今日、Twitterで改変コピペが出回ってきた。その内容はこんな感じ。
カゲプロ信者
「にわかがアニメを軽いノリで観るのは許せない」
「新参は帰れ」
別の作品のファン
「新参!?みんな、新しい仲間だ!」(的な、新規のファンを歓迎する感じのコメント)
このコピペが作られるきっかけになったのは、カゲプロファンの発言のようだ*1。僕はカゲロウプロジェクトのことは全く知らなかったが、アニメ化の報に触れたファンの、ありふれた反応だなー、ぐらいにしか思わなかった。それが、こうまで戯画化され攻撃されるのはなぜか。それを自分なりに考えてみたい。
カゲプロファンの言動の考察―オタクの象徴的暴力
オタクがにわかファンや新参者に厳しい態度をとる理由について、僕は前に考えたことがある。
「教養主義」の亡霊としての「オタク」―自省のための「オタク」論 - 宇宙、日本、練馬
そこで考えたことを要約すると、オタクは「教養主義」的な発想を持っていて、それが象徴的暴力をふるう要因としてとして機能している、みたいな感じ。カゲプロファンの「新参は帰れ」的な言動は、まさしくこの典型として理解できる。僕はそういう奴らに上の記事で、「にわかオタクとオタクの狭間に立つ謙虚な人間たれ」と主張した*2。
カゲプロファンは中高生が多い、みたいなことをTwitterでみたので、年長者として、彼らが新参を受け入れるような度量と余裕を手に入れるまで、生温かい目で見守っていこうと、そのぐらいの気持ちでいたわけだ。見守るだけじゃなくて、「心せまいね」的なことをチクリと指摘するのもいい。そのぐらいなら、僕も全然理解できる。ところが、ある一定の人たちが、僕の想像していなかった方法で、カゲプロファンを攻撃していたわけである。
コピペ制作者たちの暴力―ねじ曲がった象徴的暴力と自己愛
それが、あのコピペである。その一例を以下で転載させてもらう。『ジョジョの奇妙な冒険』がネタになっているが、別に特段ジョジョファンを攻撃したいわけでないことは、留意いただきたい。
カゲプロ信者
「にわかがアニメを軽いノリで観るのは許せない」
「新参は帰れ」
ジョジョラー
「新しい読者が来たぞ!」
「囲い込め!!1部から徐々に攻めろ!」
「春の3部アニメを録画しろ!」
その頃7部クラスタ
「アニメまだ?」
「超像まだ?」
「キャラヒまだ?」
— 4ろずや@ザワGB12一般 (@4628_yorozuya) 2014, 1月 21
ここに見られるのは、巧妙に捻じ曲げられた象徴的暴力である。カゲプロファンは、排他的で狭量な人たちとして描かれるが、ジョジョファンは、新たなファンを迎え入れる、度量の大きい人間として対置される。
まず、この事実理解は端的に言って誤りであるといって差し支えないだろう。僕自身、アニメ化で周囲に「ジョジョ好き」を公言する人間が増えて正直、ウザいと思ったし、「ジョジョ アニメ にわか」で検索すると、アニメから入った人間を忌み嫌う人間が少なくないことがわかる。コピペの提示する「ジョジョラー」像は、間違いなく嘘っぱちなのである。薄気味の悪い自己愛に溢れた虚像だ。新たなファンを歓迎する気持はあるにはあったろう。だがそれだけをピックアップして「ジョジョラー」の典型例としてカゲプロファンと対置するのは、どう考えてもフェアではない。加えて転載したコピペでは、最後に全く文脈から外れた「7部クラスタ」の言葉をさしはさむことによって、その暴力を隠蔽しようとさえしている*3。
新参者に嫌悪感を抱くこともあり、でもファンが増えて嬉しくもある。そんな微妙な心情こそ、ファンの心理なのだ。それを意識的にせよ無意識的にせよ歪曲して、カゲプロファンを攻撃する。その構造が、このコピペには存在する。それが、僕にはたまらなく気持ちの悪いものに感じられるのだ。
結論:みんなおとなになれ
そんな感じのことを今回感じたわけだが、一部のカゲプロファンと。それを貶める他作品のファン、どちらにも「おとなになれよ((笑))」と言いたい。カゲプロファン(の一部)は、自分が新参者にふるっている象徴的暴力に自覚的になるべきだ。新参者がいたっていいじゃない。新しいファンが増えるのは、いいことばかりじゃないけど、悪いことばかりでもない。中高生だったとしたら、多分年をかさねたらそういうことが分かってくるんじゃないか。
他作品のファンも、カゲプロファンの中高生をいじめてゆがんだ作品愛を開陳するのはやめて、自分が新参者だったころの気持ちを思い出したほうがいいんじゃないの。そうすれば、いびつな自己認識もちょっとはましになるでしょう。そういう意味で、もうちょっとおとなになってほしいですね。
こういった構図は、多分カゲプロの周辺だけじゃなくて、主に中高生が受容している作品の周辺ならば、普遍的にみられる事なんじゃないかと思う。それを見かけたら、またこういう記事を書こう。
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