宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2017年2月に読んだ本と近況

 2月は序盤に体調崩してマジで死ぬかと思いましたが、なんとかやっていけました。

 先月のはこちら。 

 2017年1月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

 印象に残った本

金属バットの女 (HJ文庫)

金属バットの女 (HJ文庫)

 

  印象に残っているにはちゅーばちばちこ『金属バットの女』。なんとなくこの本に思いを馳せてぼんやり過ごす時間が結構あったなと思います。

 

 それと『失われた時を求めて』チャレンジはついに巻数の上では折り返しに入りまして、難所とされる「ゲルマントのほう」も越えたので、これはいけるんじゃないか感が出てまいりました。

読んだ本のまとめ

2017年2月の読書メーター
読んだ本の数:24冊
読んだページ数:6740ページ
ナイス数:181ナイス

 

ソ連史 (ちくま新書)

ソ連史 (ちくま新書)

 

 ■ソ連史(ちくま新書)

 建国から解体に至るまでのソヴェト連邦の歴史を概観する。記述は簡明で教科書的な印象で、ざらっと歴史を眺めるのに好適という感じ。ソ連の歴史を単純に要約するならば、人々が共産主義の理想に幻滅していく過程なのではという気がして、過酷な状況にあっても理想への信頼があればこそ国家は維持されたが、生活が相対的には豊かになっていったことが理想への幻滅を深める結果になり、社会が機能不全に陥っていった、というのは一種の皮肉めいたものを感じる。
読了日:02月01日 著者:松戸 清裕
https://elk.bookmeter.com/books/4503557

 

3・11から考える「この国のかたち」―東北学を再建する (新潮選書)

3・11から考える「この国のかたち」―東北学を再建する (新潮選書)

 

 ■3・11から考える「この国のかたち」―東北学を再建する (新潮選書)

 震災後約1年の間に、産経新聞に掲載された語りと『新潮45』の連載とを所収。専門とする民俗学の知見が散りばめられているが、それ以上に具体的な社会政策を考えていく実践が提起されてもいる。特に語りではその色が濃い。被災地におけるフォークロアのエピソード、また柳田國男を震災後の立場から読み直すという試みの話なんかが特に印象に残る。

 著者がその瞬間を迎えた場所が僕が見知った場所だったので、なんとなく不思議な感じがした。
読了日:02月01日 著者:赤坂 憲雄
https://elk.bookmeter.com/books/5368728

 

21世紀の暫定名著

21世紀の暫定名著

 

 ■21世紀の暫定名著

 2001年以降に出版されたもののなかから名著を選出する。本書のメインは、一般書、日本文芸、海外文芸に分けて行われた座談会なのだと思うのだけど、そのなかで幾人かが表明しているようになんで15年しか経っていないこのタイミングで21世紀の名著を選出しようみたいな企画が立ったのか不思議。全体を通してその傾向はあるのだけど、特に海外文芸篇はそれぞれの選者がおもしろいと感じた小説を紹介するという趣が強い印象。

 読了日:02月02日 

https://elk.bookmeter.com/books/11193855

 

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

 ■虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 映画視聴前に再読。解説にもあるが、成熟を拒否するテクノロジーに囲まれて我々はどのように生きるのか、というのが骨格にあると思うのだけど、諸々の書籍で伊藤のパーソナルなテクストなんかを読んでから再読した今回、改めてその個人的な経験がこの物語に流れ込んでいるのだなと感じる。闘病生活のなかでおそらくテクノロジーの先端を感覚していたからこそ、現代の先端というか、我々の生のその先のビジョンを提示できたのでは、なんていう俗っぽい読みをせざるを得ないくらいに。

  この日からマジで体調が悪くて映画は半死半生の状態でみました(なぜ見に行った)。とかく批判されがちの映画版ですが、原作とは違うものを表現しようとした別物と捉えるならば(そしてあえて言わせてもらえば僕はそう捉える「べき」とも思う)、伊藤計劃作品のアニメ映画化3本のうち最もよかったのではないかと思っています。

読了日:02月03日 著者:伊藤 計劃

https://elk.bookmeter.com/books/565343

 

民俗学のこころ (1978年) (弘文堂選書)

民俗学のこころ (1978年) (弘文堂選書)

 

