梅雨。体調は安定の低空飛行。現実逃避のため濫読。はやく最高の夏がきてほしい。
先月のはこちら。
印象に残った本
- 作者: ピエール・バイヤール,大浦康介
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/11/27
- メディア: 単行本
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1冊選ぶとしたらピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法 』。悪しき教養主義者に殴られそうになったときに逆にカウンターを食らわせられるだけの勇気をくれる。カウンターがクリティカルにヒットするかは定かでない。
他にもいろいろ面白い本出会えました。コールハース氏のおかげで建築に興味をもち、UFOの日のおかげでラノベ体験が豊かになった。イェイ!
建築家たちの求めた約束の土地―レム・コールハース/ハンス・ウルリッヒ・オブリスト『プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る…』感想 - 宇宙、日本、練馬
幸福という免罪符―秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』感想 - 宇宙、日本、練馬
読んだ本のまとめ
2015年6月の読書メーター
読んだ本の数:35冊
読んだページ数:10187ページ
科学哲学者 柏木達彦の多忙な夏 科学がわかる哲学入門 (角川ソフィア文庫)
- 作者: 冨田恭彦
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2009/06/25
- メディア: 文庫
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■科学哲学者 柏木達彦の多忙な夏 科学がわかる哲学入門 (角川ソフィア文庫)
小説形式の科学哲学入門。学生と教授の応答を通してパラダイムや解釈学的循環、観察の理論負荷性などの話題が簡潔に、かつわかりやすい具体例をあげて論じられていて、なんとなく科学哲学的な議論に触れた気になれた。最終的にはローティの議論にたどり着き、客観性か連帯か、傍観者か当事者か、という問いが投げかけられる。ローティの姿勢は解説を通してしか知らないが、なんとなくそれが一番適切なんじゃないかなあと触れるたびに思い、またその思いを強くした。
読了日:6月1日 著者:冨田恭彦
http://bookmeter.com/cmt/47735210
- 作者: レムコールハース,ハンスウルリッヒオブリスト,太田佳代子,ジェームスウェストコット,イルマブーム
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2012/02/25
- メディア: 大型本
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■プロジェクト・ジャパン メタボリズムは語る
戦後直後、荒廃した日本の国土は建築家たちにとっては白いキャンバスだった。そこから出発した前衛運動、メタボリズム。その栄光と消滅の軌跡を、関係者たちへのインタビューを中心に無数の資料を引用して跡づける。写真や図版、当時の雑誌記事などをふんだんに使って語られるそれは、創造の夢にかけた人々の物語であり、またひとつの戦後史の素描でもあり、建築というものの意味変容を辿る試みでもある。情報量は極めて膨大で一読しただけでその全容をとらえられたとは言い難いが、戦後を生きた人々の記憶が胸に刻みこまれたような、そんな読後感。
読了日:6月2日 著者:レム・コールハース,ハンス・ウルリッヒ・オブリスト
http://bookmeter.com/cmt/47739462
■階級社会 (講談社選書メチエ)
「階級」という分析概念を通して、日本社会における格差や貧困の問題を捉えようとする試み。階級は分析概念ではあるけれども、現実において明確な対応物をもつものとして設定されており、それを通してみる日本社会の様相は確かに「階級社会」とも言い得るものだな、と豊富なデータによって説得される。ただ現在ではそうした問題を主題化する語彙は「ブラック企業」という具体物に移っているのかなあ、という感じ。具体性をもったがゆえに社会の構造は見落とされてもいるような気がするので、「階級」という語彙も意味はあると感じた。
読了日:6月2日 著者:橋本健二
http://bookmeter.com/cmt/47759483
■歴史家が見る現代世界 (講談社現代新書)
