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宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2017年1月に読んだ本と近況

読書 近況

 2017年もやっていきましょう。

 先月のはこちら。

 2016年12月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

 印象に残った本

ユリシーズを燃やせ

ユリシーズを燃やせ

 

  特に印象に残ったのはケヴィン・バーミンガムユリシーズを燃やせ』。20世紀最大の小説の一つとして名高いジェイムズ・ジョイスユリシーズ』がいかにして書かれ、そして読まれたのかをたどる「『ユリシーズ』の伝記」である本書が主眼をあてるのは、『ユリシーズ』を猥褻物だとみなして検閲する権力との闘い。我々はこの『ユリシーズ』が闘争の末に切り開いた地平で生きているのだなということを認識するのだが、同時に我々の享受する自由というものが歴史的な所産であり薄氷のようなものでもあるのだな、と実感する。

  ほか江波光則『我もまたアルカディアにあり』も面白かったのと、大塚英志/東浩紀の対立軸をちょっと掘り下げて考えてみようかなと思っていたりします。


読んだ本のまとめ

2017年1月の読書メーター
読んだ本の数:29冊
読んだページ数:8676ページ
ナイス数:252ナイス

 

 

我もまたアルカディアにあり (ハヤカワ文庫JA)

我もまたアルカディアにあり (ハヤカワ文庫JA)

 

 ■我もまたアルカディアにあり (ハヤカワ文庫JA)

 世界の終末に備えるために建てられたというマンション、アルカディア。働かずとも生活が保障されるというそこに入居した男女の一族が織りなす、滅びと愛のドラマ。この世は我々が何をしようがただなんとなく滅びへと向かってゆく、というトーンに貫かれた世界のなかで、それでも日々にそれなりの充足を見出す者たちを語り手にして紡がれるこの物語の着地点は、すなわち愛という瞬間のなかにこそ、いやむしろそこにしかあらゆる価値は生じない、というところなのだという気がする。それを陳腐と感じさせない強度がある、と思う。

読了日:01月01日 著者:江波光則

https://elk.bookmeter.com/books/9761935

 

夜明けのブギーポップ (電撃文庫)

夜明けのブギーポップ (電撃文庫)

 

 ■夜明けのブギーポップ (電撃文庫)

 ブギーポップの始まりについて触れた連作短編集。霧間凪が「炎の魔女」になるまでの物語がおおよそ全体を貫いているかなと思うのだけど、そのなかで自らの死を受け入れて死んでいく男たちの姿が何度も反復されるのが、かつて読んだ時には中学生だった僕の心に強く残った記憶がある。そういう人間の端緒はシリーズ一作目のエコーズで、だから始まりと終わりとに彼が再び姿を見せたのだろうか。
読了日:01月01日 著者:上遠野 浩平
https://elk.bookmeter.com/books/553975

 

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

 

 ■太陽の塔 (新潮文庫)

 別れた恋人を「研究」と称してつけまわす京都の阿呆な大学生の自意識がクリスマスに炸裂する。のちの作品と比べると構成は散漫に感じられはするのだけど、デビュー作にしてすでに文体とそれを効果的に使ったキャラクター造形は強烈な印象を残す。デビュー作に作家の全てがあらわれるという陳腐な決まり文句もあながち間違いではないと思うと同時に、次第に技術が洗練されていくなかで失われたように感じられもするエモーションが表出する瞬間の気持ちよさは他作品を凌駕さえする、と感じた。
読了日:01月03日 著者:森見 登美彦
https://elk.bookmeter.com/books/581004

 

 ■贖罪のヨーロッパ - 中世修道院の祈りと書物 (中公新書)

 5世紀から12世紀までの、ヨーロッパにおける修道制の歴史を論じる。タイトルにある「贖罪」はそれほど前景化する感じはせず、そうした主題に寄せるよりはむしろ事実の提示によって語らせる、というような叙述になっているように感じた。驚いたのは、いまだに荘園制の議論でマルクス主義的な発展段階論が批判の対象となっていること。マルクス主義歴史学って荘園制を眺めるパースペクティブをここまで規定し続けているのだなと、その亡霊的なしぶとさにびびった。
読了日:01月07日 著者:佐藤 彰一
https://elk.bookmeter.com/books/11214006