 ■民俗学のこころ (1978年) (弘文堂選書)

 柳田國男の教え子である著者が、柳田の民俗学を中心にして民俗学を概説する。著者のことは大塚英志の本で指導教官として言及されていて知ったのだけど、ちょうど筑波大で大塚を指導している時期に書かれたようだ。南方熊楠を補助線として柳田の民俗学の捉え方を特徴付けたりとか、太平洋戦争時の千人針等の習俗を共同体の習俗との連続性から捉えたりなんていうところが印象に残った。
読了日:02月04日 著者:千葉 徳爾
https://elk.bookmeter.com/books/3016736

 

方言萌え!?――ヴァーチャル方言を読み解く (岩波ジュニア新書)
 

 ■方言萌え!?――ヴァーチャル方言を読み解く (岩波ジュニア新書)

 現実で使われる「リアル方言」と、それを基盤として編集・加工されコンテンツ内で使用される「ヴァーチャル方言」という区分に基づき、主にヴァーチャル方言を使用することの意味がどのように変容してきたのかをたどる。共通語によってある種抑圧されてきた方言をめぐる態度は、90年代ごろの沖縄方言の流行を一つの境として潮目が変わった、というのが著者の見立てだろうか。大河ドラマや朝ドラ、そしてそれらへの反応を資料にして方言をめぐる態度の変遷をたどっていくという試みは大変楽しく読んだ。
読了日:02月05日 著者:田中 ゆかり
https://elk.bookmeter.com/books/11258472

 

金属バットの女 (HJ文庫)

金属バットの女 (HJ文庫)

 

 ■金属バットの女 (HJ文庫)

 突然現れた美少女が家族を殺す。その美少女は、世界を破壊する怪物『試験官』を唯一倒せる存在。彼と彼女の淡々と進行する物語。所謂セカイ系の骨格だけを取り出して、それを舞城王太郎的な文体で語ってみせ、なおかつその枠組みを破壊しようと試みたテクストとして読める。とはいえその試みがガチッと決まっているかといわれれば判断が難しいという気もして、それをするには著者の技量が…という気も。しかしこういう作品に賞を与えて世に出した出版社の志はなんとなく共感を覚えるという感じもする。

読了日:02月05日 著者:ちゅーばちばちこ

https://elk.bookmeter.com/books/9871382

 

邪馬台国と「鉄の道」 (歴史新書y)

邪馬台国と「鉄の道」 (歴史新書y)

 

 ■邪馬台国と「鉄の道」 (歴史新書y)

 邪馬台国とその女王に着目して、日本列島に国家的なるものが形成されていく過程を跡づけようと試みる。著者は日本近代史を専門とする歴史学者。史料の乏しい古代を別の分野を専門とする人間が語ろうとすると、どうしてもこじつけめいた歴史像が浮かび上がってしまうのではないかという先入観が僕のなかにあるのだが、本書もそうした感覚がどうしても拭えなかった。ただ日本書紀魏志倭人伝を重ねて読もうとする、というテクストの扱いはああこういうことができるのかと腑に落ちた感じもした。
読了日:02月06日 著者:小路田泰直
https://elk.bookmeter.com/books/3067605

 

鉄道ひとつばなし3 (講談社現代新書)

鉄道ひとつばなし3 (講談社現代新書)

 

 ■鉄道ひとつばなし3 (講談社現代新書)

 寝る前にちまちま読んでいた。著者が憤りを込めつつ批判する鉄道博物館の車体の細部のフェティシズムと、それと対照的な歴史性みたいなものへの無関心って、日本の鉄オタ文化の特徴と結構同型だよなという気もするのだけどどんなんだろ。
読了日:02月07日 著者:原 武史
https://elk.bookmeter.com/books/2961107

 

 ■ローティ: 連帯と自己超克の思想 (筑摩選書)

 ローティの思想を平明に解説する。その哲学史的なポジションの説明がとりわけ丁寧という印象で、『言語論的転回』を編んだローティがそれをどのように評価していたのかを、言語哲学の運動を丁寧に解説しつつ、また一方でハイデガーなど大陸哲学関係の記述もフォローしていて、本書だけ読んでもちんぷんかんぷんになるということはないのではなかろうか。それらの記述が厚いぶん、ローティ自身の思想については相対的に扱いが薄い気もしたのだけど、その複雑なバックグラウンドをなんとなく理解した気になったので大変勉強になりました。
読了日:02月08日 著者:冨田 恭彦
https://elk.bookmeter.com/books/11186682