「現代」の起点をどこに置くかは、歴史家のみならず、今を生きる人々すべてにとって意味のある問いであろう。それは、その見立てによって何を現代社会を特徴づける現象とみなすか、という認識が否応なしに表れるからだ。著者は所謂グローバリゼーションの進展をその大きな特徴とみなし、故にそうした観点を強調して現代における世界の変容を記述しているのが本書である。国民国家の相対的な地位の低下、国に縛られない運動体の存在感の向上など、国家を越えた「つながり」の叙述が多くを占める。著者の専門分野が色濃く出ているよな、と。
読了日:6月3日 著者:入江昭
http://bookmeter.com/cmt/47780960
■進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義
『利己的な遺伝子』で知られる著者が子供向けに行ったレクチャーを活字化したもの。ドーキンスの主張の骨子が噛み砕かれて説明されていると訳者が述べるように、簡潔平明でわかりやすい。長い時間の中で、「微々たる変化の積み重ね」によって生物は進化していくのだというのがその核心だろうか。その変化の積み重ねを記憶するメディアが遺伝子であり、個体はそれを継承するものにすぎない。コンピューターを駆使して進化の過程を推定してみせるのが印象的だった。
ぶっちゃけドーキンス氏の主張は素人的におさえられたかなって感じなので、『利己的な遺伝子』はもう読まなくていいんじゃね?となった。
読了日:6月4日 著者:リチャード・ドーキンス
http://bookmeter.com/cmt/47803877
ベネディクト・アンダーソン 奈良女子大学講義 (奈良女子大学文学部〈まほろば〉叢書)
- 作者: 小川伸彦,水垣源太郎
- 出版社/メーカー: かもがわ出版
- 発売日: 2014/04/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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■ベネディクト・アンダーソン 奈良女子大学講義 (奈良女子大学文学部〈まほろば〉叢書)
2012年に行われた講演と、その後奈良女子大の教員によって交わされた討議を所収。アンダーソンの講演は、時間の関係もあってか自身の研究をアジアの歴史に照らしてかいつまんで紹介するくらいの内容だったが、西洋と東洋における女性政治指導者の立ち位置の違いや、中国における西太后の評価など、個別のトピックは興味深かった。討議は日本におけるアンダーソン受容、スポーツとナショナリズムの関係性などが俎上にのぼっていて面白く読んだ。
読了日:6月5日 著者:
http://bookmeter.com/cmt/47822434
■磯崎新の「都庁」―戦後日本最大のコンペ
1985年に行われた都庁のコンペを軸に、磯崎新と丹下健三の周辺にフォーカスを当てて戦後の建築史を素描する。コンペが軸なんだけれども、磯崎・丹下の生い立ちや来歴、建築という作業にまつわる様々な事柄がディテール豊かに描かれ、まったくの予備知識なしでも楽しく読める。時系列が縦横無尽に過去と現在を行き来するので都庁コンペのエピソードの進みが鈍く感じるのもご愛嬌。特に磯崎のもとで働く社員たちの苦労話や失敗談が面白く、建物ひとつ作るのにも大変な労力がかけられてるのだなあと改めて気付かされた。
読了日:6月6日 著者:平松剛
http://bookmeter.com/cmt/47833976
■メタボリズム・トリップ
メタボリズム建築の写真集。『プロジェクト・ジャパン』からの流れで読んだ。個々の建物の写真はこっちのほうが見易い。薄いのでページも繰りやすいし。建築はさておいて、8月に撮られた写真なのでそこかしこに夏の匂いが漂っていてそこが印象的だった。
読了日:6月6日 著者:チャーリーコールハース
http://bookmeter.com/cmt/47841560
「歴史学は、歴史上の事実である「史実」にアクセスできるか」「歴史を知ることは役に立つか」「そもそも歴史学とは何か」という、歴史学にとって極めてアクチュアルであり続ける三つの問いに答える形で議論が展開される本書は、初学者よりもむしろ専門的に歴史を学んでいる人間にとって面白く読めるんじゃないか、と再読して改めて感じた。その問いに対する著者の回答は、永遠の課題に対するひとつの落としどころではあるよなあと。
レジュメ切っておしゃべりしたので、ブログに書き留めておこうとしたんだがさぼってしまった。
読了日:6月7日 著者:小田中直樹
http://bookmeter.com/cmt/47870383