 

M2 われらの時代に (朝日文庫)

M2 われらの時代に (朝日文庫)

 

 ■M2 われらの時代に (朝日文庫)

 1999年から2001年にかけて行われた時事的な事柄を扱った対談をまとめたもの。まさかこのころの宮台はのちに与党になった民主党にコミットするとか、小林よしのりと良好っぽい関係になるとか想像もしてないんだろうなと思うと、この対談の当時と今とのギャップになるほどなってなるのがこの本の楽しみ方なのかなという気はする。
読了日:01月07日 著者:宮台 真司,宮崎 哲弥
https://elk.bookmeter.com/books/517691

 

 ■ミッキーはなぜ口笛を吹くのか: アニメーションの表現史 (新潮選書)

 20世紀前半のアメリカにおいて、アニメーションという表現がどのように生まれ、そして発展していったのかを辿る。見世物からの連続性からアニメーションの始まりを論じる序盤、ロトスコープなど技術的な進歩を扱う中盤、そしてトーキーの登場に至り音と映像との関係性が前景化する後半という感じで、大まかに三つのセクションに分けられるだろうか。本書の表題とも絡み、そして最も力を入れて論じられているのは音と映像との関係だろう。リップシンクによって、アニメーションという絵に現実性が付与された、ということが重要視されてる感。
読了日:01月08日 著者:細馬 宏通
https://elk.bookmeter.com/books/7367876

 

転校生とブラックジャック――独在性をめぐるセミナー (岩波現代文庫)

転校生とブラックジャック――独在性をめぐるセミナー (岩波現代文庫)

 

 ■転校生とブラックジャック――独在性をめぐるセミナー (岩波現代文庫)

 この「私」なるものはいかにして、いかなる仕方で、いかようなものに担保されて過去・未来と連続性をもつのか、ということが主要な論題になっていると思うのだけど、一読した印象ではなんというかわかったような感覚で対話を追っていっているのにいつの間にかよくわからなくなっている、というまあ結局よくわかってないのだろうなという読後感だった。先日物故したパーフィットの思考実験の考察に大きく紙幅が割かれていて、なんとなくタイムリーさを感じたりもした。
読了日:01月08日 著者:永井 均
https://elk.bookmeter.com/books/414285

 

 ■憂鬱と官能を教えた学校 下---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 旋律・和声および律動 (河出文庫 き 3-2)

 バークリーメソッドによって20世紀の商業音楽の歴史を捉えようとする試み。相変わらず実学の記述は僕にはちんぷんかんぷんだったんだけれど、下巻ではビバップからモードへとパラダイムシフトするジャズの動きが一つのメルクマールとして論じられている箇所が読みどころだった。全体として、近代というものが推し進めた「記号化」の、商業音楽における代表がバークリーメソッドである、という見立てで、現在はその記号化が臨界点に達しつつある、という認識が基底にある、という感じだろうか。
読了日:01月09日 著者:大谷 能生,菊地 成孔
https://elk.bookmeter.com/books/541326

 

テクストから遠く離れて

テクストから遠く離れて

 

 ■テクストから遠く離れて

 所謂「テクスト論」に対して、その有効性の消失を論じ、読み手が「作者の像」を構築していく「脱テクスト論」を主張する。近年テクスト論では論じきれない「テクスト論破り」の作品が出てきているとして、大江健三郎『取り替え子』、村上春樹海辺のカフカ』をあげたのち、三島由紀夫仮面の告白』を現実の作者「平岡公威」殺しと作者「三島由紀夫」の仮構を計ったものとして読解する。フーコー批判ははっきりいって牽強付会だと感じたが、それぞれの作品の読みにはうなずかされることが多かった。
読了日:01月09日 著者:加藤 典洋
https://elk.bookmeter.com/books/41071

 

中国の歴史 (ちくま学芸文庫)

中国の歴史 (ちくま学芸文庫)

 

 ■中国の歴史 (ちくま学芸文庫)

