今年は激動の一年でした。労働がまじで脳みそのメモリを圧迫するなか私生活のもろもろでいよいよ頭がパンクし、しかしなんとか個人誌をかたちにできて、よかったっす。
昨年のはこちら。
2022年新作映画ベスト10
- 『リコリス・ピザ』(ポール・トーマス・アンダーソン監督)
- 『NOPE/ノープ』(ジョーダン・ピール監督)
- 『THE FIRST SLAM DUNK』(井上雄彦監督)
- 『地球外少年少女』(磯光雄監督)
- 『犬王』(湯浅政明監督)
- 『カモン カモン』(マイク・ミルズ監督)
- 『ベルファスト』(ケネス・ブラナー監督)
- 『トップガン マーヴェリック』(ジョセフ・コシンスキー監督)
- 『ベイビー・ブローカー』(是枝裕和監督)
- 『グッバイ、ドン・グリーズ!』(いしづかあつこ監督)
このいけ好かない連中のくっついたり離れたりをみて、何がおもしろいのか?それはわからない、だがしかし、おもしろい。これぞ映画の魔術だといわんばかりの、ポール・トーマス・アンダーソンの快作『リコリス・ピザ』を今年の私的ナンバーワンとしたい。のんべんだらりとした退屈さ、時たま訪れる狂気としかおもえぬ人間たちの鮮烈さ、そしてなにか輝きを帯びてしまう瞬間、それらのもたらす総体としての豊かさが、まさに映画の豊かさなのだろうと思う。
これまでアフリカ系アメリカ人としてのアイデンティティを強く感じさせるフィルムを世に問うてきたジョーダン・ピール監督の新作『NOPE/ノープ』が、そうしたアイデンティティの主題を継続させながらも、映画史そのものを背負って新たな映画をつくってみせるという強烈な自負を感じさせる作品だったことは、大きな驚きだった。映画とはすなわち世界と対峙するための武器なのであって、それで俺たちは戦ってきたのだし、これからも戦うのだ、という宣戦布告。これもまた堂々たる映画でありました。
少年漫画のマスターピースがその傑作性をまったく毀損せずにスクリーンに立ち現れた『THE FIRST SLAM DUNK』はまさに異形。そのおおよその展開を、そして結末すらもすでに知っている試合を、まさかこれほど真剣に、固唾をのんでみつめることになろうとは。衝撃度でいったらナンバーワンだったかもしれません。
これを映画というのはレギュレーション的にどうなんだとも思うんですが、まあ劇場でかかってたので、『地球外少年少女』は映画とみなしてランキングにいれましょう。『電脳コイル』以来の磯光雄の新作は、作品世界の設計の巧みさ、近未来的なガジェットの工夫、なにより手に汗握るドラマ、どれをとっても一級品のジュブナイルSF。世界をたちあげ、それを遺憾なく活用する手際は職人芸を超えて天才の域。
天才といえば、湯浅政明監督の『犬王』は近年のフィルモグラフィの集大成ともいえる、その作家性が見事に結実した作品でした。前年配信、今年テレビ放映された山田尚子監督による傑作『平家物語』とならんで、サイエンスSARUというスタジオが正典と異聞とを見事に提示してくれたことは、歴史に刻まれるべき偉業ですよ。
甥の少年に実存を試される緊張感と、しかしなにかかけがえのないものが立ち現れる喜びをフィルムに刻んだ『カモン カモン』、息苦しい世界のなかでそれでもよく生きようとあがく人間の善性に救われた気持ちがする『ベルファスト』、どちらもすでに古典的な名画の風格がありました。モノクロの映画をそう評するの、なんかすごいイージーじゃないか? はい。
トム・クルーズというムービースターがそのスターぶりをこれでもかと画面に刻んだ『トップガン マーヴェリック』も、今年を代表する一本でしょう。娯楽映画としてけちのつけようのない、とんでもなく楽しい時間でした。是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』は是枝の仕事でベストなわけじゃないけど、韓国ロケを敢行できていた濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』を幻視させてくれたのでここに。
いしづかあつこ監督『グッバイ、ドン・グリーズ!』は、『宇宙よりも遠い場所』と対をなすささやかな冒険譚を、結部で見事に飛躍させた想像力を買いたい。
2022年みた映画まとめ
- 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(ジョン・ワッツ監督)
- 『キングスマン:ファースト・エージェント』(マシュー・ヴォーン監督)
- 『クライ・マッチョ』(クリント・イーストウッド監督)
- 『ハウス・オブ・グッチ』(リドリー・スコット監督)
- 『地球外少年少女』(磯光雄監督)
- 『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(ウェス・アンダーソン監督)
- 『鹿の王 ユナと約束の旅』(安藤雅司・宮地昌幸監督)
- 『グッバイ、ドン・グリーズ!』(いしづかあつこ監督)
- 『ウエスト・サイド・ストーリー』(スティーヴン・スピルバーグ監督)
- 『ブルーサーマル』(橘正紀監督)
- 『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(マット・リーヴス監督)
- 『ベルファスト』(ケネス・ブラナー監督)