ホメイニーの伝記。副題にもあるように、イラン革命に大きく重心が置かれている。卓越した宗教者であり、かつ政治にも巨大な影響力をもったホメイニーの立ち位置は、イスラーム世界と馴染みが薄いぼくには本書を読んでもあんまり理解できないものがあった。読み方がよくないのかもしれませんが。宗教が革命と直接に結びつき得るのは、イスラームが生活と不可分に結びついているイスラーム世界くらいだよなあと思ったり。それとどの革命も、権力を打ち倒した後は革命政権の主導権が血みどろで争われるのだなあと。
それはともかくホメイニ師って宗教的に超天才だったんだなあと改めて思った。
読了日:6月7日 著者:富田健次
http://bookmeter.com/cmt/47878230
■大学論──いかに教え、いかに学ぶか (講談社現代新書)
「まんがを教える大学」で、四苦八苦しながら「教える方法」を模索した著者の実践の記録。漫画とアニメ、映画との関係性に自覚的になること、というのが「教える方法」の中核にあり、そうした観点からの批評的な論考としても読めるが、そんなことよりも、一人の指導者が学生とともに歩んだ一つの記録として面白く読んだ。その中で、著者の師である千葉の「教える方法」を、著者自身が教えることを通してつかまえていったのだなあと最後の章まで読んで感じた。それはともかくとして、汗まみれの青春小説ですよこれは。
読了日:6月9日 著者:大塚英志
http://bookmeter.com/cmt/47903254
■街の人生
それぞれの人生を生きてきた5人の「普通の」人たちの語りを編集や分析抜きに収める。外国人、セクシャルマイノリティ、拒食症など、それぞれの人に際立った属性はあって、それがそれぞれの人生に影響を与えてはいるんだけれども、それでも他人事とは思えない、というような感覚を抱く。これを興味深く読んでしまう自分は覗き見趣味的なものがあるんじゃないか、とも思ったりするけれど、生活しているなかでは触れ難い、街で生きる人たちの人生の一端を知るという経験は、街をゆく人々への目線を変容させるような、そんな意味があるような気がした。
読了日:6月9日 著者:岸政彦
http://bookmeter.com/cmt/47916847
■反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)
雇用のネット、社会保険のネット、公的扶助のネットという三層のセーフティネットがほころび、いとも容易く貧困状態におかれる可能性がある「すべり台社会」の現状と、そうした社会を変えていくための実践について論じる。貧困はただ単にお金がないという状態ではなく、一度生活が崩れた際の「溜め」がない状態なのだ、ということや貧困状態における「五重の排除」など、なるほどなあと読んだ。現場でそうした一年直に関わる著者が取り上げる具体例の数々は強い切迫性が感じられた。
読了日:6月11日 著者:湯浅誠
http://bookmeter.com/cmt/47964757
■現代建築家20人が語る いま、建築にできること
ドイツ人ジャーナリストによる、一線で活躍する建築家へのインタビューをあつめたもの。インタビュアーの姿勢がちょっと驚くぐらい挑戦的で、かなり険悪な雰囲気が漂っているんじゃないかと思われるようなやりとりまでなされていて、それがまず面白い。なんとなく、今の建築に携わる人たちの主戦場は中東や中国などアジアに移っているのかなーという印象を受けた。訳者あとがきにそれぞれの建築家の立ち位置が整理されていて、これ先に知っときゃよかったなーと。
インタビュアーと一触即発状態になったのは、今話題の新国立競技場の設計者、イラク出身のザハ・ハディド。タイムリーだった。コールハースは中国の国家規模のプロジェクトに関わっていることを指弾されてるんだけど、「中国のすべてが好きというわけではない、すべてが好きじゃなければ一緒に仕事ができないわけじゃない」みたいな返しをなめらかにしていて流石だなあと。わざわざそんなこと訊くインタビュアーの品性というか、そういうものを疑いますが。社会正義をきどってウエメセで偉そうにしてんじゃないよっていう。内容は面白いがインタビュアーが不快。
読了日:6月12日 著者:HannoRauterberg
http://bookmeter.com/cmt/47969846
■生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
「生命とは何か?」という問いが通底して流れているようには思われるが、一貫してその問いと向き合うというよりはその問いの周辺にある科学的な発見、著者の研究などについてのエッセイであると感じた。DNAの発見をめぐるドラマや、動的平衡の話題などなるほどなーという感じで、ポエティックな語り口と豊富なエピソードのおかげで生物学にさほど興味のなかった自分にもすらすら読めた。生命とは自己複製を行うシステムである、という風に定義できるが、それでは捉えきれない何事かがあるんだよ、的な結論なんだろうか。