 放送大学のテクストの文庫化。教科書的な概説の色が濃いが、華夷思想との関連でどのように「中国」というひとつのまとまりが形成されていったのか、また国家はどのように多民族を統合しようと試みたのか、というのが全体を貫く軸として叙述されているのかなという印象。コラムとして挟まれる史料の配置が不親切に感じられたりとか不満はあるのだが、一人の手になる通史を語るという試みは該博な知識と巧妙なストーリーテリングが必要とされるわけで、その点ではやはり著者の力量に脱帽という感じ。
読了日:01月11日 著者:岸本 美緒
https://elk.bookmeter.com/books/9781256

 

 ■漢文脈と近代日本 (角川ソフィア文庫)

 漢詩文を、その「形式」と「思考」という相互に規定しあう二つの極から捉え、近世後期から大正期にかけてどのように影響力をもち、そして現代的な日本語から切断されていったのかを追う。中国の古典を踏まえつつ、それを日本語という音に合わせて使いこなしていった頼山陽のスタイルなど、個別のトピックの掘り下げはおもしろく読んだのだけれど、永井荷風森鴎外を経て谷崎潤一郎芥川龍之介に至る近代における漢文脈の残滓をめぐる議論あたりは流し読みしてしまった。

 漢詩文の使い方って今風にパラフレーズすると古典のサンプリングだと思うのだけど、そういう教養主義的なゲームとしての言葉の使い方っていう面では(韻やリズムの重要性という意味でも)ヒップホップカルチャーと結構相似関係にあるのではとか思ったりしました。
読了日:01月12日 著者:齋藤 希史
https://elk.bookmeter.com/books/8048828

 

絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)

絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)

 

 ■絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)

 超訳ニーチェ二匹目の泥鰌を狙ったような雰囲気を紙面の構成から感じたりしたのだけど、あまりのネガティヴぶりに面白く読んでしまった。引用されている多くがカフカの小説ではなく手紙や日記などなのだが、よくもまあこんなことを他人に宛て送ったなと。ここに書いてあるテクストをSNSとかに書き込み続けたら精神に変調をきたしたのではと疑われそう、みたいなことを思ってカフカの時代にインターネットなくてよかったねって思いました。
読了日:01月13日 著者:フランツ カフカ
https://elk.bookmeter.com/books/8343182

 

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 

 ■沈黙 (新潮文庫)

 映画を見る前に再読しておこうと思って読み始めたのだけど一気に読んでしまった。ロドリゴとフェレイラが穴釣りの拷問に呻く切支丹の声を背景に問答する場面がやはり壮絶で、沈黙する神への絶望と、神の赦しを踏み絵のなかに見出すクライマックスとに展開をわかっていても引き込まれて、スコセッシはこれをどういうふうに撮ったのかと今から非常に楽しみです。

 映画、期待に違わずたいへんよかった。

読了日:01月14日 著者:遠藤 周作

https://elk.bookmeter.com/books/556977

 

日本の家郷 (洋泉社MC新書)

日本の家郷 (洋泉社MC新書)

 

 ■日本の家郷 (洋泉社MC新書)

 「日本」をめぐる批評三編を所収。「くらし」と「くらさ」をキータームにして日本における家郷と彷徨者を論じた「日本の家郷」、安土桃山期に文学の一種の切断線をみる「生成する日本」、そして日本のモダニストの運動を日本なるものを仮構しようと試みたものと見立てる「虚妄としての日本」。三編とも読んでる最中は引き込まれたのだけど、読み終えて「なんだかわからんがすごかった」みたいな感想しか残ってないので読めてないっぽい。そのあたりの感触は小林秀雄のテクストに通ずるところがあるかも。
読了日:01月14日 著者:福田 和也
https://elk.bookmeter.com/books/374945

 

ユリシーズを燃やせ

ユリシーズを燃やせ

 

 ■ユリシーズを燃やせ

 20世紀を代表する小説の一つとして知られる『ユリシーズ』は、いかにして世に出たのか。その道筋をたどる「『ユリシーズ』の伝記」たる本書は、多くの紙幅をアメリカやイギリスにおける検閲・焚書との闘いに割く。今でこそ古典とされる作品が世に出るまで、ここまでの苦難と困難があったのかということに驚き、そして20世紀前半という100年たらずも前の社会においていかに「表現の自由」が困難であったのかということがとにかく印象に残る。我々が享受しているかな思われるこの自由の基盤の不確かさを思い知らされるというか。
読了日:01月16日 著者:ケヴィン バーミンガム
https://elk.bookmeter.com/books/11107531