 

ガダマー―地平の融合 (現代思想の冒険者たち)

ガダマー―地平の融合 (現代思想の冒険者たち)

 

 ■ガダマー―地平の融合 (現代思想の冒険者たち)

 ガダマーの思想を、『真理と方法』を中心にして解説する。ガダマーの哲学を「歴史的生の存在論」として読み解くことで、ハイデガーの影響を受けつつ独自の解釈学的哲学を展開した『真理と方法』の主張がなんとなくわかった気になった。よくガダマーの名と共に言及される「解釈学的循環」なんかもハイデガー存在論の連続線上に置くとなんというか腑に落ちて理解できたという感じ。
読了日:02月09日 著者:丸山 高司
https://elk.bookmeter.com/books/31659

 

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シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 *3

 

 ■シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧 *4

 「シャルリ・エブド」襲撃事件に端を発したデモに現れる現代フランスの危機を、統計的なデータを基に論じる。「私はシャルリ」というスローガンを掲げたのは著者がネオ共和主義者とラベリングする人々であり、そうした人々は自由貿易とユーロを支持する中産階級で、「ゾンビ・カトリシズム」の影響下にあるという。そのような人々が共和国の価値を称揚することで行なっているのは事実上社会的排除であって、それが極右政党の台頭をもたらしている、という見立て。なるほどなーと読んだのだけれど、なんというかそういう結論が先行してあって、それを導くためにデータを使っているという印象が拭えなかった。

 amazonのレビューをみていたら「使われている単語も、言説、瑕瑾、多文化主義ディスクール、メタファーなどと言った「文系人間」御用達の言葉が並」んでいて翻訳が悪いなどとちょっと驚くべき文字列に遭遇したのですが、自身の用いることのできる語彙が使われていないだけで翻訳が悪いとかいわれんだから売れる本を翻訳するのも大変ねって感じですね。
読了日:02月11日 著者:エマニュエル トッド
https://elk.bookmeter.com/books/10140498

 

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

 

 ■イスラーム国の衝撃 (文春新書)

 2014年にカリフ制再興を宣言し国際社会に衝撃を与えたイスラーム国を、イスラーム思想史と中東をめぐる国際政治という二つの文脈から捉え、それがいかなる意味で歴史上の「分水嶺」であるのかを論じる。2001年以降活発になったグローバル・ジハードの流れのなかでイスラーム国の出現を捉える見方は大いに勉強になった。911以降の中東をめぐる政治のなかでその出現の土壌が育まれていたのだなと。現在ではシリアをめぐる情勢はより混迷を深めている感もあるけれど、歴史的な状況の整理として本書の有用性は減じてはいない、という印象。
読了日:02月11日 著者:池内 恵
https://elk.bookmeter.com/books/9230988

 

ハイデガー 存在の歴史 (講談社学術文庫)
 

 ■ハイデガー 存在の歴史 (講談社学術文庫)

 ハイデガーの思想を、『存在と時間』を中心に据えて解説した入門書。若きハイデガーの写真が存在感を放つ表紙が内容を予告していて、若りし日の講義のなかにすでに『存在と時間』で語られる構図が散見されると見立て、また未刊行の後半部まで含めれば後期の「存在の歴史」に関わる哲学史的な構図もすでに『存在と時間』に見出される、というのが著者の見取り。それゆえ、『存在と時間』刊行までの伝記的な事実や講義の内容などの記述が厚い。ハイデガーの存在の歴史をめぐる思考は、ドロイゼンとベンヤミンの歴史哲学を包摂するようなニュアンスがあるのでは、という指摘は非常に腑に落ちた。
読了日:02月15日 著者:高田 珠樹
https://elk.bookmeter.com/books/8315612

 

文庫本を狙え! (ちくま文庫)

文庫本を狙え! (ちくま文庫)

 

 ■文庫本を狙え! (ちくま文庫)

