宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2017年10月に読んだ本と近況

ぎりぎり生きている。

先月のはこちら。

2017年9月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

 印象に残った本

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 

日の名残り』、よかったです。 

読んだ本のまとめ

2017年10月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:4266ページ
ナイス数:195ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly

 

 ■ほしのこ
 社会の周縁に生きる子どもの視点で、世界を眺め、語る。主体と客体とが溶け合う独特の語りが何よりの魅力なのかなという気がして、その語りを通して「ほしのこ」から眺められた世界を立ち上げている。
読了日:10月02日 著者:山下 澄人
https://bookmeter.com/books/12107299

 

岩崎調べる学習新書 (1) マンガの歴史 1

岩崎調べる学習新書 (1) マンガの歴史 1

 

 ■岩崎調べる学習新書 (1) マンガの歴史 1
 マンガの歴史を平易に叙述する。記述が厚いのは戦後だけれど、それ以前の流れも抑えてある。この巻で取り扱われるのは60年代半ばまでなのだが、伊藤剛が『テヅカ・イズ・デッド』のなかで批判した「新宝島」神話を再生産しているような雰囲気があるのはどうなんだろうなと感じた。それはそれとして面白く読んだので、続刊を楽しみに待ちたいと思います。
読了日:10月03日 著者:みなもと 太郎
https://bookmeter.com/books/12119982

 

ゲームの王国 下

ゲームの王国 下

 

 ■ゲームの王国 下
 上巻から一転、舞台は至近未来のカンボジアへ。政治の世界で「ゲームの王国」の実現を目指すソリヤと、彼女と戦うため脳科学の研究に没頭するムイタック。かつて束の間の邂逅を果たした二人の道は、最後の最後で再び同じ場所に辿り着く。異様な緊張感漂うクメールルージュ支配下のサバイバルから、落ち着いたトーンのサイエンスフィクションへと大きく雰囲気を変化させてなお、求心力を失わずに物語を語り切った筆力に唸る。おもしろかったです。
読了日:10月04日 著者:小川 哲

 

amberfeb.hatenablog.com

 https://bookmeter.com/books/12193480

 

震災と鉄道 (朝日新書)

震災と鉄道 (朝日新書)

 

 ■震災と鉄道 (朝日新書)
 東日本大震災後に書かれた鉄道エッセイ。被災地の路線の様子などを描写しつつ、JR東日本はじめとするJR各社が利益優先で鉄道のもつ公益性、公共性をないがしろにしていることを強く批判する。ローカル線を打ち捨てて新幹線などの高速鉄道を優先することが沿線住民の利益にならないこと、また日本の鉄道の素晴らしさ対する無邪気な信仰を指摘したりと、話題は震災にとどまらず多岐にわたる。
読了日:10月06日 著者:原 武史
https://bookmeter.com/books/4244522

 

プルーストを読む―『失われた時を求めて』の世界 (集英社新書)

プルーストを読む―『失われた時を求めて』の世界 (集英社新書)

 

 ■プルーストを読む―『失われた時を求めて』の世界 (集英社新書)
 『失われた時を求めて』への道案内。貴族的なるものとブルジョワ的なるものとの対立、スノッブユダヤ人、同性愛、そして芸術論と、テーマごとに章立てされ読解が披露される。改めて、自分がこの小説から取り出せたものってほんのわずかだったのだなと気付かされ、大変勉強になりました。巻末の年譜も便利。
読了日:10月06日 著者:鈴木 道彦
https://bookmeter.com/books/17974

 

プルーストの世界を読む (岩波セミナーブックス 92)

プルーストの世界を読む (岩波セミナーブックス 92)

 

 ■プルーストの世界を読む (岩波人文書セレクション)
 『失われた時を求めて』を、冒頭の「コンブレー」を取り上げて読み解いていく。鈴木『プルーストを読む』が、補助線を引いて全体を見渡すような語りだったのに対して、本書は執拗に細部へと没入していくような感があり、意図せず(かどうかは知りようがないが)対照的な入門書になっている。比喩のもつ意味、緻密な構成の妙など、教えられることは大変多かった。
読了日:10月09日 著者:吉川 一義
https://bookmeter.com/books/8619248

 

日本のテロ:爆弾の時代 60s-70s

日本のテロ:爆弾の時代 60s-70s

 

 ■日本のテロ:爆弾の時代 60s-70s
 60年代から70年代にかけての社会運動を概説したパンフレット。人物紹介のコラムとブックガイドが付されている。特に印象的だったのが、全共闘で大学を追われた人たちの受け皿として出版業界が機能していた、ということ。本書もおそらくその水脈のうえに書かれた書物だと推察するが、運動自体は潰えてもその空気みたいなものは社会のなかで息づいていったのだなと。
読了日:10月10日 著者:
https://bookmeter.com/books/12141422

 

ドゥルーズキーワード89

ドゥルーズキーワード89

 

