を擬していて私小説みたいな手触りもあるが、それが現実から遊離した何事かにタッチしてしまう時の不安みたいなものがこの一連の作品群の魅力なのかもとも。
読了日:03月18日 著者:村上 春樹
https://bookmeter.com/books/560296

 

■建築とは何かー藤森照信の言葉ー
 結構不思議な成り立ちの本で、見開きの左ページが全編スケッチになってるあたり、雑誌掲載の小文を一冊にまとめてなんとか換金したいという意図がほのみえたりする。タイトルは所収のエッセイの一つから取られてはいるが、それが全体を適切に表現できているかというと、かなり、びみょーだと思う。
読了日:03月23日 著者:藤森 照信
https://bookmeter.com/books/2364896

 

■鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折
 『羅生門』や『砂の器』など、日本映画史上に残る作品に脚本家として関わった橋本忍。その栄光と挫折とを、本人や関係者への取材、そして橋本が遺した創作ノートを頼りに丹念に描き出す。本書がすごいのは橋本の没後に遺族の許しを得て創作ノートも参照し、関わった人たちの著作や証言と照らし合わせて脚本執筆の舞台裏を明らかにしていること。特に関係者の証言が食い違い、本人の回顧録すら疑わしくなってくる『羅生門』の脚本執筆のくだりはミステリ的に面白い!

 読了日:03月25日 著者:春日 太一
https://bookmeter.com/books/21640419

 

■映画はいかにして死ぬか 横断的映画史の試み 新装版
 50年代、ハリウッドは赤狩りによって多くの作家を失い、また大作主義によって黄金期が終わりつつあったが、その作家たちはヨーロッパに渡りそこで痕跡を残した…というような歴史的背景を、画面の中に看取して縦横に語る手つきは見事というほかないでしょう。それぞれの講演は啓蒙的でありつつ、自身の趣味嗜好をあられもなく開陳する無防備ぶりにある種のかわいげがあり、全体を通して楽しく読みました。
読了日:03月29日 著者:蓮實重彦
https://bookmeter.com/books/13201394

 

那須雪崩事故の真相 銀嶺の破断
 2017年に起こった、雪崩による高校生ら8名の死亡事故を取材し、その原因を探ったルポルタージュ。章ごとに話題が行ったりきたりし、また記述の重なりもみられ、一冊の書籍としては構成が甘いと感じる。本書の特色は雪崩事故の専門家である筆者がその原因を丹念に考察した点と、遺族の声を拾い上げている点か。裁判の決着も近づいたいま、改めて別の書き手の手で事故を総括するようなルポが書かれるといいと思うんだが…。

読了日:03月31日 著者:阿部 幹雄
https://bookmeter.com/books/13589150



近況

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先月の。

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