はい、10月はあっという間でした。これ毎月書いてる気がする。今月は特にバタバタしていた気がして、それがこのブログの更新頻度を見てもわかろうというものです、というか改めて気付きました、自分でも。映画も全然見れなかったしアニメの録画もたまる一方で、どうにか上手く時間を使っていかないと、という感じですね。
先月読んだ本はこちら。
印象に残った本
最も印象に残った本は重田園江『ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む 』。フーコーの解説書というよりは『監獄の誕生』の読解の本なんですが、もうね、「本を読む」とはこういうことかと。プロの読みとはこういうことかと打ちのめされることしきり。大変勉強になりました。
読んだ本のまとめ
2014年10月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:5441ページ
天皇とアメリカというタームを軸にして、近現代の日本の在り方を語る。明治維新から戦前まで、戦後、そして現在と大きく三章に分かれており、近代化の問題から占領、アジアへの植民地支配、そしてオバマ政権まで様々な論点を縦横に触れられる。アメリカによる占領はむしろ天皇制を巧妙に利用し、日本を従属させ、またそうしたアメリカとの深い関わりによって、中国などアジアとの接触が断たれ、現在に至るまでの歴史認識の断絶が引き起こされたという構図が大きな枠としてはあるのかなあという印象。
女性天皇をめぐる議論の忘却に象徴されるような、語りのタブーの問題が印象的。戦後の日本において、そうしたタブーが言論を抑圧してきたとし、現在は「天皇」なしの社会がもはや想像すらできないのではないかと指摘する。そうした状況に対して、少しずつでも想像力を働かせることが可能な方向へと進んでいくことが望ましい、的な展望を提示している。
読了日:10月1日 著者:吉見俊哉,テッサ・モーリス・スズキ
http://bookmeter.com/cmt/41612255
■テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ (星海社新書)
「日本のマンガをめぐる言説は、「マンガの現在」を語り得ていない」という問題意識から出発し、その理由を探ることでマンガ表現史の在り方を提示する。言説が機能不全に陥っている要因として、手塚治虫を戦後マンガ表現の常に絶対の起源とするようなある種の神話、「手塚治虫という円環」の存在を指摘。その神話が隠蔽してきた「キャラ」そのものの自律性が、近年になって前面化したことによって、手塚から始まる近代的リアリズムの発展史の枠組みではもはやマンガ表現史を記述できないことが明らかとなった。
最終的に手塚治虫神話の乗り越えに議論が着地するので、そこにばっかり視点がいった感想になってしまったけれども、マンガを語る方法論への言及や、キャラとキャラクターの弁別など個別の議論も面白かった。特に作品を語る際の次元(環境から作者、作品、ジャンル、読者など)の整理、それをいかに批評に結びつけていくのかという批評理論的な解説はなるほどという感じ。これが新書で読めるということに感謝の正拳突きをしたくなる一冊。
読了日:10月2日 著者:伊藤剛
http://bookmeter.com/cmt/41646604
■幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)
地球外生命体オーヴァーロードとの邂逅と、人類の終焉と進化。大筋は知ってはいたけれど、それでも面白く読めたのは、異星人と接触する人類たちの行動の迫真性、未来のユートピア描写のディテールの豊かさ、そして進化に取り残された人類と進化の袋小路に辿り着いてしまったオーヴァーロードの悲哀のドラマが胸を打つからだと思う。理解の範疇を超える存在と相対して、終わることしかできなかった人類と、それでも取り残された種としてその生を生き続けるしかないオーヴァーロード、それぞれの悲劇が心に残る。
『アルドノア・ゼロ』の1期最終話のタイトルに引用されていたのをきっかけに読んだ。ファーストコンタクトものってこれを意識せざるを得ないような、マスターピース的な作品なんだろうなーと感じたりしました。
読了日:10月3日 著者:アーサー・C・クラーク
http://bookmeter.com/cmt/41677010
- 作者: フィリップ・K・ディック,土井宏明(ポジトロン),浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1984/07/31
- メディア: 文庫