 

綾瀬はるか 「戦争」を聞く (岩波ジュニア新書)

綾瀬はるか 「戦争」を聞く (岩波ジュニア新書)

 

 ■綾瀬はるか 「戦争」を聞く (岩波ジュニア新書)

 広島、長崎、沖縄、真珠湾等で被害を受けた当事者、あるいは遺族に取材した番組の書籍化。こうした番組は往往にして日本の被害者性を強調して、加害者としての側面を語り落とす傾向にあるのではという気がするのだけど、真珠湾のセクションが挟まれることによってそうした批判を封じる構成になっていると感じる。当事者が世を去っていなくなってしまってからこそ、記憶や経験を語り継ぐことの困難さに直面するのだろうなという気がして、現在はまさに未だ当事者の語りを聞くことのできる最後の時代なのだろうなと思う。
読了日:01月17日 著者:
https://elk.bookmeter.com/books/6626482

 

綾瀬はるか 「戦争」を聞く II (岩波ジュニア新書)

綾瀬はるか 「戦争」を聞く II (岩波ジュニア新書)

 

 ■綾瀬はるか 「戦争」を聞く II (岩波ジュニア新書)

 2013〜5年に放送されたものを書籍化したこの巻は、原爆被害者に焦点を絞っていて、日本の加害者性は捨象されているように感じられた(それがよい/悪いという価値判断は措くとして)。助産婦に焦点を当てた序盤の章がとりわけ印象に残っていて、重傷を負いながらも子供を取り上げようとした助産師のエピソード(結局母子ともに亡くなる)なんかの残酷さはフィクションが裸足で逃げだすよなと。

 この本を読んだのってやっぱり『この世界の片隅に』に影響されてるんだと思うんですが、こういう本を読んでなお、どのようにして戦争をあるいは作品を語るのか、というところについてははっきりと言葉にできねえな、と思う。

読了日:01月18日 著者:

https://elk.bookmeter.com/books/11082862

 

モータリゼーションの世紀――T型フォードから電気自動車へ (岩波現代全書)

モータリゼーションの世紀――T型フォードから電気自動車へ (岩波現代全書)

 

 ■モータリゼーションの世紀――T型フォードから電気自動車へ (岩波現代全書)

 主にフォード、GMクライスラーの所謂ビッグスリーに焦点を当て、自動車産業100年の通史を概説する。ビッグスリーの歩みはほぼアメリカの自動車産業の歩みと重なるわけで、コンパクトにまとまったアメリカの自動車産業の通史としては非常に使える本ではないかというのが一読しての感想。フォードとGMの争いにせよ、日本車とアメリカ車の争いにせよ、環境に適応したスタイルは環境の変化につれ時代遅れにならざるを得ないということが如実にあらわれているよなと思う。
読了日:01月20日 著者:鈴木 直次
https://elk.bookmeter.com/books/11274962

 

神話が考える ネットワーク社会の文化論

神話が考える ネットワーク社会の文化論

 

 ■神話が考える ネットワーク社会の文化論

 神話をコンセプトにして、文学からサブカルチャーまでを横断的に論じていく。作品論を軸にして現代における神話論=文化理論を立ち上げていく、という形式で議論を進行させていて、西尾維新や東方プロジェクトなど個別の作品を哲学的・社会学的な語彙を使って現代社会の文脈のなかに落とし込み論じていく手際はスマートに感じられおもしろく読んだ。一方でポストモダン社会における文化理論を立ち上げようとする試みについてはいまいちぴんとこないというか、腑に落ちないまま読み進めてしまった感じ。
読了日:01月21日 著者:福嶋亮大
https://elk.bookmeter.com/books/342920

 

宮沢賢治殺人事件 (文春文庫)

宮沢賢治殺人事件 (文春文庫)

 

 ■宮沢賢治殺人事件 (文春文庫)