野口英世が現在どういうふうに評価されているのか、という話題は結構残酷だった。
読了日:6月12日 著者:福岡伸一
http://bookmeter.com/cmt/47983545
歴史をいかに学ぶか―ブルクハルトを現代に読む (PHP新書)
- 作者: 野田宣雄
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 1999/12
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■歴史をいかに学ぶか―ブルクハルトを現代に読む (PHP新書)
進歩史観がもはや失効した現代だからこそ、進歩史観とは一線を画すオルタナティヴを提示したブルクハルトの歴史観を参照するべきである、と主張する。キリスト教的な終末論から啓蒙思想家へと流れ込み、ヘーゲル、マルクスにおいて結実した進歩史観。その陰にローマ以来の循環史観があったわけだが、ブルクハルトのそれはまたそれらとは位相を異にする。ブルクハルトの著作からの引用が多くなされ、その独特な歴史の捉え方(「歴史の危機」、文化の崩壊と出現…)はなるほど確かに面白いなと。
読了日:6月13日 著者:野田宣雄
http://bookmeter.com/cmt/47990192
仝: selected lectures 2009-2014 (河出文庫)
- 作者: 佐々木中
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/02/06
- メディア: 文庫
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■仝: selected lectures 2009-2014 (河出文庫)
2009年から2014年にかけて行われた講演をまとめたもの。著者はそうした見方を嫌うような気がするとはいえ、やはり震災以前以後ではっきりと語りのトーンが異なるように感じられる。震災以後には「革命」というテーマが前景化しているような印象。震災以前に語られた、ハイデガーを通して見た死の問題は、震災という契機をへてまた別様な捉え直しがなされているという気がした。生のあり方によく似た「緩慢な死」、屈辱と恥辱、大学のあるべき姿…などの話題が特に印象的。
読了日:6月13日 著者:佐々木中
http://bookmeter.com/cmt/47999637
- 作者: 大門正克,岡田知弘,佐藤隆,大槻奈巳,高岡裕之,進藤兵,柳沢遊
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 2010/10
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■復興と離陸 (高度成長の時代)
企業社会としての高度成長期日本社会。講座派の流れ。
読了日:6月14日 著者:
http://bookmeter.com/b/4272520911
■「昭和」を送る
昭和天皇の崩御に際して書かれた天皇論である表題文が白眉。君側の奸コンプレックス、皇太子の機能など、ああそういう着眼点があるのだなあと。他のエッセイは東日本大震災に関わるもの(それに付随する形で阪神淡路大震災の経験が語られる)少なくなかったが、やはり臨床の現場に関わる文章に引き込まれた。人間なにがきっかけで体を壊すのかわからないし、それは医者とて同じで、原因と対処の見極めというのは一種の名人芸なんだなあと感じた。
それと皇后の役目とか、そうなんだっていう感じ(こなみ)。
読了日:6月17日 著者:中井久夫
http://bookmeter.com/cmt/48095763
■シチュエーションズ 「以後」をめぐって
震災「以後」という状況に関わる論考を集めたもの。震災から一年の時を経て書かれた文章だが、やはり、現在とは震災を捉える感覚の生々しさが段違いだなと感じる。それは文章を書くということが必然的に「遅れ」を伴うが故に、まさに震災の只中で書かれたものだからだろうか。どうしたって当事者でない人間が、いかに状況と関わっていくのか、という苦闘のあとがそこかしこに滲んでいて、それが強烈な印象を残した。安易に「わたしたち」として語るのでなく、「わたし」へとたち戻るという姿勢も。
読了日:6月17日 著者:佐々木敦
http://bookmeter.com/cmt/48103354
現代日本建築家列伝---社会といかに関わってきたか (河出ブックス)
- 作者: 五十嵐太郎