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■高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)
日本とドイツが第二次世界大戦に勝利した世界では、「日本とドイツが敗北した世界」を描く歴史小説が流行していた。という設定に惹かれて読み始めたが、その歴史小説をめぐる隠謀よりは、植民地化されたアメリカにおける群像劇として面白く読んだ。アメリカの遺物を好んで蒐集する日本人、それにおもねるアメリカ人、しかしそれでも創造的な芸術品を生み出さんとする職人…。単なる商売人だった男が芸術のために一世一代の啖呵を切る場面が一番印象に残っている。その契機がむしろ日本人の傲慢によってもたらされたという皮肉も。
尻切れトンボっぽい終わり方もむしろ味があっていいなと思った。でもその後の日本の命運とか気になっちゃうよね、やっぱり。タンポポ作戦の帰趨はいかに。
読了日:10月5日 著者:フィリップ・K・ディック
http://bookmeter.com/cmt/41749617
9・11からイラク戦争勃発までの時期の時評。大塚は戦時下にあってそれに対して「ことば」を発するべき「文学」や「批評」が「ことば」を失っているという現状に対して苛立ち、その態度を攻撃し、「戦争をすること」「人を殺すこと」が間違っていると思っているなら、誰しも「ことば」を発しなければならないのだ、と強く主張する。流石に10年前の議論なので古びていると感じる部分もあるが、なしくずし的に戦争へと歩を進めているような現在の状況だからこそ、振り返って読む価値のある論考でもある、と思う。
ただ、憲法解釈の変更によって大塚の拠って立つ戦後民主主義の立場はいよいよ脱臼してしまったのかなという感じも。今反戦を叫ぶ論拠としての平和憲法にどれほど説得力があるのかなあ。それは当時もそれほど変わらない気もするけど、より弱くなってる気もする。
読了日:10月7日 著者:大塚英志
http://bookmeter.com/cmt/41792466
- 作者: うえお久光,綱島志朗
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2009/07/10
- メディア: 文庫
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特殊な認識能力を持つ少女と、彼女を待ち受ける悲劇。三千世界を駆け巡り、全てを、「わたし」さえも捨てて彼女の悲劇を回避しようとした主人公の孤独な戦いの行き着く先。結局、絶対的な他者の「わからなさ」に気づき、受け入れ、むしろ肯定しさえすることが、主人公の孤独を救済し、オープンエンドな未来を開いたのだと思った。他者を含めたあらゆることを理解し制御できると思い上がった主人公の傲慢こそが、むしろヒロインを殺し続けてもいたという皮肉をつけつけることで、「わからない」現在を肯定することの素晴らしさを高らかに叫んでいたと感じた。
まどマギ以前の物語とは思えないほど、まどマギとリンクしているように思えた。自分にとって、まどマギという作品がこの作品を参照するための一種の色眼鏡になってしまっていたのかもしれないけど。まどマギ以前にまどマギはすでに乗り越えられていた、なんてことを言いたくなった。
「わからなさ」が未来を拓く―うえお久光『紫色のクオリア』感想 - 宇宙、日本、練馬
読了日:10月8日 著者:うえお久光
http://bookmeter.com/cmt/41813114
ソシュールを起点にした、構造主義言語学についての概説書。ソシュールはもちろん、プラハ学派やらコペンハーゲン学派、バンベニスとやらマルキネなどの諸説が簡潔に整理されている。コトバの普遍的な性質を解明しようとしたソシュールと、彼の問題設定を継承した構造主義言語学者を貫く、科学性を志向する方法的態度。それが現在の言語学では忘れられているのではないか、と著者は疑義を呈する。マルキネの唱えた言語の「経済性」の原理などは面白かったが、眠い頭で読んだため大部分ざっくりとすら理解できてない感。またあとで見直す。
読了日:10月9日 著者:町田健
http://bookmeter.com/cmt/41857354
■国語教科書の中の「日本」 (ちくま新書)
小学校、中学校で使用されている国語教科書の持つ、「語られていないが、そのようにしか読むことのできないようなメッセージ」を暴く。実際にテクストを取り上げて読解し、「古き良きもの」に親しむこと、自然を内面化することなどの道徳的メッセージがいかに表層にあらわれているかを指摘し、国語教育のもつ、意識されにくいイデオロギー性を具体的に提示。最終的には、国語教育は学校空間における「道徳のおしつけ」であり、個性の抑圧でもあることを批判し、それを乗り越えるためにテクスト論を踏まえた読解を教えることの提案に着地する。
