宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2022年の回顧(と展望)

今年は激動の一年でした。労働がまじで脳みそのメモリを圧迫するなか私生活のもろもろでいよいよ頭がパンクし、しかしなんとか個人誌をかたちにできて、よかったっす。

昨年のはこちら。

2021年の回顧(と展望) - 宇宙、日本、練馬

2022年新作映画ベスト10

  1. 『リコリス・ピザ』ポール・トーマス・アンダーソン監督)
  2. 『NOPE/ノープ』ジョーダン・ピール監督)
  3. 『THE FIRST SLAM DUNK』井上雄彦監督)
  4. 『地球外少年少女』磯光雄監督)
  5. 『犬王』湯浅政明監督)
  6. 『カモン カモン』マイク・ミルズ監督)
  7. 『ベルファスト』ケネス・ブラナー監督)
  8. 『トップガン マーヴェリック』ジョセフ・コシンスキー監督)
  9. 『ベイビー・ブローカー』是枝裕和監督)
  10. 『グッバイ、ドン・グリーズ!』(いしづかあつこ監督)

 このいけ好かない連中のくっついたり離れたりをみて、何がおもしろいのか?それはわからない、だがしかし、おもしろい。これぞ映画の魔術だといわんばかりの、ポール・トーマス・アンダーソンの快作『リコリス・ピザ』を今年の私的ナンバーワンとしたい。のんべんだらりとした退屈さ、時たま訪れる狂気としかおもえぬ人間たちの鮮烈さ、そしてなにか輝きを帯びてしまう瞬間、それらのもたらす総体としての豊かさが、まさに映画の豊かさなのだろうと思う。

 これまでアフリカ系アメリカ人としてのアイデンティティを強く感じさせるフィルムを世に問うてきたジョーダン・ピール監督の新作『NOPE/ノープ』が、そうしたアイデンティティの主題を継続させながらも、映画史そのものを背負って新たな映画をつくってみせるという強烈な自負を感じさせる作品だったことは、大きな驚きだった。映画とはすなわち世界と対峙するための武器なのであって、それで俺たちは戦ってきたのだし、これからも戦うのだ、という宣戦布告。これもまた堂々たる映画でありました。

 少年漫画のマスターピースがその傑作性をまったく毀損せずにスクリーンに立ち現れた『THE FIRST SLAM DUNK』はまさに異形。そのおおよその展開を、そして結末すらもすでに知っている試合を、まさかこれほど真剣に、固唾をのんでみつめることになろうとは。衝撃度でいったらナンバーワンだったかもしれません。

 これを映画というのはレギュレーション的にどうなんだとも思うんですが、まあ劇場でかかってたので、『地球外少年少女』は映画とみなしてランキングにいれましょう。『電脳コイル』以来の磯光雄の新作は、作品世界の設計の巧みさ、近未来的なガジェットの工夫、なにより手に汗握るドラマ、どれをとっても一級品のジュブナイルSF。世界をたちあげ、それを遺憾なく活用する手際は職人芸を超えて天才の域。

 天才といえば、湯浅政明監督の『犬王』は近年のフィルモグラフィの集大成ともいえる、その作家性が見事に結実した作品でした。前年配信、今年テレビ放映された山田尚子監督による傑作『平家物語』とならんで、サイエンスSARUというスタジオが正典と異聞とを見事に提示してくれたことは、歴史に刻まれるべき偉業ですよ。

 甥の少年に実存を試される緊張感と、しかしなにかかけがえのないものが立ち現れる喜びをフィルムに刻んだ『カモン カモン』、息苦しい世界のなかでそれでもよく生きようとあがく人間の善性に救われた気持ちがする『ベルファスト』、どちらもすでに古典的な名画の風格がありました。モノクロの映画をそう評するの、なんかすごいイージーじゃないか? はい。

 トム・クルーズというムービースターがそのスターぶりをこれでもかと画面に刻んだ『トップガン マーヴェリック』も、今年を代表する一本でしょう。娯楽映画としてけちのつけようのない、とんでもなく楽しい時間でした。是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』は是枝の仕事でベストなわけじゃないけど、韓国ロケを敢行できていた濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』を幻視させてくれたのでここに。

 いしづかあつこ監督『グッバイ、ドン・グリーズ!』は、『宇宙よりも遠い場所』と対をなすささやかな冒険譚を、結部で見事に飛躍させた想像力を買いたい。

 

 

2022年みた映画まとめ

計38本。

自宅視聴まとめ

記録したのは59本。再見含。

2022年にみたアニメ

2022年の10冊

読書メーターによると、こんなかんじみたいです。

読んだ本160冊
読んだページ48760ページ
感想・レビュー160件
ナイス1589ナイス
月間平均冊数13.3冊
月間平均ページ数4063ページ

各月のまとめ

 

 

年末のコミケで個人誌を頒布しました。ひとまず、これで個人誌を出す活動は一区切りかなと思っています。

amberfeb.hatenablog.com

BOOTHでも取り扱っているのでぜひともよろしく!です。

amberfeb.booth.pm

 

2023年もよい年になりますように!