- 『アンビュランス』(マイケル・ベイ監督、2022年)
- 『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(デヴィッド・イェーツ監督)
- 『カモン カモン』(マイク・ミルズ監督)
- 『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編] 君の列車は生存戦略』(幾原邦彦監督)
- 『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(サム・ライミ監督)
- 『シン・ウルトラマン』(樋口真嗣監督)
- 『犬王』(湯浅政明監督)
- 『トップガン マーヴェリック』(ジョセフ・コシンスキー監督)
- 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(安彦良和監督)
- 『ベイビー・ブローカー』(是枝裕和監督)
- 『リコリス・ピザ』(ポール・トーマス・アンダーソン監督)
- 『映画 ゆるキャン△』(京極義昭監督)
- 『ソー:ラブ&サンダー』(タイカ・ワイティティ監督)
- 『神々の山嶺』(パトリック・インバート監督)
- 『ボイリング・ポイント/沸騰』(フィリップ・バランティーニ監督)
- 『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編] 僕は君を愛してる』(幾原邦彦監督)
- 『ONE PIECE FILM RED』(谷口悟朗監督)
- 『NOPE/ノープ』(ジョーダン・ピール監督)
- 『ブレット・トレイン』(デヴィッド・リーチ監督)
- 『ヘルドッグス』(原田眞人監督)
- 『四畳半タイムマシンブルース』(夏目真悟監督)
- 『ぼくらのよあけ』(黒川智之監督)
- 『すずめの戸締り』(新海誠監督)
- 『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(ライアン・クーグラー監督)
- 『かがみの孤城』(原恵一監督)
- 『THE FIRST SLAM DUNK』(井上雄彦監督)
計38本。
自宅視聴まとめ
- 『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』(ザック・スナイダー監督、2021年)
- 『レッドクリフ part I』(ジョン・ウー監督、2008年)
- 『レッドクリフ part II 未来への最終決戦』(ジョン・ウー監督、2009年)
- 『さらば愛しきアウトロー』(デヴィッド・ロウリー監督、2018年)
- 『地獄の警備員』(黒沢清監督、1992年)
- 『霊的ボリシェヴィキ』(高橋洋監督、2018年)
- 『ゲッタウェイ』(サム・ペキンパー監督、1972年)
- 『3月のライオン 前編』(大友啓史監督、2017年)
- 『3月のライオン 後編』(大友啓史監督、2017年)
- 『薄暮』(山本寛監督、2019年)
- 『ドント・ルック・アップ』(アダム・マッケイ監督、2021年)
- 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(ジェーン・カンピオン監督、2021年)
- 『ヒットマンズ・ボディガード』(パトリック・ヒューズ監督、2017年)
- 『フィフス・エレメント』(リュック・ベッソン監督、1997年)
- 『トゥモロー・ウォー』(クリス・マッケイ監督、2021年)
- 『鉄人28号 白昼の残月』(今川泰宏監督、2007年)
- 『ラン・オールナイト』(ジャウム・コレット=セラ監督、2015年)
- 『鳩の撃退法』(タカハタ秀太監督、2021年)
- 『エクストリーム・ジョブ』(イ・ビョンホン監督、2019年)
- 『ナイスガイズ!』(シェーン・ブラック監督、2016年)
- 『バブル』(荒木哲郎監督、2022年)
- 『モータルコンバット』(サイモン・マッコイド監督、2021年)
- 『トップガン』(トニー・スコット監督、1986年)
- 『プロミシング・ヤング・ウーマン』(エメラルド・フェネル監督、2020年)
- 『カラミティ』(レミ・シャイエ監督、2020年)
- 『老人Z』(北久保弘之監督、1991年)
- 『最後の追跡』(デヴィッド・マッケンジー監督、2016年)
- 『ワンダーウーマン1984』(パティ・ジェンキンス監督、2020年)
- 『ロング・グッドバイ』(ロバート・アルトマン監督、1973年)
- 『騙し絵の牙』(吉田大八監督、2021年)
- 『呪詛』(ケヴィン・コー監督、2022年)
- 『ジョン・ウィック:パラベラム』(チャド・スタエルスキ監督、2019年)
- 『アイガー・サンクション』(クリント・イーストウッド監督、1975年)
- 『グレイマン』(アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ監督、2022年)
- 『アルカトラズからの脱出』(ドン・シーゲル監督、1979年)
- 『太陽の帝国』(スティーブン・スピルバーグ監督、1987年)
- 『カーター』(チョン・ビョンギル監督、2022年)
- 『マリグナント 狂暴な悪夢』(ジェームズ・ワン監督、2021年)