著者は特に小学校の教師に対して、「深い哲学的素養が求められている」とするが、それには大いに同意。国語教科書という素材をもとに、いかに何事かを教えるのか。教えるという営為に「限界」は あるにせよ、そのなかで児童の自由というか、可能性が奪われるような悲劇を避ける努力はなされるべきだと思う。国語教育に携わる人が深い哲学的素養や鋭い感受性を備えていることは、そのための必要条件であると思った。
隠れたカリキュラムについての本だよなー、結局のところ。
読了日:10月10日 著者:石原千秋
http://bookmeter.com/cmt/41865922
新版 論文の教室―レポートから卒論まで (NHKブックス No.1194)
- 作者: 戸田山和久
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/08/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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■新版 論文の教室―レポートから卒論まで (NHKブックス No.1194)
架空の学生が立派な論文を書き上げるまでのストーリーによって、その基となるアイデアを捻り出す段階からレポートを書き上げるまでに必要なことをユーモラスに語る。ハウツーものである以前に読み物して単純に面白かった。教員の目線から、学生が犯しがちなミスや読みづらい文章についての指摘がふんだんにあって、なるほどと思うことしきり。また論理的とされる論証のテクニックなども触れられていて、著者の専門というか、色が出ているのかなという感じ。
レポートを書くというのは自分を高めるための手段なんだから、辞書を引いて難しい言葉も使うべきだ、という主張が印象的。難しい言葉は使わず平易な言葉で的な発想はすくなくとも論文やレポートでは違うんだと。そして読みづらい文章は、難しい言葉を使っているのではなく構造を見通しづらい文章である、という主張にも納得。それとやっぱり短文の積み重ねの方が未熟者には適切なんだと再確認。読み物としても面白かったしいい本だと思います。
読了日:10月12日 著者:戸田山和久
http://bookmeter.com/cmt/41924516
■カルチュラル・スタディーズ (思考のフロンティア)
広義のカルチュラル・スタディーズを扱うのではなく、イギリスにおけるカルチュラル・スタディーズの研究史を概観する。二度の世界大戦を経て、新たな文化が大衆に浸透していくなかで生じた問題関心から、文化状況のなかへと入りこみ、その中から問いを発していくような研究潮流が生じた。そのような前提条件から生じた文化を対象とする研究が、記号論、精神分析的な構造分析から、場のエスノグラフィックな分析へ転換し、さらにグローバルな状況までも問題化していった、というのが大きな見取り図だろうか。
スチュアート・ホールをはじめとして代表的な論者の研究がコンパクトに整理されているのだが、それぞれの記述が濃密すぎて、正直理解しきれていない感。代表的な研究者の主張をある程度把握した人間が、それらの位置付けや大きな全体像を捉えるために「使う」のがこの本の「正しい使い方」であるという気がする。唯一読んだことのあった、ポール・E. ウィリス『ハマータウンの野郎ども』の意義などの解説はすっと入ってきた感じがあるので尚更そう思う。というわけで僕に使いこなすにはちょっとハードルが高かった。
読了日:10月15日 著者:吉見俊哉
http://bookmeter.com/cmt/42028115
里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷浩介,NHK広島取材班
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2013/07/10
- メディア: 新書
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■里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
今まで無駄だと思われていたものを活用し、地域である程度自立した経済を打ち立てる「里山資本主義」を軸に、未来の社会の在り方を構想する。NHKが取材した中国地方の具体的な実践を伝えるルポと、それに分析的な解説を加える藻谷氏の論考からなるが、地方における実践とそれに携わる人たちの「楽しさ」が伝わってくる文章は流石ジャーナリストという感じ。中国地方からオーストリア、はては日本経済を牽引する大企業まで「里山資本主義」的な社会設計に可能性を見出している、というような構成はあざとい気もするが。
