地獄だぜ。
先月の。
印象に残った本
一冊選ぶなら小熊英二『1968』でしょう。よく読んだなわたくし。
読んだ本のまとめ
2020年6月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:4389ページ
ナイス数:108ナイス
https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly
■荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
近未来の中国。身体の機械化技術が向上し、産業社会はゴミまみれのスラム街を生み出していた。そこに現れるは新たなる人類か、残酷な神か。書きぶりはやや素朴な感じがあり、電子ドラッグの描写は鮮烈だが暴力描写はあまりうまくいっていないと感じるし、お話のスケール感は竜頭蛇尾という感じもする。現代中国の空気を存分に吸って書かれたのだなという感触があり、そこにいちばん面白みを感じた。
読了日:06月02日 著者:陳 楸帆
https://bookmeter.com/books/14905699
■「差別はいけない」とみんないうけれど。
アイデンティティとシティズンシップという対立軸を設定し、反差別の言説のまとってしまう困難を追っていく一方で、そうした反差別の重要性を説く。哲学や認知心理学、行動経済学などの知見を縦横に引用して議論を進めるが、それらがどうもうまく整理されていないという感じを受け、パートごとには意味をつかめるが全体としては散漫になっている気がする。本書全体の主張はシンプルで難しいことを言ってるわけじゃないと思うのだけど、議論の筋道はもっと整理されてたほうがいいんじゃん?と感じた。
読了日:06月02日 著者:綿野 恵太
https://bookmeter.com/books/14000872
■時の娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 51-1)
甥殺しの悪人という評ばかりが巷間に流布するリチャード3世。病院で退屈しのぎに調べ出した刑事が史資料を探索し過去へと分け入っていく。終盤に本書の着想の元ネタが開陳される誠実さが心憎い。おもしろく読みました。
読了日:06月05日 著者:ジョセフィン・テイ
https://bookmeter.com/books/523734
■ヴァルター・ベンヤミン: 闇を歩く批評 (岩波新書)
ベンヤミンのコンパクトな伝記。ベンヤミンの遺した無数の断片は、書き手によってプリズムのごとくその輝きようを変えるのだなと感じる。
読了日:06月05日 著者:柿木 伸之
https://bookmeter.com/books/14370795
■1968〈上〉若者たちの叛乱とその背景
1968年前後に大きな盛り上がりをみせた学生運動。その論理と駆動因とを、当時の雑誌や回顧録をほとんど無数に引用しながら論ずる。運動の要因として著者が重要視するのは、貧困や飢えなどの「近代的不幸」が後景化してきたことで、アイデンティティの不安などの「現代的不幸」が目新しいものとしてせり上がってきたこと。この説明は本書に対して当事者たちの感情的反発を喚起したわけだが、この見立ての正否はともかく、とにかく浩瀚な、という形容がまさしく当てはまる労作には違いない。
読了日:06月16日 著者:小熊 英二
https://bookmeter.com/books/416461
■1968〈下〉叛乱の終焉とその遺産
「現代的不幸」にはじめて遭遇した世代の「自分探し」は、「大衆消費社会への適応」という結末で終わった。この見立ては極めて図式的に感じる。しかしそれを空疎なもので終わらせず、それがあの世代を呪縛した「時代」なのだと説得力をもって描きだすためにこそ、これだけの分厚さが必要だったのだろうと思う。我々を取り巻く呪いの質は無論この時代と同じではなかろう。だからこそ我々は、この惨めな闘争から何事かを引き出さねばならないのだ。
読了日:06月23日 著者:小熊 英二
https://bookmeter.com/books/416462
■日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1)
1970年代、続発する噴火に地震。異端の学者が危機の予感を察知し、最悪の事態を想定して備えるのだが…。具体例を挙げるまでもなく、幾多のフィクションの参照元だったのだなと改めて感じる。プレートテクトニクスの説明なんかはだいぶ気合いが入っていて、作品のリアリティを構築しているのはいうまでもないが、本書の想像力を形づくるのは、戦禍で焼け野原になった都市の記憶、薄れつつあっても確かに体験されたその記憶なのかなと関東大震災の場面で強く感じた。
読了日:06月24日 著者:小松 左京
https://bookmeter.com/books/575781
■日本沈没 下 (小学館文庫 こ 11-2)
日本、沈没す。後半はスペクタルにつぐスペクタルで息つく暇もありませんが、とりわけ日本列島を竜に擬してその最期を描きだす終章冒頭の叙情性はお見事。オチがわかっている(タイトルでネタバレしている)にもかかわらずこちらを引き込む力技にただただねじ伏せられました。
読了日:06月26日 著者:小松 左京
https://bookmeter.com/books/575783
■シャーロック・ホームズの誤謬 (『バスカヴィル家の犬』再考) (キイ・ライブラリー)
著者はいう。『バスカヴィル家の犬』において、シャーロック・ホームズは決定的な誤りを犯している。真犯人は別にいるのだ、と。同著者による『アクロイド殺し』論は内田隆三による批判的検証を経たうえで、その読みの面白みは微かに残ったと感じるが、本書の推理はホームズの先入観への批判はさておき、真犯人の指摘は無理筋だと感じる。それでもおもしろく読めるあたりがこの書き手の腕力だろう。
読了日:06月28日 著者:ピエール・バイヤール
https://bookmeter.com/books/3254717
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