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映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

クラシックなノワールとして────『THEビッグオー』感想

THE ビッグオー

 『THEビッグオー』の前半をみたので感想。

 記憶喪失の街、パラダイムシティ。そこでは40年前に住民たちすべての記憶が失われたが、時折そのメモリーがよみがえり事件を起こす。そうした事件を解決するネゴシエイター、ロジャー・スミスが、巨大ロボット=メガデウスビッグオーを駆り、今日も街を飛ぶ!

 1999年から2000年にかけてWOWOWで放映された、異色のロボットアニメ。監督は『君たちはどう生きるか』の助監督で宮崎駿から全幅の信頼を寄せられていたという片山一良。シリーズ構成には片山と並んで小中千昭がクレジットされている。さとうけいいちによるキャラクターデザインはクラシックな魅力を放っていて、伊達男のロジャー・スミス、硬質だがそこはかとなくキュートなユーモアをたたえるアンドロイド、ドロシーの主人公コンビの強烈な存在感が光る。宮本充矢島晶子もこれ以上ないはまり役。

 前半部ではおおむね一話完結でロジャーとビッグオーが事件解決にあたる挿話で構成されるが、この評判がよかったために第2期が時間を空けて制作されたという。豪奢な屋敷に住み独特の美意識をもつ伊達男、ロジャー・スミスと、故・清川元夢演じるその執事、ノーマンのコンビはどことなく『バットマン』を想起させ、ドラマにはどことなくフィルムノワール風味の雰囲気がある。ロボットアニメとしては構成も雰囲気も異色で、それが20年以上の時を経てもこのアニメの魅力を色あせないものにしている。

 おもしろくみたのが巨大ロボット、ビッグオーの重量感で、操縦するロジャーが重たげにレバーを倒しペダルを踏みこむ所作とあわせて、巨大ロボットの動作の重々しさが外連味たっぷりに演出されているのが強く印象に残る。敵対するロボットは『ウルトラQ』や『ウルトラマン』などの円谷英二の特撮へのオマージュを感じさせて、その意味では放映当時の20世紀末にもすでにクラシックな風格があったのではないかしら。

 続きも楽しみにみていくつもりです。