藻谷氏のマネー資本主義批判と、その対抗として、もしくは資本主義社会を補完するサブシステムとしての里山資本主義、みたいな論調は経済に疎い自分なんかは簡単に説得されてしまうけど、どの程度妥当なんだろうか。この本が予言の書となるか、それともユートピアニズムに堕してしまうのか。それは多分、「里山」での実践が時を経てその新鮮味を失ったりだとか、実践を中心となって引っ張ってきた人物がいなくなってしまったときにこそ試されるんだろう。
僕はそれに関しては結構悲観的で、もはやその生活が当たり前のものになって、中心人物も消えて空気が淀んできたときに、それに惹かれて里山に集った人たちはその停滞した空気に耐えられないんじゃないかなー、なんて。
読了日:10月16日 著者:藻谷浩介,NHK広島取材班
http://bookmeter.com/cmt/42051048
文章の書き方を指南する「文章読本」の歴史を紐解き、その内包するイデオロギーを暴き出す。谷崎潤一郎から清水幾太郎、井上ひさしら代表的な文章読本の書き手が議論に上がるだけでなく、その前史ともいえる作文教育の延長上にそれらの「文章読本」を位置づける。権威ある書き手の「名文」を特権化し、一般人の文章を「駄文」に貶める、文章読本のイデオロギー性。それを打破するために、著者は「文章は服である」という命題をぶちあげる。それぞれの文章読本批判の切れ味もさることながら、この結論がめちゃくちゃイカしてる。カメレオンの如き変幻自在の文体といい、読んでいて楽しい本だった。
読了日:10月18日 著者:斎藤美奈子
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■武器としての決断思考 (星海社新書)
ディベートの方法を概説し、それを日常的に用いることを提案する。それほど新鮮な感じはしなかったけれども、あっさり読めて練習問題もあるしなんとなく「決断思考」を身につけた気になれる。加えてディベートにおける思考の流れを丁寧に、かつ簡明に跡付けているように思えるしいい本だと感じる一方、読んだだけでは…とも。この手の思考法の本は、読むことに効用があるというよりは如何に日常的なものとして咀嚼して実践できるかですよね。当たり前だけど。
読了日:10月19日 著者:瀧本哲史
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■二〇世紀の歴史 (岩波新書)
帝国主義の時代が始まった1870年代から、その植民地支配が解体される1990年頃までを「長い20世紀」と定義し、その中で展開された帝国主義国と植民地の支配・被支配の関係性を軸に通史を提示する。その問題意識からも想起されるように、本書の提示する20世紀の歴史は血と暴力で彩られ、帝国主義の陰惨な側面を十二分に理解できる。加えて、植民地支配に対しての抵抗の動きの紆余曲折や、それに対する帝国側の行動などに大きく紙幅が割かれていた印象。帝国主義の時代としての20世紀の大きな見取り図を得られた気になった。
読了日:10月21日 著者:木畑洋一
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■ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む (ちくま新書)
『監獄の誕生』を中心として、フーコーの思想を読み解く。とにかく『監獄の誕生』の読解が中心で、読む前にこの本を読んでいたらだいぶスムーズに読めたような気もするし、しかし『監獄の誕生』を読了していたからこそこの本の内容もすっと理解できたのかなという気もする。『監獄の誕生』という大著を、本文はもとよりフーコーの他の論考を参照するのはもちろん、対象とする時代背景も簡潔に補足し、丸山眞男やシュミットやら他の思想家と関連付けて読解していく手際に、そして何より著者のフーコーへの愛に打ちのめされた。
『監獄の誕生』は規律に関する本ではない!やフーコーの性的嗜好やパーソナリティと彼の思想を結びつけることへの批判など、既存の読解への疑義申し立てが印象的だった。それと監獄情報グループでの実践が詳しく紹介されていてなるほどなと感じた。
以前書いたこの文章が恥ずかしくなってしょうがなかった。これをネットに公開するとか恥知らずもいいところだということに気付かなかったかつての自分に乾杯。
ミシェル・フーコー『監獄の誕生』を読む 前編 - 宇宙、日本、練馬
読了日:10月25日 著者:重田園江
http://bookmeter.com/cmt/42268524
アメリカを動かす思想─プラグマティズム入門 (講談社現代新書)
