『天気の子』の舞台のモデルとなったところに足を運びました。網羅的ではまったくなく、ほんのさわりのさわりぐらいの感じではありますが、歩いてみて思ったことを適当に書き留めておきます。なお、作品の核心にかかわるネタバレが含まれますのでご注意ください。
今日の朝は雨模様でしたが、国立近代美術館の高畑勲展に行ってるあいだに止んでくれてました。ありがたいといえばありがたいとはいえ、雨降っててもよかったのになという気持ちはなきにしもあらず。
まずヒロインの天野陽菜のアパートの最寄り駅として登場する田端駅へ。
南口から出るとちょうど台地の縁に出るようなかたちになっている。『君の名は。』のラストの空気をなんとなく喚起する階段なんかも南口すぐ近くにある。
あのラストの坂も南口を出てすぐ。
作品の画面のなかから推察されるように、ちょうど山の手と下町の境界になっている。
海面上昇した際にどのあたりまで水没するのか教えてくれるサイトFlood Maps(http://flood.firetree.net/)なんかをみてみると、13メートル海面上昇した場合、このくらいの範囲が水没するそうだ。荒川・江戸川近辺が見事におしまいになっている。
で、この田端駅南口あたりがちょうど海と陸との境界になっているわけです。あの変貌した世界を映すためのロケーションとして、逆算して彼女の住所は決められたのだなあと。
おそらく線路なんかとの位置関係を考えていけば、アパート自体の位置(おそらく現実にはアパートなんて建ってないんじゃないかとは思うのだけれど)もおおよそのあたりはつけられる気がするのですが、記憶も曖昧なので適当に切り上げて代々木へ。
代々木駅にはこんな感じでプロモーションが。
駅を出てすぐの代々木会館には、おそらく同様の目的で写真をとっているみなさまが割合たくさんおられました。
8月に取り壊されるこの建物は、『天気の子』の東京がいかなる運命にあるかを象徴的に表しているのかもしれません。むしろ、9月以降にこの映画を始めてみる未来の観客にとってこそ、強烈な意味をもつのかも、とも。新海は『言の葉の庭』の趣意書のなかで、「十年後にはなくなっているかもしれない」場所、そういう場所としての我々の現在こそが『言の葉の庭』をつくらせたのだと語っていた。変わりゆく東京というモチーフは新海のなかに以前からあって、それが一気に前景化したのが『天気の子』であるといえるのかもしれません。
『言の葉の庭』といえば、代々木会館をおさめてこういう構図で写真が撮れてえらいびっくりしました。新海誠が伝えたかったのはこれか!と『劇パト』の松井刑事ばりの興奮が訪れる。
その後、新宿へ。すでにいろいろな人が異口同音に語っているように、かつての新海誠の東京にはなかったある種の猥雑さが、『天気の子』では導入されているなと強く思う。かつて、新海誠の東京には歌舞伎町はなかったし、ネカフェ難民もいなかった。マクドナルドもなかったかもしれない。
しかしバニラトラック(下の画像はイメージです(バニラかと思って横向いたらおたくトラックだったので写真撮ったやつ。))まで走らせたのは、とにかく東京のいまを切り取ろうという強い意志を感じました。この走る猥雑みたいな存在、『君の名は。』の公開のころはあったんでしたっけ?それすら記憶があいまいです。
違法っぽい就労が行われたっぽいマクドナルド。
そういえば戒厳令下(戒厳令下ではない)の雪ふる東京って完全にパト2ですよね。