- 『チーム・バチスタの栄光』(中村義洋監督、2008年)
- 『ジェネラル・ルージュの凱旋』(中村義洋監督、2009年)
- 『魔女の宅急便』(宮崎駿監督、1989年)
- 『ONE PIECE STAMPEDE』(大塚隆史監督、2019年)
- 『アラバマ物語』(ロバート・マリガン監督、1962年)
- 『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(フレデリック・ワイズマン監督、2017年)
- 『ハチミツとクローバー』(高田雅博監督、2006年)
- 『ゲーム』(デヴィッド・フィンチャー監督、1997年)
- 『突撃』(スタンリー・キューブリック監督、1957年)
- 『東京リベンジャーズ』(英勉監督、2021年)
- 『博士の異常な愛情』(スタンリー・キューブリック監督、1964年)
- 『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(伊藤智彦監督、2017年)
- 『獣兵衛忍風帖』(川尻善昭監督、1993年)
- 『ザ・ファブル』(江口カン監督、2019年)
- 『アンブレイカブル』(M・ナイト・シャマラン監督、2000年)
- 『スプリット』(M・ナイト・シャマラン監督、2016年)
- 『アメリカン・アニマルズ』(バート・レイトン監督、2018年)
- 『スパルタカス』(スタンリー・キューブリック監督、1960年)
- 『雨月物語』(溝口健二監督、1953年)
- 『雨を告げる漂流団地』(石田祐康監督、2022年)
- 『オンリー・ザ・ブレイブ』(ジョセフ・コシンスキー監督、2017年)
記録したのは59本。再見含。
2022年にみたアニメ
- 『東京リベンジャーズ』(初見浩一監督、2021年)
- 『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』(岡本学監督、2021年)
- 『平家物語』(山田尚子監督、2021年)
- 『ゆるキャン△』(京極義昭監督、2018年)
- 『小林さんちのメイドラゴンS』(武本康弘シリーズ監督・石原立也監督、2021年)
- 『ゆるキャン△ SEASON2』(京極義昭監督、2021年)
- 『明日ちゃんのセーラー服』(黒木美幸監督、2022年)
- 『アクダマドライブ』(田口智久監督、2020年)
- 『ブギーポップは笑わない』(夏目真悟監督、2019年)
- 『SPY×FAMILY』(古橋一浩監督、2022年)
- 『ガンダム Gのレコンギスタ』(富野由悠季総監督、2014-5年)
- 『スプリガン』(小林寛監督、2022年)
- 『リコリス・リコイル』(足立慎吾監督、2022年)
2022年の10冊
- 長谷正人『敗者たちの想像力 脚本家山田太一』
- 水村美苗『本格小説』
- 山田風太郎『八犬伝』
- 小川哲『地図と拳』
- 氷室冴子『海がきこえる』
- 阿部和重『ブラック・チェンバー・ミュージック』
- 絲山秋子『まっとうな人生』
- 玉村豊男『料理の四面体』
- ソルニット、レベッカ『ウォークス 歩くことの精神史』
- クリッツァー、ベンジャミン『21世紀の道徳』
読書メーターによると、こんなかんじみたいです。
読んだ本160冊
読んだページ48760ページ
感想・レビュー160件
ナイス1589ナイス
月間平均冊数13.3冊
月間平均ページ数4063ページ
各月のまとめ
- 2022年1月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年2月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年3月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年4月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年5月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年6月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年7月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年8月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年9月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年10月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年11月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
- 2022年12月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬
年末のコミケで個人誌を頒布しました。ひとまず、これで個人誌を出す活動は一区切りかなと思っています。
BOOTHでも取り扱っているのでぜひともよろしく!です。
2023年もよい年になりますように!