- 作者: 小川仁志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/10/18
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■アメリカを動かす思想─プラグマティズム入門 (講談社現代新書)
プラグマティズムという視点から、現代アメリカの問題を捉え、そしてプラグマティズムの更新を通したイノベーションの可能性を提示する。著者はプラグマティズムをアメリカ社会における下部構造と捉え、それを基点にして上部構造たるリベラリズムやデモクラシー、キャピタリズムなどの政治思想、そして具体的な実践であるティーパーティーや政治の対立を解釈していく。プラグマティズムに関する概説は正直ざっくりとし過ぎの感があって物足りなかったが、プラグマティズムを軸にしたアメリカ論としては面白く読めた。
後半で展開されたイノベーション論については正直ついていけなかったしついていこうとも思えないほどの空中戦が展開されていた感じも。全体として簡潔かつ平明にまとまってはいるけれども、なんとなくあっさりし過ぎ、単純化し過ぎでは?とも感じた。また言葉の選び方もかなり不用意な印象。プラグマティズムは「アメリカのDNA」という言い方は比喩だとはわかっていてもどうにも違和を感じる。アカデミック畑の人っぽくない文章だな、と感じることしきり。
読了日:10月25日 著者:小川仁志
http://bookmeter.com/cmt/42273187
ツチヤ教授の哲学ゼミ―もしもソクラテスに口説かれたら (文春文庫)
- 作者: 土屋賢二
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/08/04
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■ツチヤ教授の哲学ゼミ―もしもソクラテスに口説かれたら (文春文庫)
「私は身体というあなたの持ち物でなく、あなた自身を愛している」というソクラテスの口説き文句の検討を通して、哲学的な問いへの道をひらく。ツチヤ教授自身は基本的にソクラテスの立場に立って、口説き文句への学生の疑問に反論するような形で対話が進む。ソクラテスの論理には穴があるのは自明に思われるけれども、しかし反論するのは意外に難しいというのが全体としての結論というか、到達点だろうか。面白く読んだけれども「哲学講義」ほどの満足感が得られなかったのは、僕があんまり哲学向きの人間じゃないからか。
読了日:10月26日 著者:土屋賢二
http://bookmeter.com/cmt/42309234
■バタイユ入門 (ちくま新書)
バタイユの思想をその生涯に沿って概説する。歳月を重ねて変化するバタイユの思想を、時代順に叙述しているので伝記っぽい印象も受ける。バタイユはニーチェと同様、西欧的なものの強烈な批判者であり、ニーチェの乗り越えというか、彼とは違う形で西欧批判を試みた、という筋くらいしか頭に残ってないきがする。しかし、神秘主義的なスタイルから論理的叙述へ、というバタイユの思想の変遷を把握できたことは彼の著作を読みはじめる上で参考になったかなあ。内容が頭に入ってないのは冒頭の挿話が強烈だったからかも。
読了日:10月27日 著者:酒井健
http://bookmeter.com/cmt/42334585
文明の内なる衝突---9.11、そして3.11へ (河出文庫)
- 作者: 大澤真幸
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/08/05
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■文明の内なる衝突---9.11、そして3.11へ (河出文庫)
9・11に端を発する対テロ戦争、先進国とイスラム原理主義者との対立を分析し、それを解消するためには「赦し」が必要であると説く。先進国とイスラムとの対立は外的な他者との、普遍性を賭けた衝突というだけでなく、それぞれの文明にとって内的でもあるのだ、というのが議論の中核。それを軸にして資本主義とイスラムとを、哲学者やら思想家やらを縦横に引用して分析する手際はいつものように見事で、読んでいてスリリングで面白かった。とはいえ相手を贖いの前に赦すことが肝要である、という結論はどうにも。
文庫化に際して付された、東日本大震災を主題にした論考は本文と独立しているような印象。こちらも主張はもっともだと思うのだけれども…的な読後感だった。
読了日:10月29日 著者:大澤真幸
http://bookmeter.com/cmt/42374969