 90年代後半から2000年ごろに書かれた、文庫本の書評171編を所収。文庫本のみを扱っていることに本書の妙はあるという気がして、古きも新しきもフラットに新刊本として書店に並ぶ文庫本を対象にしているがゆえに、小沼丹から杉田かおるまで著者のその時々の興味にあわせて幅広い本が扱われていて、一種の変なブックガイドとして読める。しかし著者の語りのうまさに引き込まれてすらすら読んでしまうけど、書評ってのはある種の名人芸だよな、とも思う。
読了日:02月16日 著者:坪内 祐三
https://elk.bookmeter.com/books/11087783

 

モンゴル帝国の興亡 (ちくま新書)

モンゴル帝国の興亡 (ちくま新書)

 

 ■モンゴル帝国の興亡 (ちくま新書)

 チンギスの時代からモンゴル帝国の成立、発展、そしてそれぞれのオルドが拡散して新たなユーラシアの秩序が確立されるに至るまでを通史的に辿る。記述は悪い意味で教科書的というか、歴史的事実をひたすら積み重ねていくような語り口になっておりいささか以上に平板に感じられる。しかしそれでもチンギスの時代からモンゴルがユーラシアを駆け巡りやがて大帝国が出現するフビライの時代までは大変面白く読めてしまうあたりは著者の知識と力量のなせる技なのだろうなとも思う。
読了日:02月17日 著者:岡田 英弘
https://elk.bookmeter.com/books/17127

 

新版 タイムトラベルの哲学 (ちくま文庫)

新版 タイムトラベルの哲学 (ちくま文庫)

 

 ■新版 タイムトラベルの哲学 (ちくま文庫)

 タイムトラベルは可能なのかという問いを、技術的な側面ではなく認識論的な側面から考える。時間やそれを捉える意識、そして「今」というものは何なのかということが考察の俎上にのぼり、タイムトラベルという現象が引き起こすであろう世界と私をめぐる混乱に引き込まれるような感覚があり読んでいておもしろかった。解説をよせている永井均の哲学の影響が濃く感じられるというか、タイムトラベルという問題の輪郭をはっきりとさせようと徒手空拳で思考していく感覚が通じるところがあるような印象。
読了日:02月19日 著者:青山 拓央
https://elk.bookmeter.com/books/1508795

 

自閉症とラノベの社会学

自閉症とラノベの社会学

 

 ■自閉症ラノベ社会学

 本書がとりわけ力点を置くのは(ラノベではなく)自閉症で、ラノベをひとつの素材として取り上げつつ社会学自閉症的なものをどのように認識し取り扱ってきたのかを啓蒙的に語る、ある種の入門書的な色が濃いように感じられる。ラノベの一つの類型を、「留保-韜晦」のスタイルを身につけた定型発達者と、自閉症的な「非現実的」なキャラクターが共存している(例えば『涼宮ハルヒの憂鬱』など)として取り上げたのはおもしろいなと思ったのだけど、全体的には独立したラノベ論として読めるほどにはラノベを論じてはいないように思われた。
読了日:02月19日 著者:竹中 均
https://elk.bookmeter.com/books/10937698

 

問題がモンダイなのだ (ちくまプリマー新書)

問題がモンダイなのだ (ちくまプリマー新書)

 

 ■問題がモンダイなのだ (ちくまプリマー新書)

 問題とは何なのか、問題はいかなる場合に問題でなくなるのか、それを効果的に行う方途は何かを考察していく。問題が問題でなくなるのはそれに回答を与えられた場合と、それが解消される場合とに弁別でき、また問題の前提となる問題へと問題をスライドさせるなどして、回答・解消しやすい(あるいはより困難な)問題へと「問題をつくる」ことが効果的であると説く。読んでしまえば当たり前なのだけど、それを平明に言葉にしていてなおかつ陳腐さはまったく感じられない、大変啓蒙的な本だった。
読了日:02月20日 著者:山本 貴光,吉川 浩満
https://elk.bookmeter.com/books/359122

 

記号と事件―1972‐1990年の対話 (河出文庫)

記号と事件―1972‐1990年の対話 (河出文庫)

 

 ■記号と事件―1972‐1990年の対話 (河出文庫)

