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見放された子どもたちのために――『シャザム!』感想

映画ポスター シャザム 90cm x 60cm シルクポスター 海外告知版 DCコミック DS 01

 『シャザム!』をみました。最近のアメコミ映画のなかではいちばん好きかもです。以下感想。

  明滅する閃光に導かれ、少年は謎めいた廃墟に立つ。老人がこう告げる。正しい心をもった人間であれば、勇者の力を授けよう。かつて選ばれなかった少年と、そしていま、偶然のいたずらで選ばれてしまった少年。親の愛情を受けずに育った二人の運命は、こうして分かたれ、復讐者たる悪の超人と、何も知らない少年超人として出会う。

 DCエクステンデッド・ユニバースの最新作。『アクアマン』でも感じられた、ユニバース全体の雰囲気を変えようという意思はこの『シャザム!』でも貫徹していて、シリアスで切実な題材を扱いつつ、全体として笑いに満ちた明るい映画になっている。

 この『シャザム!』は、明らかに2019年という地の利を生かしている。地の利とはすなわち、MCUしかり、これだけスーパーヒーロー映画が絶え間なく上映され続けているここ数年の状況のこと。こうしてヒーローのお約束を観客がある程度共有しているという前提に立ち、「バットマン」や「スーパーマン」に親しむ少年たちを主役に据えて、少年らしさにあふれた悪ふざけに興じたりする場面は、ああそれやりたくなるよな、みたいな馬鹿らしさに溢れていて楽しい。そのうえ、スーパーヒーローになってしまった少年/なりたいと願う少年には、ヒーローかくあるべしという理想が既に心に装備されているがゆえに、巨悪に立ち向かう筋だてが無理なく導かれている、という気がする。

 巨悪とはいっても、マーク・ストロング演じる悪役は、明らかに主人公と対になるような履歴を背負わされてもいて、親に見放された子供が、どうやって幸福な時間に辿り着けばいいのか、みたいな問いかけが全体を通底してもいる。

 その問いかけに対する回答が、まさしくあのクライマックスの「シャザム!」で、あそこで胸が熱くならないわけがないですよ。「僕たちのアプリボワゼ」ですよ。

 思えば『STAR DRIVER 輝きのタクト』もまた、親に捨てられた少年のお話でもあったわけで、ようやくハリウッドが榎戸洋司氏に追い付いたな、という気持ちですね(?)。とにかく、幸福な子どももそうでない子どもも、十分元気をもらって帰れるすんばらしい映画ではないかと思います。よかったよかった。

 

 

シャザム! :魔法の守護者(THE NEW 52! ) (DC)

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