 「聖人」というイメージと強く結びつけられるようになった宮沢賢治。本書はそのイメージを破壊しようとする偶像破壊の試みで、宮沢賢治の農業がいかに現実から遊離したものだったのか、そしていかなる経済的基盤があったのか、さらにはその思想の中核に国柱会とも響きあう国粋主義があった可能性をも示唆する。聖人からその聖性を剥ぎ取り、現実の社会的な布置のなかに置き直すこの見立ては大変おもしろいと思うのだが、露悪的で品がない語り口にうんざりもした。
読了日:01月24日 著者:吉田 司
https://elk.bookmeter.com/books/404219

 

リアルのゆくえ──おたく オタクはどう生きるか (講談社現代新書)

リアルのゆくえ──おたく オタクはどう生きるか (講談社現代新書)

 

 ■リアルのゆくえ──おたく オタクはどう生きるか (講談社現代新書)

 それぞれ2001年、2002年、2007年、2008年に行われた対談を所収。『動物化するポストモダン』から『情報自由論』、『ゲーム的リアリズムの誕生』を経て、この対談ののちに書かれる一般意志論に至る東の関心・思想の変遷が、大塚英志という語り手を相手にしているがゆえにクリアになっているという印象。デビューしたばかりの新海誠に触れられていてなんというかタイムリーさを感じた。それにしても、ここいう言い方は不適切かもしれないが、秋葉原事件インパクトは東日本大震災の前に吹き飛んでしまったよな、と今更思う。
読了日:01月24日 著者:東 浩紀,大塚 英志
https://elk.bookmeter.com/books/50726

 

「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか (ちくま新書)
 

 ■「反戦脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか (ちくま新書)

 近年盛り上がりをみせる反戦脱原発デモの敗北がその思想・行動によって準備されたものとし、それを分析する。編集者の疑問に著者が応答する形式でかかれている。著者自身も述べるように冷笑的な筆致だが、リベラル勢力の紋切り型についての批判としては非常によくまとまっていると感じるし、この批判を経てリベラルを鍛えていこうという意志が背景にはあるようにも感じられる。知識人を現実から遊離したヴァーチャルな世界に耽溺する存在と見立てるのが著者の知識人論の核心だと思うのだが、それは確かにそうだよなと。
読了日:01月25日 著者:浅羽 通明
https://elk.bookmeter.com/books/10434326

 

南朝研究の最前線 (歴史新書y)

南朝研究の最前線 (歴史新書y)

 

 ■南朝研究の最前線 (歴史新書y)

 南朝に関する研究動向を整理した論考15編を所収。佐藤進一の論を受けて提出された網野善彦の「異形の王権」論(後醍醐の宗教政策の特異性を強調)は、現在では過去の政権との連続性があることが示されていること、建武の新政の失敗をことさらに強調するのは事実と乖離していることなど、所謂教科書的な歴史像が書き換わりつつあるのだなーと。
読了日:01月25日 著者:
https://elk.bookmeter.com/books/11062153

 

入門 近代仏教思想 (ちくま新書)

入門 近代仏教思想 (ちくま新書)

 

 ■入門 近代仏教思想 (ちくま新書)

 明治期からの仏教思想の展開を、主に井上円了清沢満之、近角常観、暁烏敏倉田百三の五人に焦点を当てて概説する。哲学的なものを取り入れるところから始まった仏教思想の展開は、やがて教養的なものに回収された、というのが大雑把な見取り図だろうか。近代における仏教思想の展開って全く知らなかったので単純に面白く読んだのだけど、それ以上に近代における仏教思想の展開は著者も述べるように人文知に関わる日本近代のより広い問題系に連なるものとして面白い事例だよなーと思う。

 「国家による政治や宗教とは異なる次元で、国民を教化する「宗教」になろうとした仏教は、単に「宗教」であるのみならず、ときに「哲学」となり、ときに個人の内的な「体験」となった。さらには、「教養」の一部となり、その果てに、「伝統」から遠く離れて、「私」だけのものになった。」(pp.266-7)というのが、本書の端的な要約であるように思われる。
読了日:01月25日 著者:碧海 寿広

https://elk.bookmeter.com/books/11095655

 

失われた時を求めて〈4 第3篇〉ゲルマントのほう 1 (ちくま文庫)

失われた時を求めて〈4 第3篇〉ゲルマントのほう 1 (ちくま文庫)

 

 ■失われた時を求めて〈4 第3篇〉ゲルマントのほう 1 (ちくま文庫)