 ■ドゥルーズキーワード89
 ドゥルーズ哲学のキーワードを解説する趣旨の本でレファレンスにめちゃくちゃ役立つ本なのだけれど、そのなかに『プルーストシーニュ』の梗概的なテクスト、「「失われた時を求めて」の統一性」が付されている。作中に出現する「記号」を腑分けして論じ、そのなかでも芸術の記号に極めて特権的な地位を与える読解。ドゥルーズの言ってることはほとんどわからんのだけれど、そういう目線で読み返すとまた違うのかなあという感じはしました。いずれ再読しましょう。おかわりさんに感謝。
読了日:10月10日 著者:芳川 泰久,堀 千晶
https://bookmeter.com/books/9683197

 

 ■ハイ・ライズ (創元SF文庫)
 ロンドン郊外、隔絶された高層マンションで階級闘争とカオスが現出する。高層マンションというものがありふれたいまになってなお、日常が次第に変質してゆき廃墟が立ち現れていく描写はぐいぐい読ませる。なんというかそういう退廃的な美と混沌の魅力に満ち溢れているなと。ひらろろさんに感謝。
読了日:10月12日 著者:J・G・バラード
https://bookmeter.com/books/11053180

 

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

 

 ■アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
 どうしても『ブレードランナー』との差分に目がいってしまうのだけれど、デッカードの小市民然とした佇まいと思考とが、なんというか感情移入しやすい感触があった。偽の警察本部に連行されるくだりの現実と虚構とが混ざり合う感覚がかなりよくて、『高い城の男』もそういうセクションが強く印象に残っていたことを思い出す。
読了日:10月16日 著者:フィリップ・K・ディック

 https://bookmeter.com/books/577666

 

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

 

 ■わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
 孤児院らしき施設で、ありふれた暮らしを送る三人。彼らに課された運命が、次第に輪郭を露わにしてゆく。淡々としたありふれた生活の由無し事の積み重ねによって、登場人物に確かな生の鼓動を感じさせ、彼女たちの運命が他人事ではなくなってしまう、そうした極めて巧妙な語りの手口に唸る。だからこそ、善意の人が、善意の人であるにもかかわらず徹底的に他人事としてしか彼女たちの運命を語ることのできないことのギャップに愕然とし、打ちのめされる。
読了日:10月19日 著者:カズオ・イシグロ
https://bookmeter.com/books/545086

 

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 

 ■日の名残り (ハヤカワepi文庫)
 老執事が回顧する、在りし日の屋敷。今は亡き主人が外交のために手腕を振るい、自身はそのために身を粉にして働いた、そうした日々の結末が、旅程が終わりに近づくにつれ次第に輪郭をあらわにする。よかれと思ってやったことが物事をよい方向に導くとは限らず、日々の失敗によって人生は成形されてゆくのだなと思い知らされるのだけれど、そのありようを肯定し、終わりゆく世界そのものを享受せよといわんばかりの結末に心動かされた。
読了日:10月22日 著者:カズオ イシグロ
https://bookmeter.com/books/567297

 

 

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

 

 ■未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)
 ICカード関係の会社に勤務する男が、知らず知らずのうちに陰謀に巻き込まれ、『マクベス』に導かれて運命の女を探す。シェイクスピアの書いた筋書きをなぞり、あるいは逸脱し、次第に暗闇のなかに身を沈めていく語り手のドラマに夢中になって読み進めた。会社の出世争いなんかの機微というかディテールがなんとなく印象に残っていて、それが突飛な冒険小説的な道具立にもかかわらずそう感じさせない迫真性を作品に与えているような気がする。
読了日:10月25日 著者:早瀬 耕
https://bookmeter.com/books/12290338

 

知のスクランブル: 文理的思考の挑戦 (ちくま新書 1239)

知のスクランブル: 文理的思考の挑戦 (ちくま新書 1239)

 

 ■知のスクランブル: 文理的思考の挑戦 (ちくま新書 1239)
 日大の文理学部の教員が、それぞれの専門分野について短い文章を寄稿。永井均がいつもどおり手加減抜きで自身の問題意識を記述し、「存在の孤独な祝祭」の驚異について書かれた冒頭の一編がとりわけ印象に残る。
読了日:10月31日 著者:永井 均,古川 隆久,佐藤 至子,三澤 真美恵,マイルズ・チルトン,初見 基,久保田 裕之,金子 絵里乃,広田 照幸,青山 清英,菊島 勝也,矢ケ﨑 典隆,安井 真也,市原 一裕,尾崎 知伸,十代 健,間瀬 啓介,大﨑 愛弓
https://bookmeter.com/books/11463060


読書メーター
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近況

響け、まだ見ぬ彼方に――『劇場版 響け!ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜』感想 - 宇宙、日本、練馬

老いとヒロイズム――『アウトレイジ 最終章』感想 - 宇宙、日本、練馬

侵されてゆく日常――『Fate/stay night [Heaven's Feel] I.presage flower』感想 - 宇宙、日本、練馬

人の造りし絶望と奇跡――『ブレードランナー 2049』感想 - 宇宙、日本、練馬

こんな感じです。

 

amberfeb.hatenablog.com