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映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

『Fate/stay night [Heaven's Feel] III.spring song』感想

春はゆく / marie(期間生産限定盤)(DVD付)(特典なし)

 『Fate/stay night [Heaven's Feel] III.spring song』をみました。これは春に公開できなかったのは痛恨の極みであろうなという感が強いですが、よかったです。以下感想。

  原作『Fate/stay night』において結末を飾るHeaven's Feelルートの映画化の最終章。相も変わらず画はリッチ。2章におけるバーサーカー対セイバーは、『アポクリファ」におけるカルナ対ジークフリートへのufotableなりの返歌として鮮烈な印象を残したが、それを超える見せ場が果たしてこの最終章にあるのか、という気持ちがややあったわけですが、そうしたあまっちょろい心配など吹き飛ばすライダー対セイバー戦はお見事の一言に尽きる。超人的な膂力をもつ歴史の影法師たちの人知を絶した超高速の戦闘は、鮮烈に輝くエフェクトもあいまって強烈な印象を残す。

 ノベルゲーム原作の宿痾か、TV版の『UBW』では戦闘即意志=言葉のぶつけあいという側面がどうしても前景化しがちであったなかで、この映画『Heaven's Feel』では超人たちの異能バトルの超人性を見事に描き切ったという点に、一つの達成をみてもよいかもしれない。

 一方で全体をつらぬくストーリーラインとその結末については、そもそもが原作では膨大なプレイ時間を費やした果てのゴールであったものを、2時間という映画の結末として眺めなければならないというメディアの制約を強く感じた。黒幕たちの夢があらわになっては散ってゆき、この作品世界を律するルールのようなものが白日に晒されたあとで、そうしたルールの横紙破りのように顕現する奇跡。この結末は、数知れぬ死を乗り越え無数の理不尽を踏破した果てにこそふさわしい、という気が強くする。

 とはいうものの、3部作通して大変楽しませていただきました。黒沢清エヴァンゲリオンと今川泰弘が悪魔合体したかのごとき2章が個人的にはいちばん好きかも。

 

 

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