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/10/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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■現代日本建築家列伝---社会といかに関わってきたか (河出ブックス)
戦後日本の代表的な建築家たちを論じる。それぞれ雑誌論文が初出で各章の独立性が高く、それはいいのだけれども、論じるスタイル自体にばらつきがあり、通読してどことなく異物感をおぼえた。一冊の本にまとめるということに拘りとか美学とかないのかっていう。冒頭に配された丹下健三論はむしろアジア太平洋戦争下の建築家たちを論じた論考であることがその例。丹下健三論でないものを無理に章タイトルにしている感が。図版もさほど多くなかったので建築のイメージが掴み難かった。用語法もどことなく野暮ったい感じがしてどうにも入り込めず。
コールハース『プロジェクト・ジャパン』の記憶が生々しかったのが災いした。コールハースという稀代のゴーストライターの前では、悲しいかな二枚も三枚も落ちる。
読了日:6月18日 著者:五十嵐太郎
http://bookmeter.com/cmt/48134447
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,ノーム・チョムスキー,オリバー・サックス,マービン・ミンスキー,トム・レイトン,ジェームズ・ワトソン,吉成真由美
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/12/06
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■知の逆転 (NHK出版新書 395)
生物学や言語学など、様々な分野の研究者6人へのインタビュー。個別の話題に「ほえー」とはなったんだけど頭の中を右から左だったのは、内容にそれほど興味を惹かれず流し読みしてしまったからか、構成が散漫だったからか。専門分野以外では教育の話題、インターネットによる集合知、推薦図書などが共通していた。個人的に最も面白かったのが最後のワトソンで、そんなクリティカルなことを訊いてしまうのかと文章を読んでるだけなのにハラハラした。その回答に、天才学者も人間なんやね、と思ったり。
読了日:6月20日 著者:ジャレド・ダイアモンド,ノーム・チョムスキー,オリバー・サックス,マービン・ミンスキー,トム・レイトン,ジェームズ・ワトソン
http://bookmeter.com/cmt/48189859
■キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)
法学を教える二人の准教授が高校生に法学を語る、小説形式の法学入門。准教授のキャラがわざとらしく立っているので楽しく読み進められ、無味乾燥な語り手もいい感じ。楽しく読める上にわかりやすく、法学について知ったような気になり、なんとなく「役に立つ」感じがしてとてもよかった。高校生のときに出会ってたら法学部に進学してたんじゃないか、というのは言い過ぎか。准教授が社会科学全般について語るシーンは、(極めて単純化されているとはいえ)法学の人は他学問のことをこういう印象で見てるんだなあというのが感じられて面白かった。
読了日:6月21日 著者:木村草太
http://bookmeter.com/cmt/48206443
著者の訳した本に付された解説をまとめたもの。大別すると人間の「自由」にかかわる問題、数学や統計がかかわるもの、インターネットにおける規制の三分野にカテゴライズされている。どの本も中身が簡潔かつ噛み砕いて説明されているので解説されている本を読んだ気分になってしまった。あとがきの仕事での出張旅行と翻訳とのアナロジーはなるほどなあという感じ。
山形氏の文体すげーかっちょいいので真似したいんだけど、知性に圧倒的に欠ける僕がやるとただのチンピラなんだよな。
読了日:6月21日 著者:山形浩生
http://bookmeter.com/cmt/48222971
- 作者: ピエール・バイヤール,大浦康介
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/11/27
- メディア: 単行本
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■読んでいない本について堂々と語る方法