 ドゥルーズの対話などを集成したもの。『アンチ・オイディプス』出版の年から90年までの足跡を辿るような構成になっていて、それぞれの仕事をどのようにドゥルーズ自身が位置付けているのか、というのがぼんやり理解した気になれる。とりわけ面白く読んだのがフーコー論に関わる対話で、フーコーを歴史的、自身を地理学的と位置付けたりというのがとりわけ印象的だが自身との差分のなかでフーコーを語っていてなんというか関係性のマッピングみたいなものが自分のなかでなんとなく掴めたような掴めないような感じ。
読了日:02月21日 著者:ジル ドゥルーズ
https://elk.bookmeter.com/books/485053

 

 ■失われた時を求めて〈5 第3篇〉ゲルマントのほう 2 (ちくま文庫)

 祖母の死の場面に始まりスワンの死期が近いことが明かされて閉じられるこの巻の大半を構成するのは、ゲルマント家を中心とする貴族が歓談を交わす晩餐会の場面なのだけれどそれが非常に読むのに難儀したというか、ただ文字の上を目が滑っていくような時間が他の巻と比べて明確に長かったように思う。それを通して語り手は社交界の空疎さをなんとなく感じるに至るのだし、そのあまり愉快ではない時間もある意味明快に機能してはいるという気がするのだけど。とはいえ祖母の死の場面なんかは大変エモーショナルで胸に迫るものがあった。
読了日:02月22日 著者:マルセル プルースト
https://elk.bookmeter.com/books/18351

 

フロイト入門 (筑摩選書)

フロイト入門 (筑摩選書)

 

 ■フロイト入門 (筑摩選書)

 フロイト精神分析の手法・思想を、その形成過程に寄り添いながら概説する。入門という書名が冠されているけれど、フロイトの着想のもととなった具体的な症例の記述が非常に詳細で、なんというかざっくりフロイトの思想を大掴みに整理したいみたいな動機で読む本ではなかったという感じ。
読了日:02月23日 著者:中山 元
https://elk.bookmeter.com/books/9871081

 

 ■海道の社会史―東南アジア多島海の人びと (朝日選書)

 東南アジア島嶼部の東側、マカッサル海道の島々を、文献資料とフィールドワークとを基にしてその歴史と現在とを論じる。やはりというか、植民地時代の影響がこの地域の現在に色濃く残っているのだなという印象が強化されたのだけど、そうした植民地主義は多様であった島の風景をプランテーション農業によって単調なものに作り変えていってしまう、という指摘はとりわけ印象に残る。もちろん植民地時代以前の人々の生活と現在との連続性についても叙述されていて、全体としてはなんというか独特の語り口だよなと感じた。
読了日:02月26日 著者:鶴見 良行
https://elk.bookmeter.com/books/305475

 

極私的東京名所案内

極私的東京名所案内

 

 ■極私的東京名所案内

 おもに近代文学と関連づけて東京を語るエッセイなのだけど、その「極私的」ぶりは半端ではなくこれをほんとうに楽しめるのは相当な文学通なのではないかというのが正直な印象で、よく知らない人のよく知らないエピソードが開陳されてもなかなかおもしろがるのは難しいなと感じたというのが率直な感想。ラストの後楽園球場をめぐる一篇は面白く読んだのですが潔すぎる投げっぱなしジャーマンが痛快だった。
読了日:02月26日 著者:坪内 祐三
https://elk.bookmeter.com/books/39455


近況

劇場でみたのは以下の3本。

彼らの夢の景色――『MERU/メルー』感想 - 宇宙、日本、練馬

テクノロジーと自我――映画『虐殺器官』感想 - 宇宙、日本、練馬

ふたつの夢のゆくえ――『ラ・ラ・ランド』感想 - 宇宙、日本、練馬

家でみて感想を書いたのは以下の4本。

生きる速度と街の風景――『プレミアム・ラッシュ』感想 - 宇宙、日本、練馬

去りゆく女、留まる男――『イノセンス』感想 - 宇宙、日本、練馬

『GANTZ:O』感想 - 宇宙、日本、練馬

青春の語りかた――『アース・トゥ・エコー』感想 - 宇宙、日本、練馬

アニメはUfo版Fateをみました。

我々の生きるこの偽物の場所――『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』感想 - 宇宙、日本、練馬

 

来月のはこちら。

amberfeb.hatenablog.com

 

*1:文春新書

*2:文春新書

*3:文春新書

*4:文春新書