 ゲルマント夫人への憧憬、サンルーと軍人たちとの交流、社交界。そして祖母との別れの予感。この巻になって読み進むスピードが一気にダウンしたのだけど、社交界で交わされるハイコンテクストな会話の応酬がその大きな理由という気がする。ここからドレフュス事件という歴史的な背景が前景に現れ、それを一つのメルクマールとして様々な人間たちの付置が語られているのだろうな、と思う。末尾に置かれた祖母との挿話の物悲しさが強く印象に残る。
読了日:01月27日 著者:マルセル プルースト
https://elk.bookmeter.com/books/12979

 

 ■社会を作れなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門 (角川EPUB選書)

 「国難/社会難」に際して、日本における公民を育成しようと試みた社会政策の実践者として柳田を捉え直す柳田論。農業政策や「民俗学」を通して、個人として自立した「公民」を育てようとした柳田の姿に、漫画やキャラクター小説を書くという試みを通して、「私」を語る主体を構築しようと試みた大塚の実践が重なるような記述に感じられ、ある種の近代主義者の柳田の延長線上に大塚自身の歴史的な立ち位置を置くような、そういう論であるように感じた。
読了日:01月28日 著者:大塚 英志
https://elk.bookmeter.com/books/8310732

 

 ■33個めの石 傷ついた現代のための哲学 (角川文庫)

 主に新聞に掲載された短いエッセイを所収。バージニア工科大学でおきた銃乱射事件のあと、32人の犠牲者と共に加害者を追悼するために33個めの石が置かれた、というエピソードから書名が取られていて、それが福知山線脱線事故後のJR西日本の対応と対照されている。とはいえ、その33個めの石は大学という公的な組織に認められることはなかった、という後日談も語られているのだけど。著者の他の著作からも同様の印象を感じるのだが、内省を繰り返すことで我が身を省みざるを得ないような感覚になる、そういうテクスト群だと感じる。
読了日:01月28日 著者:森岡 正博
https://elk.bookmeter.com/books/11285261

 

京都ぎらい (朝日新書)

京都ぎらい (朝日新書)

 

 ■京都ぎらい (朝日新書)

 京都市における洛中/洛外という地理上の差がもたらす差別を枕にして、京都について語る。僧侶やら寺院やら芸妓やら話題は色々扱われるのだけど、やはり一番おもしろかったのは序盤で書かれた洛中の人間の強烈な中華意識とそれに裏付けられた地理感覚。京都、と京都の外に生きる人たちは十把一絡げに語るけれども、その地形は想像以上にでこぼこしているのだなということが、差別されてきたと自認する嵯峨生まれの著者によって語られると真実味があるなと。
読了日:01月29日 著者:井上章一
https://elk.bookmeter.com/books/9842041

 

テレヴィジオン (講談社学術文庫)

テレヴィジオン (講談社学術文庫)

 

 ■テレヴィジオン (講談社学術文庫)

 フランスで放映された番組のテクスト化。書き言葉で意味わからんことも話言葉ならわかるかな〜〜みたいな浅はかな期待は一瞬にして打ち砕かれ、よくわからない文章を追っていく時間を過ごすことになった。
読了日:01月30日 著者:ジャック・ラカン
https://elk.bookmeter.com/books/11242434

近況

劇場でみた映画は以下の通り。

「近代」の夢の廃墟――『傷物語〈III 冷血篇〉』感想 - 宇宙、日本、練馬

オアシスは世界最強のバンドである――映画『オアシス:スーパーソニック』感想 - 宇宙、日本、練馬

世紀末の神話再び――『マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディション』感想 - 宇宙、日本、練馬

共有されえない普遍の神――『沈黙 -サイレンス-』感想 - 宇宙、日本、練馬

魔術でトリップ――『ドクター・ストレンジ』感想 - 宇宙、日本、練馬

 それと『シン・ゴジラ』四回目。

 アニメはだらだらと『BLACK LAGOON』を見ていました。

未だ夜に至らず――アニメ『BLACK LAGOON』感想 - 宇宙、日本、練馬

 『夜は短し歩けよ乙女』に備えて再見。

いま・ここの肯定――アニメ『四畳半神話大系』感想 - 宇宙、日本、練馬

 

 

 

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