ちょっと人を食ったようなタイトルに反して、「読む」こととそれを「語る」ことについて書かれた、マジメな文学理論の本だった。「あの本は読んだ」と人は気軽に言うけれどその「読んだ」って一体どういうことよ?という入り口からはじまり、どうやら本を読むという経験はかなりの濃淡があり、そして結局のところ「読んだ」「読んでない」というのは程度の問題に過ぎないと喝破する。そして読んでいない本を語るという営為が如何に創造的なことかというところに最後は着地する。突飛な発想を堅実な議論で武装させた、極めて面白い本だと思った。
読了日:6月23日 著者:ピエール・バイヤール
http://bookmeter.com/cmt/48249959
イリヤの空、UFOの夏 その1<イリヤの空、UFOの夏> (電撃文庫)
- 作者: 秋山瑞人
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/03/26
- メディア: Kindle版
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■イリヤの空、UFOの夏〈その1〉 (電撃文庫)
夏休みの終わりから始まる、ボーイミーツガール。メインの語り手である浅羽くんのほどほどに行動的でそこそこ助平なところが楽しい。ヒロインのイリヤは不器用でセクシャルなことに無自覚なのがずるい。無自覚な美少女とほどほどに助平な中学生って取り合わせがよい。青春という感じ。ここから「戦争」が前景化してくるんだろうなあ、という予感がすでに物悲しくもあるけど、かつて体験したような(そんなことは全くないんだけれども)「あの頃」を思い返してそっちのほうに感傷的になった。
読了日:6月24日 著者:秋山瑞人
http://bookmeter.com/cmt/48295715
■子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)
子どもの貧困問題の現状を簡潔に述べたのち、その解決策としてありうる社会政策を提起する。親の貧困が子どもに連鎖していく、というの「子どもの貧困」の現状はデータを用いて平明に記されていて、前著を未読でも問題なく本書のメインである社会政策の提言へと入っていける。親切。保育の拡充や教育支援など、単に貧困層のみを対象にしたものではない社会政策によって貧困層を支援するのがベターなのではないか、というのが著者の姿勢だろうか。施行された法律がどのように機能するのか注視しないといけないよなーと感じた。
読了日:6月25日 著者:阿部彩
http://bookmeter.com/cmt/48309076
イリヤの空、UFOの夏 その2<イリヤの空、UFOの夏> (電撃文庫)
- 作者: 秋山瑞人
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/03/26
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■イリヤの空、UFOの夏〈その2〉 (電撃文庫)
2巻は1巻から続くデートのお話「正しい原チャリの盗み方」と、青春の毒気が濃厚に立ち込める学園祭のエピソードを所収。デートのお話は妹が兄離れする物語であり、学園祭は初恋が不完全燃焼に終わる物語でもありといった感じに、浅羽とイリヤのボーイミーツガールとは趣向が異なる青春の一コマが描かれるのがとてもよかった。学園祭なんかまあちょっとありえないくらいの規模と熱気だけど、そこで展開されるのはなんとも甘酸っぱい感じの地に足のついた、拙い心の揺れ動きで、それがたまらなく胸に刺さる。
読了日:6月26日 著者:秋山瑞人
http://bookmeter.com/cmt/48320269
イリヤの空、UFOの夏 その3<イリヤの空、UFOの夏> (電撃文庫)
- 作者: 秋山瑞人
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/03/26
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■イリヤの空、UFOの夏〈その3〉 (電撃文庫)
イリヤと晶穂の対決と歩み寄り、そして遂に濃厚に立ち込めてくる破滅の予感。イリヤと晶穂の戦いは想像していたよりはるかに汚らしく、しかし清々しい決着で笑った。そのコミカルな女の子の戦いから急転直下にシリアスな状況へ叩き込む構成が心臓に悪い。絶望的な状況の中で何もできずに苦悩する浅羽に共感し、だからこそ最後の拙い、けれども決死の覚悟に打たれる。二人の明日無き暴走の行き着く先はどこなのか。今すぐ続きを読みたくもあり、しかし残酷な結末をみないでおきたいという気持ちもあり。
読了日:6月27日 著者:秋山瑞人
http://bookmeter.com/cmt/48342370
イリヤの空、UFOの夏 その4<イリヤの空、UFOの夏> (電撃文庫)
- 作者: 秋山瑞人
