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デジタル技術とポストアポカリプスの黎明────『青の6号』感想

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 dアニメストアで配信が終わるというので、『青の6号』をみました。

 海面上昇により多くの人類が死んだ未来世界で、生き残った人類は、海面上昇を引き起こし人類滅亡をたくらむ悪の科学者、ソーンダイクと、彼の率いる獣人たちと闘争を繰り広げていた。超国家組織「青」は、ソーンダイクの野望を阻止するため戦う。

 1998年から2000年にかけて発表された全4巻のOVA。監督はのちに『巌窟王』をてがけるスーパーアニメーター前田真宏。アニメーション制作はGONZO。キャラクターデザインは村田蓮爾で、その後『LAST EXILE』や『シャングリ・ラ』などにも参加するわけだが、この作品が縁のはじまりになったんだろうか。

 なんといってもデジタルアニメ黎明期の作品であることがこの『青の6号』のユニークなポイントで、巻数が進むごと、デジタル制作のノウハウが飛躍的に蓄積されていったのではないかと推察できるほど、画面がなじんでいくような感じもある。最終的な作画のルックは、20年以上前のアニメにもかかわらず、大きな違和感を感じさせない。それは鶴巻和哉本田雄井上俊之錚々たるスタッフが参加していることも一因かもそれないが。

 一方で、3DCGも第1話の異物感あるルックからだんだんと洗練されてはいくが、こちらは流石に現代のそれと比較するとまだまだ作画と十分になじみ切ってはいないなと感じた。

 また、音響演出も凝りに凝っていて、これはヘッドホンで視聴するとかなりよくわかるのだけれど、キャラクターとの位置関係をかなり丁寧にサウンドデザインに落とし込んでいるのがおもしろい。たしか映画版『スプリガン』なんかも(すくなくともソフト版では)そういう感じの演出がされているようだったけれど、それは単に声がめっちゃちっさ!という感じで明らかに失敗していたように思う。対して『青の6号』は、潜水艦という閉鎖空間を主要な舞台にしていることもあってか、かなり巧妙だったという気がする。

 お話は4話という尺では食い足りなさもあるが、暴力への生々しい忌避からひとまず対話の可能性を引き出す…という結部はいまだに味わい深いと感じた。