『ローン・サバイバー』を鑑賞。アフガニスタンでのタリバン幹部暗殺作戦の顛末を描く。『アメリカン・ハッスル』といい、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』といい、今年はなんだか実話モノを見る機会が多い。どれも結構好きなタイプの映画だったんだけれども、この『ローン・サバイバー』も期待にたがわぬ面白さだった。以下で簡単に感想を。
極限状態の追体験
この映画の魅力は、やっぱり孤立無援の極限状況を追体験させられる点にあると思う。その点では、昨年見た『キャプテン・フィリップス』と結構似ている。
『キャプテン・フィリップス』 命の価値は - 宇宙、日本、練馬
とはいえ両者は全然舞台が違うから、魅力のベクトルも異なる。『キャプテン・フィリップス』が閉鎖された空間での駆け引きを描くのに対し、『ローン・サバイバー』は、アフガンでの雄大な、開かれた大地で孤立無援の戦いを描く。『ローン・サバイバー』にはもはや敵味方の駆け引きなどない。圧倒的な数的不利を背負ったネイビーシールズの4人は、無線も通じない絶望的な状況下で、状況に後手後手に対処するしかない。
で、その戦闘状況の見せ方が真に迫っている。主人公たちに徹底的に寄り添い、時にはスコープを覗く視点も借りつつ、戦闘に投げ込まれた人間の感覚を追体験させる。極限状況ではほとんどならない劇伴とは対照的に、けたたましい銃声や爆発音などは絶えず響き渡る。その音響効果の凄まじさたるや、戦場にいるような錯覚さえ覚えるほどである。戦場行ったことないけど。しかも戦闘状況の始まり方もまた、えげつない。行きつく暇さえない。これだけでも、映画館で見てよかったと思った。
加えて時折挿入される空撮の美しさも素晴らしい。アフガニスタンの自然の雄大さを存分に堪能できる。大地の広大さをアピールすることは、主人公たちの孤立無援感を際立たせる意味もあったんだろう。というわけで、映像体験としては本当に満足しました。
プロパガンダの域をでていない気が…?
一方でお話には若干の不満もある。実話をもとにしており、かつ主な登場人物であるシールズ隊員は実名なため、全体的にアメリカ政府のプロパガンダ的な色彩を強く感じる。それはある意味仕方ない。故人に泥を塗るようなまねは趣味が悪い。
でもそこに若干の物足りなさを感じるのも事実で。泥を塗るようなまねをしなくても、もちっとアメリカ軍の素晴らしさ以外のメッセージ性を込めることはできたんじゃないだろうか。『キャプテン・フィリップス』は実話にもかかわらず、アメリカ批判的に読むことが可能だったし、実話モノではないが、『キングダム/見えざる敵』のえげつなさとは比べようもない。
『ゼロ・ダーク・サーティ』 と『キングダム/見えざる敵』 復讐の先にあるものは - 宇宙、日本、練馬
とはいえ、僕が読み切れていないだけかもしれないので、またなんか気付いたら書きます。
アフガン、たった一人の生還 (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ)
- 作者: マーカスラトレル,パトリックロビンソン,高月園子
- 出版社/メーカー: 亜紀書房
- 発売日: 2009/08/29
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 24回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
ブラヴォー・ツー・ゼロ―SAS兵士が語る湾岸戦争の壮絶な記録 (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: アンディマクナブ,Andy McNab,伏見威蕃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2000/10
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 50回
- この商品を含むブログ (20件) を見る