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/03/26
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■イリヤの空、UFOの夏〈その4〉 (電撃文庫)
夏の終わりの絶望的な逃避行は、浅羽をじりじりと蝕む。一度は掛け違えたボタンを再び掛け直そうとした選択は皮肉にも彼女を殺し、しかし世界は救われる。救いたいという願いが生んだ行動が彼女を殺し、しかしそうするしか彼女が幸福になりうる術はなかった。この逆説を「感動的な悲劇」として受け止めていいのか?どうせ死ぬなら幸福に死んでもらうことが「正しい」ことなのか?少女は死に、人々は何事もなかったかのように生き続ける。一夏の出来事はどうしようもなく忘れられる。そういう残酷さの物語なのだと思った。
読了日:6月27日 著者:秋山瑞人
http://bookmeter.com/cmt/48343978
切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話
- 作者: 佐々木中
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/10/21
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■切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話
読むことと革命することをめぐる考察。ルソーの宗教改革、ムハンマドの実践、12世紀における中世解釈者革命を論じながら、革命とは、第一義的に読むことであり、暴力はそれに付随するものに過ぎないと喝破する。だから文学は革命であり、終わってなどいないのだと。人類の、永遠ともいえる未来へ向かって読み、書くこと。たとえそれが届かないとしても、ほんの僅かでも届くかもしれないならばそれに賭けなければならない。そういう主張がなされていたように思う。
読了日:6月27日 著者:佐々木中
http://bookmeter.com/cmt/48355027
■新・SFハンドブック (ハヤカワ文庫SF)
流し読み。いわゆる初心者向けなのはオールタイムベストと編集部のブックガイドくらいで、他の部分は濃厚なSFファン向けだなーという印象。特に作家の作品語りはその作家のファン、とまではいかないけど作品を知ってないと楽しさ半減じゃないかなあと感じた。とはいえ色んな作品があるんだなあという小学生並みの感想を抱けたし、作家の簡潔な紹介もあるので入り口としてはいいのかも。
読了日:6月27日 著者:
http://bookmeter.com/cmt/48355263
■現代史のリテラシー――書物の宇宙
2000年代に発表されたものを中心に書評を集めたもの。著者の専門に近しいナチスドイツの研究書の書評は特に読み応えがあり、この書評集を読むだけでもナチ研究のおおまかな見取り図が得られる、とまで言ったら言い過ぎかもしれないが、最近の研究潮流をなんとなく知った気になれる。その他、やはり歴史研究に関わる書評は勉強になる。『共同研究 転向』の意義と射程、そして限界なんかはとりわけそう感じた。
読了日:6月27日 著者:佐藤卓己
http://bookmeter.com/cmt/48355565
■踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ
風営法をめぐっての表題論文他、翻訳論、写真論、ベーコン論などを所収。ダンスの意味づけ、写真は静止してなどいないということ、口という器官の機能など、なるほどなあという感じ。デビューから『想像ラジオ』までを総括したいとうせいこう論なんかは、それらの作品群に触れていないので十分には咀嚼しきれなかった感。
読了日:6月28日 著者:佐々木中
http://bookmeter.com/cmt/48398126
■くちびるに歌を (小学館文庫)
東京から来た変人音楽教師が、離島の合唱部の生徒たちを変えていく物語だとばっかり思っていたら、彼女はむしろ背景にすぎなくて、合唱に関わることで多かれ少なかれ変わっていく生徒たちの物語こそが本筋だった。教え導かれる存在じゃなくて、むしろ勝手に変わっていく子供たちの姿がいい。歌声は人を孤独から救い、また過去の傷を癒していく。意地悪く言うなら出来すぎているともいえる人間関係の関わりも、離島という閉じた環境によって説得力をもっていると感じる。お行儀がよすぎるとも思えるがそれすら愛せる、そんな本だった。
映画がみたくなってきました。
読了日:6月29日 著者:中田永一
http://bookmeter.com/cmt/48403561
来月のはこちら。